2015年3月議会:上原ひでき 代表質問を行いました。

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3月9日(月)、日本共産党議員団を代表して、上原ひでき議員が代表質問を行いました。

全文は以下の通りです。

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2015年3月議会 代表質問

日本共産党議員団 上原秀樹

1.市長・教育長の情勢認識を問う

1)安倍内閣がすすめる経済政策について

  内閣府が発表した2014年10月から12月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%増の低い伸びにとどまりました。なかでも、個人消費が0.3%、設備投資も0.1%増でしかなく、雇用者報酬は実質で0.5%減少と賃上げが物価の上昇に追いつかない状況が続いています。その結果、2014年の年間を通しての実質成長率は0.0%となり、経済成長が止まりました。また、円高と株高により大企業は空前の儲けを上げ、内部留保は285兆円に達する一方、働く人の実質賃金は19ヶ月間連続マイナス、「働く貧困層」といわれる人は史上最多意の1,120万人に達したとおり、格差と貧困を拡大しました。市長は、このように安倍内閣の経済政策と消費税増税が日本経済の成長を止め、格差と貧困を広げているという認識は持っておられるでしょうか。

  日本共産党は、消費税増税ではなく、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革、大企業の内部留保を活用して国民の所得を増やす経済改革という二つの改革で財源をつくり、税収を増やすことを提案しています。消費税10%増税は中止するとともに、国民の暮らし第一の経済政策に切り替えるべきと考えます。

  党議員団が行ったアンケートでは、消費税10%増税に反対するとした人が74.5%で、「格差者会の弱者が人間らしく暮らせない」「今でも苦しいのに無理。本当に福祉に回っているか疑問」などの声が寄せられています。市長の安倍内閣の経済政策に対する見解をうかがうものです。

2)戦後70年という節目にあたり、安倍内閣がすすめる戦争する国づくりに反対し、憲法を守る決意を

① 安倍内閣は、集団的自衛権行使容認の閣議決定を具体化する法整備を進め、安全保障法制案を国会に提出しようとしています。それだけではなく、安倍首相は、アメリカが先制攻撃をした場合にでも集団的自衛権の発動はありうるのかとの問いに対して否定しませんでした。これは集団的自衛権の行使ではなく集団的侵略そのものです。日本共産党は、このような憲法違反の「閣議決定」を撤回し、これを具体化する一切の法整備を中止することを求めるものです。

 また、ISを名乗る過激武装組織による日本人の人質の命が奪われるという事態が起こりました。残虐で卑劣なテロ行為を断固糾弾するものです。

 一方、安倍首相は、日本人人質と絡めて、邦人救出のために自衛隊出動の法整備を進めるとしたことは大問題です。これは相手を制圧する軍事作戦、憲法違反の武力行使であり、人質の命も自衛隊員の命も危険にさらすことになります。この問題では、自衛隊の機関紙「朝雲」が、「陸上自衛隊を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える」と苦言を呈しました。

 党議員団のアンケートでは、戦争する国づくりに58.4%が反対と答え、「憲法9条を遵守してほしい。自衛官も海外で死んでほしくない」「戦争では何も解決しない」などの声が寄せられました。

 自衛隊基地のある自治体の市長として、憲法の立場から反対を表明すべきと考えるものですが、市長の見解を伺います。

③ 今年は第2次世界大戦終結70年の年にあたります。安倍首相は、予定される「戦後70年談話」に関し、「村山談話」について「全体として引き継ぐ」と言いますが、「植民地支配と侵略」への「痛切な反省と心からのお詫び」というキーワードを引き継ぐとは言いませんでした。このことに内外から懸念の声が上がっています。

 日本共産党は、この節目の年が、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年となるためは、安倍首相が「村山談話」「河野談話」の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動を取り、談話を否定する動きにはキッパリと反論すること、日本軍「慰安婦」問題について、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことが重要と考えるものです。
  平和都市宣言をしている自治体の市長ならびに教育長として、この歴史認識をどうお考えなのでしょうか、見解を伺います。

2.真の「地方創生」「伊丹創生」――地域で生活する人々の人権を守り、社会福祉政策の充実により地域で安心した暮らしを保障するために

 安倍内閣は、少子化対策、地域経済再建などの「地方創生」を掲げています。しかし、全国的に見て地方が衰退した原因は、輸入自由化などによる農林水産業の衰退、大型店出店の規制緩和による商店街の疲弊、「都市再生」の名による都市再開発・「東京一極集中」政策などによってもたらされたものです。また、少子化の原因は、労働法制を変えたことにより非正規雇用が若年層の2分の1となって所得の減少を招き、一方で長時間労働により生活からゆとりを奪ったことなど、全体として将来に明るい展望を見失ったことが上げられると考えます。

 今やるべきことは、地域で生活する人々の人権を守り、社会保障・社会福祉政策の充実により地域で安心した暮らしを保障するという観点です。以下、この立場からいくつかの問題でお聞きをします。

1)子育て一番の伊丹市に

 市長の提案説明で述べられたとおり、若い世代の結婚・出産・育児の希望をかなえることは、最も重視すべき柱の一つです。この点では、周産期医療体制を市立伊丹病院に整備する方針を決定されるとともに、病児保育事業を始めるとされたことは評価をするものです。子育て支援に関して、以下の点でお伺いします。

①新しい子育て支援制度について

 第一に、待機児童の解消についてです。党議員団のアンケートで、子育て支援策で重要と思うもので一番多かったのが保育所の増設でした。一方、伊丹市子ども・子育て支援計画では、今年における弾力的増員を含めた保育所定員の不足数を、396名としています。この数は、今年度新たに増設される予定の保育所の定員235名を加えた予想人数となっていますが、今年度末までにすべて開設できる状況にはないと思われます。市長の提案説明では待機者ゼロを目指すとされていますが、待機者はなくなるのでしょうか。待機者が出た場合、市民にどう説明されるのでしょうか。

 来年度予算では1ヶ所の認可保育所とともに3園の小規模保育事業の実施による定員増を図ろうとされています。何よりも子どもの権利保障の視点から保育に格差を持ち込まず、現行保育水準を切り下げないためにも、小規模保育事業はA型とすべきと考えますが、どう計画されているのでしょうか。

 第二に、新制度での、保育の利用に先立って受ける、支給認定に関する問題です。国は、保育短時間は1日8時間、保育標準時間は11時間まで保育が受けられるとしています。国の説明では、9時から17時までという一律の時間帯を設定することとし、この時間帯以外の利用は延長保育料が発生するとしています。しかも短時間と標準時間の保育料の差はわずかであり、利用時間や延長保育料の額によっては、短時間認定であっても標準時間より負担額が増える事態も起こりかねません。そもそも法律では、保育必要量は月を単位として定められることになっており、一日の利用上限は規定されているものではありません。いずれにしても、短時間と標準時間の二区分を設定し、利用を制限することが混乱のもとになるのであり、この混乱を避けるためには、開所時間の範囲内で、子どもの一日の生活を保障する基本保育時間を設定し、合わせて一人ひとりの子どもに必要な保育が保障される保育利用時間の設定が必要と考えるものです。どのようにされるのかお伺いします。

 第三に、民間の保育士の確保と給与等待遇改善についてですが、低すぎる民間保育士の給与改善のための補助金が今年度で廃止され、公定価格に含まれるとのことです。今まで3%とされていた補助金でも不十分との声が出ていましたが、どれくらい改善されるのでしょうか。また、保育に格差を持ち込まないという立場で、伊丹市は今まで私立認可保育所に様々な補助をしてきました。国によって配置基準の改善がなされるべきですが、これが不十分なままであり、引き続き必要な補助はされなければなりません。どうされるのでしょうか、お伺いします。

②公立幼稚園のありかたについて

 この問題では、学校教育審議会答申に対して、公立幼稚園を統廃合することの理由における問題点や3年保育と預かり保育の実施を要求するなど様々な議論をしてきました。来年度、新しい子育て支援制度が施行されますが、幼稚園保育料は3年の経過措置を経て公立も私立も同じになります。このまま公立幼稚園を統廃合すると、ブロック制とはいえ徒歩による通園が困難になり、幼稚園に通わせたいと思う保護者は、3年保育や預かり保育、送り迎えバスのある私立幼稚園を選択するのは必然です。結果、公立幼稚園は消えてしまう恐れが出てくるのではないでしょうか。

 一方、今年度の市民意識調査で、今後の幼児教育について、統廃合か現状維持かという項目があります。私立幼稚園に任せるという意見は全体で9.3%しかありません。また、20歳代以下では、私立に任せるが6.1%と最も低く、統廃合と現状維持は40.9%と同率となっています。30歳代でも現状維持が34.4%、統廃合が40%を割その差は5ポイントしかありません。全体としても統廃合が42.0%、現状維持が31.3%と、10ポイント以上の差があるにせよ、公立幼稚園の1校区1園制に対する信頼は厚いといえます。

 子育てで伊丹市を選ぶ大きなポイントとなる1校区1園制です。私立との関係は重要な課題ですが、公立を3年保育にしてもそれほど定員を増やせるわけでもありません。統廃合はやめ、3年保育と預かり保育を改めて求めるものですが、見解を伺います。

③子どもの医療費助成の拡大について

 私は昨年の9月議会で、歯と貧困の問題を取り上げ、お金の心配なく医療にかかれるようにと、子どもの医療費助成を拡充し、中学3年生までの無料化を求めました。答弁では、財源は約1億2千万円が必要とし、今後財政状況を勘案した上で、国や県、他市の状況を注視しながら子育て支援策として幅広い議論が必要と考えているとされました。かつて市長は他市に先駆けてその拡充を図ってこられましたが、いまや兵庫県下では、中学卒業まで入院も通院も無料とする自治体は41の内24自治体、59%まで広がりました。

 患者の窓口負担の割合によって、どれだけ医療需要が抑制されるかを示した「長瀬指数」によれば、3割負担によって医療需要量は6割をきり、2割負担でも7割程度まで引き下がるとされています。また、全国保険医団体連合会が2012年に行った医療機関に対する調査によりますと、「患者の経済的理由により半年の間に治療を中断する事例があった」と回答した医療機関は、医科で49.6%、歯科で64%です。また「経済的負担を理由に検査や治療、投薬を断られたことがあった」のは、医科で60.3%、歯科で51.7%となっています。これはすべての年齢の患者であり、年齢別の分析はありませんが、子どもにも治療の中断等が発生しています。さらに、学校歯科検診で「要治療」となった小学生の半分、中学生の三分の二が、歯科医療機関を受診していないことが宮城県、長野県、大阪府の保険医協会の調査で明らかとなっています。教育委員会は、歯科検診後の治療実態をはじめ、このようなお金の心配で医療機関を受診できない実態を掌握されているのでしょうか。お伺いします。

 子どもの医療費無料化の拡大は、子どもの命と健康を守るとともに、OECD報告書で合計特殊出生率を引き上げるためには子どもの直接費用の減少が影響するとの指摘の通り、この面でも重要と考えるものです。

 日本共産党は、小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する国の制度を確立し、その共通の制度のうえに、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させることを政策として掲げています。国に対して制度創設を求めるとともに、伊丹市においても、子どもの実態を踏まえ、中学卒業までの無料化に向け、医療費助成の拡大をされることを改めて求めるものですが、見解を伺います。

2)国民健康保険税の引き下げを

 高すぎる国保税を引き下げてほしいという声は、党議員団が行ったアンケートで最も多い要求でした。伊丹市の国保税は、標準3人世帯の年間給与収入240万円で、年額27万8,600円です。2014年現在での阪神間各市を比較すると、尼崎市が32万7,300円で一番高く、川西市が26万7,200円、西宮市が26万100円、三田市が24万6,000円、宝塚市が22万5,300円と、阪神間では伊丹市が二番目に高くなっています。伊丹の場合、国保加入世帯の65%が所得150万円未満の世帯であり、所得のない世帯が23%を占めているという、低所得者が多いにもかかわらず高い国保税となっているのが特徴であり、国保税引き下げは被保険者の切実な願いです。ではどうすればいいのか。結局、国の補助金を増やさない限り、一般会計に頼らざるを得ません。

 2013年度決算で「予算はがし」をした5.5億円の内、2014年度補正予算並びに2015年度予算で一般会計の財政調整基金から繰り入れをする4.8億円の残金7千万円が一般会計の財政調整基金にあります。課税限度額の見直しによる1,830万円との合計で約8,830万円。もう一つは、現年度課税未収額の2分の1繰り入れルールで、2014年度から、滞納分を徴収した場合、その金額を繰り入れからはずすという措置に変更されていますが、これをもとに戻せば、あわせて3億2千万円の財源を生み出すことができ、国保税を引き下げることは可能です。改めて国保税の引き下げを求めるものですが、見解を伺います。

3)介護保険について

 この間、医療と介護提供体制を一体的に改革することを目的に、一昨年、医療・介護確保法が成立しました。その狙いは、病床削減と平均在院日数の短縮による医療抑制と、病床削減により増大する退院患者の受け皿として「地域包括ケアシステム」を想定しており、その中心は介護保険サービスの改革です。しかし、そもそも介護保険は必要なサービスを十分に保障する仕組みはなく、今後、給付抑制や負担増により、必要なサービスを受けられない人が大量に生み出される可能性が高くなります。その受け皿として想定されるのが、家族同士の助け合いであり、ボランティアや地域の絆という互助ということになっています。

 このもとで、今回、第6期介護保険事業計画(案)と予算が提案されていますので、いくつかお伺いしたいと思います。

①介護予防・生活支援サービス事業を導入することについて

 第6期介護保険事業計画(案)では、2017年に介護予防・生活支援サービス事業を導入するとされています。これによって、現在の要支援1・2に相当する高齢者の訪問型サービス及び通所型サービスについては、「自助・互助」で取り組む住民力を活用した事業展開をしていくとするものです。伊丹市における来年度の予定では、介護認定者の内、要支援1・2の人は37%を占め、その人が受けるサービスの64%が訪問型サービス及び通所型サービスです。これらの人が基本チェックリストによる判断で介護保険サービスからはずされ、今までのサービスが受けられなくなること、いわゆる「介護保険外し」が問題となります。介護保険制度では、被保険者は認定を受ければ「保険給付」を受ける受給権という「権利」を得ます。保険者は保険給付を提供する義務を負います。これによって、法令で決められている基準によるサービスの「質」が担保されます。これが、新たな総合事業に移行されると、財源は介護保険から出ていても、保険上の受給権はなくなってしまいます。サービスの担い手が無資格者によるサービスやボランティアに置き換えられれば、今までの「命綱」を失ってしまいかねません。

 そこでお伺いします。現在のすべての要支援1・2の人の生活を支えてきたホームヘルプ・デイサービスの水準を掘り崩さないこと、現行水準の利用の保障を約束できるでしょうか。また、要支援者や要介護者に該当する可能性のある人に対して「事前」に基本チェックリストでの選別をさせないこと、申請権の侵害はしないことを約束できるでしょうか。

②介護報酬引き下げの影響について

 厚生労働省は2月6日、介護報酬を全体で2.27%引き下げる改定額を決定しました。今回は介護職員の「処遇改善」加算を含んでいるため、4.48%と過去最大規模の引き下げです。特養への基本報酬は個室でマイナス6%弱、相部屋はもっと大幅カットです。すでに特養の3割が赤字という実態が調査結果で判明しているのに、今回の改定でさらに特養が苦境に追い込まれるとともに、特養建設がストップするところも出ています。また、「在宅」で大きな役割を持つデイサービスなどの報酬を5~20%も下げておいて、どこが「在宅」重視なのでしょうか。介護職員の「処遇改善」にしても、報酬全体を引き下げるなかで、改善効果は期待できません。伊丹市として、このような報酬改定によって市内の介護施設並びにサービスはどう影響を受けると考えておられるでしょうか、お伺いします。

③地域包括支援センターについて

 第6期介護保険事業計画では、医療、介護、予防、生活支援、住まいの5つのサービスを一体的に提供して、支援が必要な高齢者の住みなれた地域における生活を支援する、地域包括ケアシステムを構築するとされています。そして、そのために日常生活圏を見直し、介護支援センターを地域包括支援センターに移行するとともに、中核となる基幹型地域包括支援センターを運営するとされ、これを社会福祉協議会に委託するとしています。これは、今まで唯一の地域包括支援センターを社会福祉協議会に委託されてきたという経過もあり、ノウハウを蓄積されてきたからと思われます。では自治体は何をするのか。党議員団は、基幹型は伊丹市が担うべきではないかと提案してきました。それは、医療機関や包括支援センター、NPOやボランティア、民生委員や自治会、社会福祉協議会など多様な担い手による地域福祉・地域医療に関し、伊丹市自身が掌握する必要があるのではないかということからです。どうお考えでしょうか。また、地域包括ケアシステムを構築するうえで、地域包括支援センターと基幹型、自治体の役割をどのように整理するのでしょうか、お伺いします。

4)住宅問題について

 厚生労働省は、地域包括ケアシステの構築にあたって、「介護」「医療」「予防」といった専門的サービスの前提として、「住まい」と「生活支援・福祉」といった分野が重要であるとしています。その「住まい」に関して、党議員団が行ったアンケートにも、安くては入れる市営住宅を増やしてほしいという声が寄せられています。人の尊厳が保持されるためには、生活の物質的、社会的かつ具体的な保障が必要であり、とりわけ住まいは、人間らしい生活を営む場であるとともに、すべての生活を支える基盤でもあります。

①市営住宅について

 市営住宅は、公営住宅法の定めるとおり、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的と」しています。

 一方、若年層で非正規雇用が増大するなかで住宅困難者が増えるとともに、高齢者の間ではリタイヤ後年金だけでは今までの家賃が払えなくなる人も増えています。市営住宅の募集をされていますが、対象とする数に限りがあるとともに、4階5階の住宅では申し込む気がしないというのが実態ではないでしょうか。

 一つは、伊丹市はエレベーターの設置はしないとされ、高齢者等のため民間住宅の借り上げを行うとされました。4,5階からの住み替えは進んでいるのでしょうか。

 二つには、伊丹市は、市営住宅は増やさない方針ですが、昨今の市民の経済事情を勘案し、民間住宅の借り上げの数を増やしたらどうでしょうか。見解を伺います。

②民間賃貸住宅の活用について

 伊丹市においても、民間賃貸住宅の空き家が増えています。これらを活用し、高齢者や障がい者、母子・父子、子育て世帯等の「住宅確保要配慮者」のために家賃補助制度を創設したらどうでしょうか。全国的には、これらの対象者に加え、若年者や転入者などを加え、2009年時点ですが75自治体で家賃補助制度を実施しています。

 さらに、高齢者を中心に民間賃貸住宅に入居する際、保証人の問題で入居が困難になるとともに、保証会社による家賃債務保証制度でのトラブルも発生していることから、伊丹市若しくは公的な機関において、公的保証人制度や家賃債務保証制度を創設することも必要と考えるものですが、見解を伺います。

5)生活困窮者自立支援法について

 生活困窮者自立支援法が来年4月から施行されます。この問題は、昨年の6月議会で質問をし、要望もしています。この法律の目的は、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、居住確保給付金の支給、その他の支援を行うため、所要の措置を講ずるとされ、その概要は必須事業として自立相談支援事業の実施並びに住居確保給付金の支給を行い、任意事業として就労準備支援事業、一次生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業等を実施するとされています。この自立支援法という法律ができた背景は、突然の失業とか、あるいはさまざまな要因によって生活保護に陥った場合、生活保護に陥らないためにさまざまな施策をやる、生活困窮に陥った人を救う手だてをつくろうということにあります。ですから、本当の意味で生活困窮者を支援できる仕組みをどうつくっていくのかというのが鍵になると思います。対象者は、生活が苦しいと相談に来た人すべてであり、国保等の滞納者などすべての庁内の窓口をつなぐことが必要となります。今回は、昨年の6月議会で要望していたことを中心にお伺いします。

 一つは、自立相談支援事業についてです。ここでは、生活保護に陥る前の人をどういうふうにキャッチをするのか。相談に来られた場合には、その相談に応じて生活保護の要件に当たる人は生活保護を受給する、そうでない方についてもさまざまな施策を展開するということになります。また、国保や介護保険、税、水道料金等庁内の窓口とのネットワークをどうするのか、さらに、相談に来られない方も、社会福祉協議会や地域包括支援センター、民間福祉団体、民生委員等とのネットワークを構築することで、アウトリーチによる支援を行うことも必要です。その仕組みはどう構築されたのでしょうか。

 二つには、事業の主体と人員配置についてです。事業主体は伊丹市が行うことを求めていましたが、どうされるのでしょうか。人員配置では、国会での付帯決議で、社会福祉士等の支援業務に精通する人員を十分に配置するとされており、6月議会の答弁ではコンシェルジュのような人材を確保する必要があるとされていましたが、どうされるのでしょうか。また、任意事業として就労準備支援事業、一次生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業等が上がっていますが、どうされるのか、これらを合わせて、職員配置についてもお伺いします。

6)雇用を守る問題について

① 安倍内閣は働き方のルールを変える法案を提出しようとしています。その内容は、どんなに長時間働いても残業代を払わないで済ませる「残業代ゼロ」法案と、労働者派遣法改悪法案です。安倍首相は、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にする、そのための「岩盤規制」を打破するためとしています。しかし、日本の雇用のルールの現状は、派遣・パートなど非正規雇用が全体の4割近くまで広がっており、異常な長時間労働、「サービス残業」、「ブラック企業」が横行し、「過労死・過労自殺」がこの15年間で4倍近くに増加していることにあります。

 党議員団が行ったアンケートの「ひどい働き方をさせられていませんか」という問いには、「正社員と契約社員の賃金格差をなくしてほしい。現状では契約社員は有給なし、賞与なし、サービス残業で低賃金のため結婚できない、子どももつくれない」「裁量労働制なので何時間働いても固定給。裁量制はある程度の年齢になると拒絶できない」など、多くのの異常な現状を訴えておられます。このどこが「岩盤規制」なのでしょうか。市長は、政府が行おうとしている労働法制の改革で、働く市民にどう影響するのか、どうお考えなのか、見解をお伺いします。

② このような安倍首相の、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にするという政策の流れの中で、政府が7割出資する産業革新機構がつくられ、その下でルネサスエレクトロニクス北伊丹工場の閉鎖という大リストラが行われています。この問題では、昨年3月議会以来、雇用と地域経済を守る立場で毎議会質問をしてきました。12月議会では、高崎事業所移転で89名の退職者が出ており、さらに武蔵事業所移転では企業全体で1,800名の退職を迫る状況のなかで、伊丹市と県、労働局が連携して雇用を守ることを求めました。その後、武蔵事業所移転に関して、全体で1,725名が退職を余儀なくされとの報道がありました。12月議会でも、現場で起こっている実態をきちんとつかむことで、対策を立てることができると指摘をしています。そこでお伺いします。

 一つは、北伊丹事業所におけるルネサス本体と関連企業の退職者と再就職の状況をどう把握されているのでしょうか。

 二つには、市長は12月議会で、民・民の雇用関係に介入する特段の権限はないが、立地市である伊丹市として要請をしてきたこと、今後県とも連携して対応していくと答弁され、また、以前から三菱電機にも要請をすると答弁されていました。北伊丹事業所で関連企業も含めると500名近くが職を失った中、パソナなどの支援会社任せでいいのか、急いで労働局や県と連携する必要があるのではないかと考えるものです。ルネサスへの状況確認、三菱電機への要請、三者との連携に関して、どう対応されてきて、今後どのようにされようとするのかお伺いします。

3.教育に関する問題—道徳教育の教科化について

 文部科学省は、小中学校の「道徳」を「特別の教科」にするため、学習指導要領を改訂する案を発表しました。教育長の教育基本方針のなかでも、道徳教育の充実について、「特別な教科」への動きを踏まえ、「道徳教育実践講座」等の実施により教員の指導力向上を図るなどと述べられています。この文科省の動きに対し、「道徳」が教科化されると、国が定めた基準でつくられた検定教科書を使い、国の定めた観点で子どもたちを「評価」することになり、道徳の国家統制が強まるのではないかという危惧が広がっています。

 教科化への懸念の一つが、子どもの道徳が評価の対象とされることです。つまり、子どもの心や価値観を評価していいのかということです。もう一つは、検定教科書が導入されることです。これは、道徳が教科として成立する条件を整えているのかという根本的問題があります。教科の成立条件は、教科が何人も認める客観的な学問・文化・科学を基礎にしています。このことがないままに検定教科書が導入されると、道徳価値が偏り、学問的知識を踏まえない内容の不公正さを招きくことになります。さらに、昨年全国に配布された「私たちの道徳」という副読本には、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義など、日本国憲法に基づく基本的な道徳的価値を尊重する視点と発想が欠落していることも問題です。どうお考えでしょうか。

 日本共産党は、1970年代前半から市民道徳の教育を具体的に提案してきました。今、憲法に基づく民主主義的な道徳教育を進めるため重要と思われることで、一つは、モラルの土台である基本的人権について十分子どもたちに教えることです。特に「子どもの権利条約」の内容を判りやすく伝えるパンフレット等の作成を提案してきましたが、いまだにつくられていません。二つに、学校生活全体で個人の尊厳や子どもの権利を大事にすることです。三つには、子どものたちの学校内外での自治的な活動や労働体験を活発にすること、子どもたちが社会の主人公として活動し、討論し、交流するなかで、社会の形成者としての自身と力量を身につけて生きます。四つには、憲法に基づいた愛国心についての学習を考える必要があります。特に元西独大統領ヴァイツゼッカ―氏の「過去に目を閉ざすものは、結局のところ現在にも盲目になる。われわれの義務は誠実さであの過去を心に刻むことを通してしか前に進めない」といわれたとおり、過去の戦争の歴史を子どもの心に刻むことは、日本人としての誠実さや誇りに不可欠です。

 以上、今後の道徳教育に生かしていただきたいと考えるものですが、教育長の見解を伺います。

2014年9月議会:上原ひでき 本会議 家庭的保育事業・放課後児童健全育成事業条例 討論

2014年9月26日

日本共産党議員団 上原秀樹

 議長より発言の許可を得ましたので、日本共産党議員団を代表して、議案第98号並びに議案第99号に対して、修正案に賛成し、原案に反対する立場から討論します。

 はじめに、議案第98号 伊丹市家庭的保育事業の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定についてです。本条例案は、子ども・子育て支援新制度施行に伴い、家庭的保育事業並びに小規模保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業の設備、運営に関する基準を定めるものです。

 保育事業において重要な要素である家庭的保育事業等における保育従業者の配置基準については、現在の保育水準を低下させない、保育に格差はつくらないという観点が必要です。この点では、第23条以下で、家庭的保育事業並びに小規模保育事業C型、居宅訪問型保育事業における保育士の配置に関しては、国の基準に上乗せし、家庭的保育事業並びに小規模保育事業C型は2分の1以上、居宅訪問型保育事業は保育士とする提案がされていることは評価するものです。しかし、認可保育所と同様に認可される小規模保育事業B型並びにC型において保育士の配置を半数以上としたことは問題があるといわざるを得ません。

 修正案において、小規模保育事業を行う者は、原則として小規模保育事業A型とすることで、現在の認可保育所と同様に保育従業者すべてを保育士とすることができ、保育に格差をつくらせないこととすることができます。

 よって、議案第98号は、修正案に賛成、原案に反対とするものです。

  次に議案第99号 伊丹市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定についてです。本条例案は、子ども・子育て支援新制度施行に伴い、放課後児童健全育成事業に関して、国のガイドラインに基づき事業の設備、運営に関する基準を条例で定めるものです。

 本条例においても、現在の「児童くらぶ」の水準を低下させないことが求められます。一方、「放課後児童支援員」の配置数は、第11条第2項において、支援の単位ごとに2人を配置するとされていますが、「ただし書」において、そのうち1人を除き「支援員」の資格要件のない「補助員」に代えることができるとされています。このことは現在の「児童くらぶ」の指導員がすべて資格を有する人によるとされていることから、その水準が低下することになりかねません。

 なお、委員会の中で当局は、「経過措置」の中で、支援員はこの条例の施行の日から平成32年3月31日までの間、知事が行う研修を終了するとされていることから、研修の間の代替に資格のない「補助員」が必要と説明されています。しかし現在でも指導員以外に資格を有する待機指導員が60名おられ、指導員に欠員が出た場合に代替としての役割を果たしています。したがって伊丹市においては資格のない「補助員」は必要ありません。

 修正案において、この「補助員」の項目を削除するとしていますが、このことが現在の水準を低下させないことになります。

 よって、議案第99号は、修正案に賛成、原案に反対とするものです。

2014年9月議会:上原ひでき 子ども・子育て支援新制度に関する議案質疑

日本共産党議員団 上原秀樹

 議案第96号から99号の4議案に対して質疑を行います。これらの議案は、来年4月から始まる子ども・子育て支援新制度に関する議案であり、保育所、幼稚園、児童くらぶなど子育てに関わる制度を根幹から変えるものです。私は昨年12月議会でこの問題を取り上げ、子ども・子育ての基本理念は、子どもの権利条約第3条「子どもの最善の利益が第一次的に考慮される」こと、また児童福祉法第2条「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」、そして第3条で「この原理は、すべての児童に関する法令の施行にあたっては、常に尊重されなければならない」との規定に基づいて行うべきであると主張し、この立場からの実施を求めました。 今回、実施主体である伊丹市が定める教育・保育施設と運営基準が提案されていますので、以下の点でお聞きします。

1.議案第96号 伊丹市子ども・子育て支援法施行条例の制定について

○ 第2条は、子ども・子育て支援法第19条第1項第2号の内閣府令で定める事由、すなわち支給認定における保育の必要性の認定にかかる事由のうち、小学校就学前子どもの保護者の就労時間の下限を定めるもので、64時間が提案されています。

 一方、国の施行規則では、48時間から64時間の範囲内で月を単位に市町村が定めるとされています。下限時間を定めるに当たっては、伊丹市における保護者の就労状況や待機児童数等様々な観点から、子どもの最善の利益第一に検討がされていると思いますが、64時間を提案された理由についてお聞きします。また、現在の就労時間の下限を何時間とされているのか、この下限時間が変わることで、待機児童数にどのような影響が出ると考えておられるのかお尋ねします。

2.議案第97号 伊丹市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準を定める条例の制定について

○ 第7条第1項では、特定教育・保育施設は、保護者から申し込みを受けたときには、正当な事由がなければ、これを拒んではならない、とされています。この規定は当然ですが、一方で、第3項では、認定こども園と保育所は、利用定員の総数を超える利用申し込みがあった場合、「選考する」と規定されています。しかし、保育所の場合、児童福祉法第24条第1項により、市が申し込みを受けて選考し、保育所に委託することになっており、保育所が「選考する」ことにはならないのではないかと思いますが、第3項を規定された理由をお聞きします。

○ 第14条では「利用者負担額の受領」が規定されています。その第3項では、特定教育・保育施設は、特定教育・保育の質の向上を図る上で必要と認められる対価について、保護者から支払いを受けることができる、とされていますが、どういうものを想定されているのでしょうか。さらに、第4項では、日用品、文具等5項目に渡って費用の額の支払いを受けることができるとされています。

  これら上乗せ徴収や実費徴収に関しては、現在どのようにされているのか。また、保育所の場合、その入所先は保護者の希望も出せるが主に空きのある保育所において市が決定しているという現状があることから、保護者には選択の余地があまりなく、低所得者にとって負担がより重くなる可能性も出てくると考えられます。自治体がこれらを助成する制度が新設されたと聞いていますが、その活用をどう考えておられるのか、お尋ねします。

3.議案第98号 伊丹市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定について

◎ 今回、待機児童の多い3歳未満児の保育を増やすことを目的として、家庭的保育事業等の地域型保育が新設されました。これら地域型保育は、定員20人未満の小規模保育やいわゆる保育ママなどのことで、認可外保育施設からの移行やビルの1室などでの保育が想定されています。小規模保育事業C型や家庭的保育事業では、保育士がゼロでも運営ができ、国は企業などの参入を見込んでいるといわれています。

 この点では、昨年12月議会で、伊丹市としての基本的な考えとして、一つは、保育が必要な子どもの保育は認可保育所の整備で行うこと、認可保育所の整備が追いつかない場合、地域型保育事業で対応せざるを得ない場合も保育条件は認可保育所と同等の基準で行うなど保育の「多様化」によって伊丹市の保育実施責任が形骸化したり、保育の格差を生み出したりするような実施計画にならないようにするべきと求めました。

 条例の提案に当たっていくつか質疑を行いたいと思います。

○ 第7条「保育所等との連携」についてです。国は新制度で認可外保育施設を認可へ移行させることを基本として、これら地域型保育事業を新設しました。

 その移行の際、3歳未満児の保育が終了した後、満3歳以上の児童に対する継続的な教育・保育を提供するため、集団保育の体験や事業者に対する相談等の支援、代替保育などを行う連携施設を適切に確保しなければならないとされています。確保できなければ認可へ移行することが困難になりかねません。その確保は各施設任せで可能と考えるのでしょうか。

 また連携施設の確保における公立保育所と市の役割は重要と思いますが、どう考えておられるのかお聞きします。

○ 第16条、17条「食事の提供」についてです。

 食事の提供は、第16条で施設内での調理により行わなければならないとされています。一方、第17条では、その特例として搬入する方法により行うことができるとされています。保育に格差をつくらないという観点から、自園調理と調理員の配置が基本と考えますが、認可保育所や小規模保育事業等への移行対象である現在の認可外保育所では、施設内で調理を行っているところ、施設整備可能なところ、不可能なところ等、どのような実態にあるのでしょうか。

○ 第23条以下、家庭的保育事業等における保育従業者の配置基準についてです。

 家庭的保育事業並びに小規模保育事業C型、居宅訪問型保育事業における保育士の配置に関しては、国の基準に上乗せし、家庭的保育事業並びに小規模保育事業C型は2分の1以上、居宅訪問型保育事業は保育士とする提案がされていることは評価するものです。しかし、保育に格差をつくらないという観点からするならば、認可保育所と同様に認可される小規模保育事業B型並びにC型、家庭的保育事業、事業所内保育事業において保育士の配置を半数以上としたことは保育に格差をつくることになるといわざるを得ません。

 なぜすべて保育士を配置するとしなかったのか、また、現在の認可外保育施設の保育士配置の実態についてお尋ねします。

4.議案第99号 伊丹市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定について

◎ 放課後児童健全育成事業は、新制度において、地域子ども・子育て支援事業の一つに位置づけられ、対象児童を小学校6年まで拡大するとともに、国のガイドラインに基づき事業の設備、運営に関する基準を条例で定めることになりました。

 この基準についても、第1条「心身ともに健やかに育成されることを保障する」、第5条「発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるよう、当該児童の自主性、社会性及び創造性の向上、基本的な生活習慣の確立等を図」るための条件整備が必要であるとともに、保育と同様、現在の伊丹市で実施されている「児童くらぶ」の水準を下回らない条例の制定が求められています。

○ 第5条、第1項において「家庭地域との連携の下」、第3項「地域社会との交流及び連携を図り」とされた意図はどこにあるのでしょうか。また現状ではどのようにされているのかお尋ねします。

○ 第10条「設備の基準」についてです。

 第2項の専用区画面積に関しては、小学校6年まで拡大するに当たって、そもそも児童一人当たり1.65平方メートルでは狭すぎるのではないでしょうか。この面積で、第1項中の「遊びおよび生活の場としての機能ならびに静養するための機能を備えた区画」の設置は可能なのかどうか、また、現状において、専用区画要件も含めて、本条例の規定に違反することとなる「児童くらぶ」はどの程度生じるのでしょうか。さらに来年度から毎年1学年ずつ増えることになりますが、その年度ごとの状況についてもお尋ねします。

○ 第11条「職員」についてです。

 現在伊丹市にける指導員の資格要件は、保育士の資格若しくは教員となる資格を有する人となっています。しかし今回提案されている「放課後児童支援員」の要件は、第3項の各号の通り、現在の要件を大幅に緩和するものとなっています。さらに、第2項では、「放課後児童支援員」の数を、支援の単位ごとに2人を配置するが、そのうち1人を除き「支援員」の資格要件のない「補助員」に代えることができると、ここでも緩和されています。なぜ現在の水準を下げる条例提案をされたのか、その理由をお聞きします。

 次に、第4項「一の支援の単位を構成する児童の数は、おおむね40人以下とする」としている点についてですが、現在の配置基準との差はないのでしょうか。また、付則において、3年を経過するまでの間は、「60人」とするとされていますが、その間、第1条並びに第5条に規定された事業の目的を達成することは可能と考えるのか、3年後、どのような解消が考えられるのかお尋ねします。

(2回目)

議案第98号 伊丹市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定について

○第16条、17条の「食事の提供」については、現在14園中6園が自園調理であると。認可外保育所が家庭的保育事業等として認定しようとする場合、さらに調理設備が可能なところがあるとするならば、約半数は自園調理という条件にしたとしても問題は生じないことになる。

○第23条以降の家庭保育事業等における保育士の配置基準に関しては、現在の認可外保育所において、3分の2以上が保育士であると。さらに100%保育士を配置しているところもあるとのこと。とすれば、保育士配置の基準をすべて100%とした場合でも認可の条件はあるということに。

○保育士の配置基準をなぜ100%にしなかったのかとの質問に、待機児童の早期解消、保育士の確保が困難であることの答弁。待機児童の早期解消は重要な課題であることは事実だが、かといって現在の認可保育所の基準を低下させていいわけではない。

 認可外保育所が、認可保育所か、小規模保育所か、また家庭的保育所かに移行するかどうかは、その事業所の判断であり、自園調理も含めて現在の認可保育所と同じ条件で、同じ水準で保育を受けることができるという条件とすることが必要であり、それは可能ではないでしょうか。

議案第99号 伊丹市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定について

○第11条の職員の資格基準について、民間の事業者が参入することを前提として、省令の基準どおりにしたと。

 では、伊丹市で行っている公立の「児童くらぶ」事業における職員の資格基準関しては、条例どおり緩和されるのか、今後どうされようとしているのでしょうか。

 また、民間の事業者が参入してくる場合でも、どの事業所に児童が通っても、同じ条件・水準で児童の放課後の生活の場が保障されることが必要ではないでしょうか。

2013年3月議会:上原ひでき 地方交付税の削減、地域の元気臨時交付金、子育て支援事業計画

 今年の3月予算議会では、4月に市長選挙を控えていることから、2013年度予算案は「骨格予算」として提案されました。「骨格予算」とは、経常的な経費と国の予算に伴う経費の計上にとどめるもので、政策的な予算は6月議会における新市長の所信表明とともに提出されることとなります。

 上原議員は、次の点で質疑を行いました。

 ①地方交付税に関して、特に来年度予算で政府は、地方公務員の給与削減を前提として、交付税を削減している問題について。

 ②国による補正予算に伴う「地域の元気臨時交付金」について

 ③「子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査委託料」について

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2013年3月議会 議案質疑

2013年2月28日
日本共産党議員団 上原秀樹

1.歳入 第10款 地方交付税

1)政府の「平成25年度地方財政収支見通しの概要」から地方一般財源、地方交付税について伺う

① その「概要」によりますと、2013年度の地方財源に当たる一般財源総額は、前年と同額とされました。しかし一方では、社会保障関係の自然増分5500億円は確保したとされたことを勘案すれば、実質的には抑制基調となっているではないかと思いますが、現場での実感はどうなのかお伺いします。

② 政府は地方公務員給与の7.8%引き下げることを要請し、地方交付税を8505億円減額した問題について

・ 民間の賃金も1997年をピークに年間59万円下がっており、働くものの所得は下がるばかりです。安倍首相も所信表明演説で、国民所得が失われていることを経済危機の要因にあげ、「突破にまい進する」と言明されました。それならば自治体に公務員の賃下げを強要し、政府が主導して国民の所得を奪おうとするやり方は矛盾するのではないかと考えるものです。

・ 地方6団体も批判している通り、政府のやり方が乱暴で、ルールに反していることも問題です。地方公務員の賃金は、自治体が独自に自主的に条例をつくって決定するのが地方公務員法で定められた原則です。職員との交渉にも応じなければなりません。政府が一方的に下げ幅を決め、実施を強要する前提で地方交付税を減額するやりかたは、この原則を踏みにじる行為と考えます。

 これらの点に対する見解をお伺いします。

③ 地方公務員給与削減に見合った歳出を確保することについて

・ 全国防災事業費973億円、緊急防災・減災事業費4550億円を財源は全額地方債で措置するとされました。これらには伊丹で活用できるものがあるのかどうか。

・ 地域の元気づくり事業費3000億円は地方交付税で措置するとされました。
 この件に関して政府は、これまでの人員削減や給与削減の実績を反映して算定するといっていますが、いったいどういうことなのでしょうか。政府には、国家公務員の7.8%削減後の国の指数と比較して、それを上回る給与削減を「要請」するとの考え方があるようですが、人も給与も減らしたところががんばったところなので交付税を余分に措置するなどというやり方は、地方交付税の算定方法として原則を踏みにじっていると考えるものです。

 以上に対する見解を伺います。

④ 将来の地方交付税はどうなるのか

 地方財源不足額と財源対策に関しては、その不足分を国と地方が折半し、地方では臨時財政対策債で対応しています。一方、国は折半対象外の財源を、財源対策債と臨時財政対策債の既往債元利金分の財源対策と合わせて行っています。さらには、2012年度2月補正予算のような補正予算債が後年度返済時に100%交付税算入されることになってもいるところです。後年度にどんどん付回しをし、当面の財源対策をしているようですが、国と地方の借金は膨らむ一方であり、いったい国はどんな展望を持っているのでしょうか。地方固有の財源である地方交付税のあり方は、伊丹市にとっても死活問題でもあることから、この点についても見解をお伺いします。

2)伊丹市における普通交付税と臨時財政対策債の予算について

 来年度、普通交付税は47億円、臨時財政対策債は36億4千万円で、合計83億4千万円を見込んでおられます。一方、今年度の補正予算後の原形予算は、普通交付税臨時財政対策債を合計すると、85億270万3千円で、今年度の見込みは原形予算比で、1億6270万3千円の減となるものです。市税の増収が見込まれるということもありますが、どのような見通しで予算を組まれたのでしょうか。お伺いします。

2.歳入 第14款 国庫支出金 第2項 国庫補助金

1)第1目 総務費国庫補助金 地域の元気臨時交付金について
政府は、公共事業を積極的に活用した大型経済対策を打ち出し、補正予算と2013年度予算を「15ヶ月予算」として一体的に取り組むとして、補正予算では国債の追加発行によって公共事業拡大を中心に「大盤振る舞い」をする一方、2013年度予算については国債発行を抑制し、社会保障等の抑制によって歳出抑制を重視するという枠組みなっているように思います。しかし地方にとっては、国の補正予算で「地域の元気臨時交付金」が創設されたことで、歓迎される内容ともなっています。

 伊丹市における「元気交付金」は、補助事業における地方負担額を12億1737万6千円とし、その70%を交付見込みとして、8億5216万3千円とされています。国は交付限度額の算定対象となる公共事業等は、国の補正予算に計上されたものの内、建設公債の発行対象経費となるものが含まれることとなるとされ、また、追加公共事業を実施しない団体には交付されないとも言われています。伊丹市の場合は、交付金算定における補助事業における地方負担額をどの部分から算定されたのか、すべて事業実施5カ年計画の中から出されたものと見ていいのか。さらに2013年度、14年度に渡って交付金を充当する事業についても同様と考えていいのか。交付金の算定根拠も合わせてお伺いします。

○また、政府も今回の交付金は今年度に限るとされているとおり、臨時的なものに過ぎず、一時的な雇用は生まれるものの、継続的な経済効果が見込まれるとは思えません。この点に関して、伊丹市における経済効果をどう考えるのかお伺いします。

○補正予算債と合わせて、「後年度の市の一般財源を約19億円縮減できる」ことについて

3.歳出 第3款民生費 第4項児童福祉費 第1目児童福祉総務費のうち、「子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査委託料」について

1)ニーズ調査、並びに事業計画を策定するにあたって、子ども・子育て支援法をどのように受け止めるのか

 民主・自民・公明の3党による合意をもとに、新システムに関する子ども・子育て関連法が8月10日に可決成立しました。今回予算措置されている「子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査委託料」は、子ども・子育て支援法の中で、市町村、都道府県は基本指針に即して、5年を1期とする教育・保育および地域子ども・子育て支援事業の供給体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画を定めるとされたことによるものです。

 子ども・子育て支援法の概略の一部を、個人的に列挙すると次のような問題があります。

・ 児童福祉法第24条で、争点となっていた市町村の実施義務規定が、第1項として残ったこと。同時に第2項で、認定こども園または家庭的保育事業等により必要な保育を確保するための措置を講じなければならない」とされたこと。このことは、必要な子どもは保育所で保育しなければならないが、認定こども園や家庭的保育事業等を整備・誘致すればそれでいいということになりかねません。すなわちこのことは、保育に対する公的責任の縮小であると考えます。一方で市町村は認定こども園や家庭的保育事業、小規模保育事業などを確保する措置が求められるということにもなります。

・ 認可保育所の建設や改修整備のために、4分の3を国と市町村が負担してこいた国庫補助制度が廃止されたことです。

・ 保育所等と保護者の直接契約制度が導入されたこと。

・ 親の就労時間によって子どもの必要な保育時間を決める認定制度が導入されること。

などです。

 これらの内容は、従来の「次世代育成支援行動計画」とは大きく違ったものになり、2015年4月の本格施行に向けて、諸準備に大変な作業も一定の費用も見込まれるものとなります。今年度のアンケート調査に続き、今後事業計画を策定するにあたって、これらの新たな法律の内容を、伊丹市の子育て支援の方向性を見据えるにあたってどのように受け止めておられるのかお伺いします。

2)子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査と「子ども・子育て会議」について

 事業計画ニーズ調査の項目は、おそらく国が示してくると思われます。しかし、伊丹市独自の調査項目の検討や、新しい制度の理解を深めることとあわせて議論する必要性から、早い段階から関係市民の参画が必要と考えるものです。国は、地方版「子ども・子育て会議」の開催を来年度4月にも予定しているが、伊丹市はどうするのかお伺いします。

3)次世代育成支援行動計画との関係について

 「次世代育成支援行動計画」が2014年までで、2015年からは新制度が施行されることになります。「行動計画」は現在、「次世代育成支援推進協議会」で実施状況の点検・評価および推進する体制を取っていますが、来年度「子ども・子育て会議」が設置されると「推進協議会」と平行して二つの会議が運営されることになります。

 その二つの会議の関係をどうするのか、また、「次世代育成支援行動計画」は今後どうなるのか、「支援事業計画」に発展的解消となるのか、あわせて見解をお伺いします。

2012年9月議会代表質問:ひさ村真知子 子ども・子育て新システムについて

2012年9月19日
日本共産党伊丹市会議員団 ひさ村真知子

2012年9月議会 代表質問

  1. 「税と社会保障の一体改革」は市民生活に何をもたらすのか
  2. 原発再稼動に関しての市長の見解を。
  3. 介護保険施設の充実について
  4. 子どもの権利を保障し守るために
  5. 男女共同参画計画の推進のために
  6. 子ども・子育て新システムについて(このページ)

6、子ども・子育て新システムについて

 「子ども・子育て新システム」関連法案は、民主、自民、公明3党により修正され、衆議院本会議で賛成多数で可決されました。新システム関連法は、「子ども子育て支援法」「関係整備法」、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部改正」(認定子ども園法)の三法案です。「新システム」関連法で子どもたちの保育はどう変わるのでしょうか。

 修正案の内容として大まかには1、幼保連携型認定子ども園を単一の施設として認可し、株式会社の参入は認めない。保育園、幼稚園の移行は義務付けない。2、子ども、子育て支援法については、現金給付及び、子どものための教育・保育給付の創設、民間保育所に関しては現行通り、大都市の保育需要の増大に対応するため認可制度の見直しをされたほか、多様な保育として、やむをえない事由がある場合は過度的緊急的な措置として、家庭的保育、小規模保育等が位置付けられています。

 子どものための現金給付、保育給付の対象となる施設の利用については、保護者の直接契約となり市町村は認可保育所と並列におくことは大変な保育の後退です。「修正案」による「認可制度」は、待機児がいる状況なら基本的に認可しなければならないとするもので、このような認可制度の緩和では、「保育の質の確保」ができるのかが問われます。特に認可基準は、保育所、認定子ども園、それぞれに異なる基準が設けられます。国が定める基準をもとに市町村が条例で定めますが、まだその基準は明らかになっていません。しかし自治体の判断で引き下げが可能で、子どもの安全が守れないとの批判がありましたが、修正されていません。

①おたずねしますが。この新システムでの施設の面積基準は、国の参酌基準となっていますが、「保育の安全のために質の基準はきっちりと確保されなければなりません。現状の基準を守っていただくことを要望いたしますが、どのような見解をお持ちか御伺い致します。

②また新システムでは、施設整備費などの国の補助金の扱いが児童福祉法の現行の施設補助の規定がなくなります。これでは施設の新設や建て替えもできません。伊丹市としての見解をお聞きします

③保育所申し込みの規定に関しては、窓口は伊丹市でしょうか

④認定こども園の幼保連携子ども園には「株式会社の参入は認めない」としているが、他の子ども園は株式会社も参入可能で、認可外施設も「認定」することが可能となっていますが、伊丹市としてはこのような方法を可能とするのかお伺いします。以上で一回目の質問といたします。

2012年3月議会:上原ひでき 一般会計予算等に対する討論

(一般会計予算・市税条例改正・福祉医療改悪に反対、土地信託に関する議案に賛成

(2012.3.23)
日本共産党伊丹市会議員団 上原秀樹

 ただいま議長より発言の許可を得ましたので、私は日本共産党議員団を代表して、議案第28号「平成24年度伊丹市一般会計予算」、議案第52号「市税条例の一部を改正する条例の制定について」、並びに議案第57号「伊丹市老人等医療費の助成に関する条例および伊丹市子育て支援のための医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例の制定について」に反対、議案第70号「市有地の信託の変更について」に対しては賛成の立場から意見を述べます。

平成24年度伊丹市一般会計予算

 はじめに、議案第28号「平成24年度伊丹市一般会計予算」についてであります。

 来年度を迎えるにあたっての国民・市民のくらしに関しては、政府の統計でも、2011年の雇用者報酬が10年前に比べて約20兆円も減少、労働者賃金は年平均50万円減少し、家計消費も前年比1.1%減という苦しい状況が続いています。伊丹市においても、今年の所得状況では、給与が2.3%、事業所得が1.98%と対前年比で減少し、法人市民税でも均等割り、法人税割とも前年を下回っています。

 このように景気が落ち込み、格差が拡大する中、民主党の野田政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税を2015年に10%に増税する法案を成立させようとしていますが、国民の暮らしを大きく圧迫し、景気を冷え込ませ、日本経済をどん底に突き落とすとともに、財政破綻も一層ひどくするものとなることは間違いありません。

 提案されています2012年度の伊丹市一般会計予算は、歳入・歳出660億円で、前年対比6.1%の増とするものです。しかし、借換債や第3セクター関係費用を除くと601億円で、3.4%の減となります。個人市民税では市民に対して年少扶養控除の廃止等によって約3億4,500万円の増税をするものですが、法人市民税と償却資産税とともに、リーマンショック前と比べて約29億円の減少のままとなるとされており、市民のくらしや中小零細業者の営業は依然として厳しい状況が続くことが予想され、このことから伊丹市においては、一層暮らしを守る施策が求められることになります。

 一方、普通交付税と臨時財政対策債の合計は、市税が約2億4000万円減少し、扶助費が約3億円増となっているにもかかわらず、実質前年とほぼ同額となっています。この点では地方財政計画においても、社会保障関係費の自然増における地方負担分を、給与関係費と投資的経費の削減によってつじつまを合わせただけのもので、その反映といえます。給与関係費に関しては、政府の「集中プラン」で大幅削減を誘導し、地方ではこれ以上減らすことができないところにあります。このような財政計画を見る限り、一般財源は総額確保したとはいえ、実際には歳出削減路線を伴っており、小泉内閣による地方交付税の大幅削減はいまだに回復できていません。

 国に対して、自治体が「住民の福祉増進」という役割を十分発揮できるだけの一般財源の保障を強く求めていただきたいと思います。

 本予算の問題点について述べます。

 第1に、同和問題についてです。伊丹市は同和教育・啓発を推進していますが、その理由として、「人権に関する意識調査」から、「居住の敬遠」と「結婚問題」で20%台から30%台の人が同和問題に関する人権問題が起きていると思うとされたこと、またのその原因を「社会全体に残る差別意識」とする回答が40%近くあったことから、同和問題は解決されていないためとされています。しかし、そのような差別の実態はほとんどありません。にもかかわらず、「意識調査」でそのような結果が出ることにこそ、いまの同和教育・啓発の問題があります。かつての部落問題に関して、正しい知識を得るための学習が必要なこともあります。問題は、伊丹市の同和教育・啓発の出発点が「いまだに差別意識が根深い」という認識にあることです。「差別意識は根深い」ことを強調することは、市民が正しい認識を持つことができなくなるとともに、旧関係住民の気持ちも逆なですることになります。このことは、人権教育指導員に、同和問題に関して、部落解放同盟のメンバーが4人入っていることにも起因します。ただちに同和問題の解決の展望を市民に示し、同和教育を終了することを求めます。また、かつてのいわゆる「同和住宅」の一般対策化に関しても同様です。早期に解決することを求めます。

 第2に、福祉医療助成において、助成対象者を削減する問題です。予算の上でも、重度の身体・知的・精神障がい者に対する医療費助成では、2%の60人が、また子育て支援のための医療費の助成おいては、22,463人のうち4.8%の1,070人が対象から外れることになります。伊丹市は、他市に先駆けて子どもの医療費助成を充実してこられました。このことは評価をするものですが、他市においては、県の改悪に従わず、現行を維持する自治体があるとともに、保護者の経済的理由により子どもが医療を受けることができない事態をなくし、安心して子育てができるように、入院、通院とも中学校卒業まで無料化が広がっています。福祉医療助成対象者の削減は、その流れに逆行するものです。

 第3に、PPP(官民共同)基本方針策定の問題です。伊丹市は、公共施設の効率化・効果的な整備や維持運営に資するため、PFI事業に関して、その導入基準や手続き、体制などを取りまとめるとされるとともに、さらに市場化テストなども検討するとされました。しかし、PFIに関しては、近江八幡市立総合医療センター等の破綻で明らかになったとおり、民間事業者の利益が優先され、高金利負担となり、いつ発生するか分からない修繕費用の前倒し支払い、中間業者が介在するというPFIの制度的欠陥性などが問題となっています。一時的な費用負担軽減のため、市民のための公共財産を安易に民間にゆだねる手法はやめるべきです。

 第4に、伊丹市立高校(定時制)の阪神昆陽高等学校校舎への移転並びに、定時制高校統合負担金9,000万円の問題です。来年度はその初年度に当たるため、改めて問題点を述べておきます。定時制の移転に関しては、多くの反対の声や不安がありながらも、移転の決定を急いだこと、すでに施設整備費に約3,000万円支出し、来年度、施設使用料932万円、送迎業務委託料1,150万円など新たな負担をしなければならなかったこと、そして生徒の通学時間の調整や今後の留年生徒への対応策など様々な困難を抱えた生徒に精神的な負担を押し付けることなどです。また、統合負担金に関しては、来年度から4年間合計3億6,000万円支出するもので、学校教育法や地方財政法に違反する可能性もあるとともに、違反しないとすれば何のための負担金か不明のまま負担するという性格のものです。

 来年度、困難を抱えながらのスタートになると考えますが、定時制は、小・中学校時代に不登校経験のある生徒や中途退学者など、さまざまな入学動機や学習暦のある生徒が学んでおり、伊丹市教育委員会がその生徒の教育を受ける権利を保障する上で、来年度からの3年間、全力で支援をしていただきたいと思います。

 また、統廃合完了後の問題では、県立高校に移管した以上県教育委員会の方針で運営されるもので、答弁にあったとおり、教育内容を伊丹市教育委員会と県教育委員会で協議できるものではありません。伊丹市立定時制高校の伝統を市内外に発信する上では、「定時制教育の記録」などの冊子をつくることを提案します。検討をお願いします。

 次に評価すべき点、並びに要望すべき点について述べます。

 第1に、国民健康保険事業に対して、来年度も4億2,500万円を補助するとともに、国の制度ではありますが、後期高齢者医療制度における人間ドッグ助成事業が行われることです。本会議でも求めましたが、国保への一般会計からの補助に関しては、次年度以降、新たな仕組みをつくり、増額していただきたいと思います。

 第2に、子育て支援に関して、神津認定子ども園整備事業では、神津まちづくり協議会や幼稚園・保育所関係者との協議を積み重ねた設計に基づき、建設工事が始まります。認定子ども園にはさまざまな解決すべき問題は残されていますが、伊丹市が責任を持つ公立園であることから、子どもの立場に立って打開していただき、神津地区のまちづくりの核となり、子育て支援の拠点となるよう努めていただきたいと思います。また、「詰め込み」保育の解消、待機児童解消に向けて認可保育所誘致に全力をあげていただきたいと思います。

 第3に、「協働の指針」の策定については、新たに市民が主体となったまちづくりを実現するものとして期待するものです。地域には、孤独死や貧困の広がりによる困難など様々な地域問題がありますが、それらの問題を協働で解決できる力量を高めていくことが求められています。地域には自治会などの地縁組織をはじめ、様々な団体・組織があります。これらの多様なまちづくりの主体が、行政の公共性を前提として、行政と対等な関係の中で、それぞれの特徴を活かしながら、連携・協力して共通の目標を達成するために力をつくす仕組みをつくることは、住みよい地域づくりに大きく貢献するものと考えます。地域問題解決の手段として必要な協働関係を構築することができるような指針となることを要望します。

 以上、主なものしか触れることはできませんでしたが、これ以外に様々な要望を本会議、委員会で行いました。早期に実現することを求め、反対の立場からの意見とします。

市税条例の一部を改正する条例

 次に、議案第52号「市税条例の一部を改正する条例の制定について」であります。

 本条例案の問題の第1は、付則第9条において、2013年1月1日以降支給の退職所得に関して、個人市民税の10%税額控除を廃止しようとしていることです。廃止によって約1000万円の増税となるものです。

 問題の第2は、付則第24条を新設することで、全国緊急防災・減災事業の財源確保を名目に、個人市民税の均等割を500円引き上げようとしていることです。このことによって、86,000人に対して、4,300万円の増税となるものです。個人市民税の均等割は、就業者数に照らしてそのほとんどが納税義務者となっており、所得の低い人にも負担を課すものです。応能負担こそ税制の基本であり、低所得者に負担を強いる個人市民税の均等割引上げに財源を求めるべきではありません。しかも、引上げ期間は10年間であり、恒久的な増税措置になりかねないものであります。さらに、全国レベルでいえば、住民税均等割の引上げによる地方税の増税は被災自治体の住民にも及ぶものであり、被災者支援に反するものと言わなければなりません。
 よって本条例案に反対するものです。

伊丹市老人等医療費の助成、子育て支援のための医療費の助成

 次に、議案第57号「伊丹市老人等医療費の助成に関する条例および伊丹市子育て支援のための医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例の制定について」です。

 本条例案は、重度の身体・知的・精神障がい者に対する医療費助成に関して、また、子ども医療費助成制度における乳児以外の医療費助成に関して、助成を受ける保護者等の所得要件を、主たる生計維持者から世帯合算に変更しようとするものです。このことによって、先ほど一般会計予算で述べたとおり、多くの助成対象者が削減されます。

 伊丹市は、所得制限に関しては、県の制度に合わせていくということが方針であるとされていますが、神戸市や明石市、芦屋市、宝塚市においては今回の県の制度見直しに合せず、いままでどおりの所得制限として対象者を削減しない方針です。もともと伊丹市も県の行革による医療費助成削減に反対していたことから、削減しない方針を貫くべきです。

 主たる生計維持者の所得と世帯合算の場合の矛盾を解消に関しては、所得制限の上限を引き上げることなどによって矛盾解消による助成対象者削減をしない措置を考えるべきです。さらに、入院医療費助成等県の制度に上乗せしている制度に関しては、県の所得制限に合せる必要はありません。

 よって、本条例案に反対するものです。

市有地の信託の変更

 次に、議案第70号「市有地の信託の変更について」です。

 本議案は、信託の目的に「処分」を加えることで処分型の信託に変更し、処分に対する信託報酬を、売却代金収入に1000分の30を乗じてえた額に100分の105を乗じて得た額にしようとするものです。

 旧伊丹市役所で、後に社会経済会館となった伊丹市中央3丁目406番8の土地に関して、伊丹市は、1989年(平成元年)3月24日に、当時の三菱信託銀行株式会社(現 三菱UFJ信託銀行株式会社)と土地信託契約を締結し、現在に到りました。

 当時の「市有地の信託について」の議案に対する党議員団としての態度は、国の信託に関する法律改定は民間活力導入政策の一環として行われたものであること、公共財産は住民全体の公共的利益のために使われるべきもので、民活の名による民間企業の営利の具にしてはならないこと、将来の担保も不明確なものであることから反対しました。

 1989年度予算審議における党議員団の委員会質疑の中で、当時の市長は「リスクはあろうとも、挑戦していくことが必要」「危険ばかり感じておっては、発展はありえない」と答弁され、将来の破綻の危険性を承知の上で土地信託の契約に踏み切っています。当初予定した伊丹市に対する信託配当累計は、34億2,400万円、固定資産税・都市計画税の累計10億7,100万円と合せて、約45億円が30年間で伊丹市に入ってくるというものでした。一方、信託報酬は3億1,100万円、銀行利息は約20億円とされ、民間企業の営利も保障していました。

 ところが、右肩上がりのバブル期が30年も続くはずはなく、危惧していたとおりの事態となりました。この間、伊丹市が受け取った信託配当と固定資産・都市計画税の合計は、2010年度末で12億3,470万円にとどまり、一方で、銀行に対する利息は12億5,400万円、信託銀行への信託報酬は1億3,300万円で、合計13億8,700万円となり、伊丹市が受け取った金額より多く、民間企業の営利の具とされてきたことはいうまでもありません。

 いま、明らかに信託事業は破綻しました。このことは、リスクを見込んだ上での信託事業決行に対して、また、「官から民へ」「民間活力の導入」「民間のノウハウを活かす」などと、公が果たすべき「住民の福祉向上」を民間にゆだねてきた路線そのものに対して、その問題点と限界が明らかになったといえます。
 今回提案されている処分型信託への変更によって、何よりも市民の大切な財産を失うことになります。信託の出発点と今日までの経過における当局の責任は重大といわざるを得ません。この件に関して、本会議・委員会の中で様々な議論が交わされました。しかし、このまま継続すると、空いている床が埋まる保障はなく、たとえ埋まったとしても終了時までのリスクは背負い続けなければならず、さらに家賃の引き上げの展望もないまま推移することとなり、傷口は広がり、最終的に受益者である伊丹市が、その債務を負担することになります。

 したがって、党議員団としては、本議案における処分型信託への変更を是とするものであります。

 なお、信託銀行が行う入札に当たっては、伊丹市として、透明性が確保されるあらゆる手段を指示されることを求めて、賛成の立場からの意見とします。

 議員各位のご賛同をお願いしまして、討論とします。

2012年3月議会:上原ひでき 代表質問

2012年3月6日
日本共産党伊丹市会議員団 上原ひでき

代表質問要旨

1.市長の情勢認識を問う

1)国民・市民のくらしと民主党野田内閣の「社会保障と税の一体改革」について
 ―日本共産党の提言をもとに、消費税増税と社会保障の「改革」の実態をただす

 内閣府が2月13日に発表した国内総生産(GDP)速報によると、昨年10月から12月期の実質経済成長率は年率で2.3%のマイナスとなりました。内需は年率で0.2%増加し、輸出が年率11.9%の大幅減少となったことが響いています。世界経済危機のもとで、これまでのような輸出依存の経済成長路線にますます展望がなくなりました。

 このもとで、日本経済の低迷と世界経済危機を口実に、大企業は大リストラ攻勢をかけてきています。正規社員から非正規に置き換え、さらに、大規模な非正規切りを進めた自動車や電機などの大手製造業は、国内雇用を破壊し、若者たちから仕事を奪いました。その結果、2011年の雇用者報酬は、10年前に比べて約20兆円減少、労働者賃金は年平均50万円の減少、家計消費も前年比で1.1%減の276兆円となり、相対的貧困率も16%まで上昇し、アメリカに次ぐ貧困大国、年収200万円以下のワーキングプアは1000万人を超え、子育て世帯の貧困化による子どもの貧困の問題、30代から50代の生活保護世帯の増大等々に現れています。一方、資本金10億円以上の大企業の内部留保は、10年前の172兆円から266兆円へと94兆円増やし、株主への配当は3倍以上に増やしています。

 このような景気が落ち込み、格差が拡大する中、民主党の野田政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税を2015年に10%に増税する法案を成立させようとしています。この消費税第増税計画は、三つの大きな問題点があると思います。

 第1は、ムダづかいを続けたままの大増税であるということです。八ツ場ダムや「1メートル1億円」の東京外郭環状道路などの大型開発の復活、F35を次期戦闘機として買い入れるために1.6兆円の増額、320億円に上る政党助成金は受け取り続け、その一方で、富裕層や大企業には年間1.7兆円もの新たな減税です。

 第2に、社会保障切捨てと一体の大増税だということです。老齢年金、障害者年金の削減、年金の支給開始を68歳から70歳に先延ばし、医療費の窓口負担を増やし、保育への公的責任を投げ捨てる「子ども・子育て新システム」の導入など子どもから高齢者まで負担増と給付削減を行うものです。

 第3に、日本経済をどん底に突き落とし、財政破綻も一層ひどくするものということです。1997年の橋本内閣のとき、消費税5%への増税など9兆円の負担増を強行しましたが、このことで、回復の途上にあった景気をどん底に突き落とし、税収の落ち込みと「景気対策」のための財政支出でわずか4年間に借金が200兆円も増え、財政を破綻させました。今回は、消費税10%への引き上げで13兆円の増税、年金の削減や医療などの保険料値上げによる負担増を合わせて年間20兆円もの負担が増えます。しかも地域経済が深刻な疲弊の下にあるさなかでの大増税であり、国民の暮らしに計り知れない打撃を与え、日本経済をどん底に突き落とし、財政破綻を一層ひどくすることになります。また、東日本大震災での普及・復興に逆行することにもなります。

 日本共産党は、このような消費税の大増税に断固として反対を貫きます。同時に、消費税の増税なしに、どうやって社会保障の再生・充実と、財政危機打開を進めるのか、具体的な提案を行いました。

 その考え方は、社会保障の段階的な充実と国民所得を増やす経済改革という日本の柱を同時並行的に進めていくということです。第1段階は、小泉「構造改革」以降の改悪によってゆがめられた社会保障を再生するもので、例えば医療費では、子どもは無料、現役は2割、高齢者は1割に、年金削減策の中止、特養ホーム・保育所の待機者をゼロに、国保税の国の責任による一人1万円の引き下げなどで、その財源は、大型事業や原発推進費、政党助成金などの歳出の無駄の削減で3.5兆円、証券税制強化や最高税率の引き上げ、「富裕税」、「為替投機課税」「環境税」の創設など歳入の確保で8兆円から11兆円を見込んでいます。第2段階は、ヨーロッパ並みの先進水準の社会保障を確立するため、最低保障年金制度の確立、医療費の窓口負担の無料化、介護の利用料ゼロなどで、財源は、累進課税を強化して所得税の抜本改革を行うなどで6兆円以上を見込んでいます。同時に、国民の所得を増やして税収増を確保するため、人間らしく働ける労働のルールをつくり、中小企業への本格的な振興策強化等を行うものです。このようにすれば、社会保障を充実させ、財政再建も可能と考えるものです。

 市長にはあらかじめ日本共産党の「提言」をお渡ししています。市長は、社会保障切り捨て、消費税増税の「一体改革」をどうのようにお考えなのか、日本共産党の「提言」に対する見解もあわせて伺うものです。

2)伊丹市の財政と政府の地方財政計画(地方交付税)について

 2012年度の一般会計予算は、660億円で、前年対比6.1%の増としていますが、借換債や第3セクター関係費用を除くと601億円で、3.4%の減とするものです。そのうち、個人市民税では市民に対して年少扶養控除の廃止や特定扶養控除の縮小、均等割り税率の引き上げ等によって約5億円の増税となりながらも、前年対比で3億1600万円の増でしかなく、法人市民税と償却資産税とともに、リーマンショック前と比べて約29億円の減少のままとなっています。市民のくらしや中小零細業者の営業は依然として厳しい状況が続くことが予想され、このことから伊丹市においては、一層暮らしを守る施策が求められることになります。

 一方、前年比で市税が約2億4000万円減少し、扶助費が約3億円増となっているにもかかわらず、普通交付税は実質前年とほぼ同額となっています。社会保障関係経費は自然増だけでも大きく増額しているにもかかわらず、なぜ前年対比で実質同額の普通交付税の予算なのでしょうか。地方財政計画においても、普通交付税はほぼ前年と同額です。しかし、社会保障関係費は、自然増における地方負担分だけで7715億円増加しており、「子どものための手当て」の地方負担増加額などを加えると1兆円以上の増となるものです。地方財政計画で、社会保障関係費を確保したとされていますが、結局給与関係費と投資的経費を削減しつじつまを合わせただけではないかと思います。給与関係費では、政府の「集中プラン」で大幅削減を誘導し、地方ではこれ以上減らすことができないところにあります。このような財政計画を見る限り、一般財源は総額確保したとはいえ、実際には歳出削減路線を伴っています。小泉内閣による地方交付税の大幅削減はまだまだ回復できていません。

 このような政府による歳出削減策は、伊丹市の財政に大きく影響していると考えるものですが、市長は来年度の地方交付税のあり方をどのように評価しているのでしょうか。同時に、地方交付税の「上乗せ」措置が継続された「地域経済基盤強化・雇用等対策費」の地方配分、さらに通常の基準財政需要額の関係費目の単位費用に増額される7550億円に関して、どのように見積もりをたてられたのでしょうか、お伺いします。

2.市民が主体となったまちづくりの実現について

1)参画と協働による市民自治

 市長は施政方針の中で、多様な主体が地域の中で活動し、連携し合える住民自治の仕組みづくりが必要であること、そのために市民と行政が連携し活動する仕組みとなる「協働の指針」を策定すること、PPP(官民共同)基本方針を策定し、「新しい公共」づくりを検討するとされました。

①「協働の指針」について

 地域社会に関して、この間、衝撃的な事件が相次いだことは改めて現代の貧困問題、社会的つながりの問題を考えさせられました。「無縁社会」と名づけられる現代社会は、地縁・血縁というようなつながりの希薄さの中で、多くの人々が孤独の中で生きている現実を露呈させています。これらの状況は、国における社会保障の充実と高齢者を地域のつながりで支える体制の強化、高齢者の力を活かすまちづくりをどのように進めるかが喫緊の課題となっていることを示しています。地域には、自己責任の強調ではなく、多くの人々を包み込み、共同の力で地域問題を解決することができる力量を高めていくことが求められています。そのためには、自治会やコミュニティ組織を基礎にして、子育てサークルなどやボランティア、NPO、民生委員、PTA、子ども会、老人会、各種団体等々などと共同し、高齢者や子ども、障がい者をはじめとして住民の暮らしを守ることと地域をつくることを結び、日常の取り組みを通じて地域力・自治力を蓄積していくことが必要です。これらの多様なまちづくりの主体が、自治体行政活動の公共性を前提として、行政と対等な関係の中で、それぞれの特徴を活かしながら、連携・協力して共通の目標を達成するために力をつくす仕組みをつくることは、住みよい地域づくりに大きく貢献するものと考えます。

 そこでお伺いします。一つは、以上述べたことが「協働の指針」の定義のようなものになると考えますが、当局はその定義に関してどうお考えなのか、見解を伺います。二つに、まちづくり事業制度として事業支援することを考えているのか、さらには地域コミュニティ組織への新たな支援の仕組みをつくろうとされているのでしょうか。三つには、まちづくりを進める組織を支援するための「支援センター」的な組織が必要になるのではないかと考えますが、以上に対する見解を伺います。

②PPP(官民共同)基本方針の策定について

 本来、PPP(官民共同)というものは、例えば水道や交通など従来公営で行ってきた事業に、民間事業者が事業の計画段階から参加して、設備は官が保有したまま、設備投資や運営を民間事業者に任せる民間委託などを含む手法をさしているとされ、PFIよりも幅広い範囲を民間に任せるものとなっています。

 2007年に出された「大阪版PPP改革について」を見ますと、その手法はPFIや市場化テスト、アウトソーシングなどの「民間開放」、地方独立法人化や広告事業、民間との人事交流などの「民間活力の活用」、住民・地域・NPO・企業などとの「協働」の3本柱から成り立っています。伊丹市は「協働の指針」は別につくりますから、大阪版のように全国的に行われているPPPからすると、民間開放と民間活力の活用ということになります。しかし、民間移管等の手法は、政府の自治体調査結果で、「可能な限り民間委託を推進したが、必ずしも経費節減につながっていない」(兵庫県・猪名川町)、「指定管理者制度の活用により、多くの施設で指定管理者が導入されたが、評価方法などが確立されていないため、本当に行政サービス水準の維持・向上、業務の効率化につながっているか不明である」(山口県・宇部市)などの意見があるとおり、反省の声が上がっています。PFIに関しても、近江八幡市立総合医療センター等の破綻で明らかになったとおり、民間事業者の利益が優先される、高金利負担となる、いつ発生するか分からない修繕費用の前倒し支払い、中間業者が介在するというPFIの制度的欠陥性などが問題となっています。

 伊丹市は、PPP基本方針策定において、何をされようとしているのでしょうか。お伺いします。

3.介護保険事業計画について

1)介護保険料について

 議案第60号「伊丹市介護保険条例の一部を改正する条例の制定について」において、介護保険料の基準額を月額4200円から4400円に改めるとともに、保険料段階区分を10区分から12区分に見直そうとしています。この改定によって、年金収入300万円の人には、年間6万6000円、月額5500円の保険料がかかってきます。今でも国保も介護保険料の高いとの声が出ているのはご承知のとおりです。

①伊丹市の準備基金の取り崩しはなぜ50%か

 伊丹市の介護保険財政には、2011年度末に介護給付等準備基金積立金が11億4500万円あります。そのうち、今回の改定で5億7100万円を取り崩し、基準額の月額367円の軽減を図ったとされました。残り半額は基金として残し、第6期の計画で保険料軽減に使うとのことです。

 しかし、第3期が終わった2008年度末には8億6100万円の基金があり、そのうち4期分として約30%の2億6200万円を取り崩し、前期計画比で400円の引き下げを行いました。そのとき、約6億円の基金を残したのは、5期目の保険料は4200円を維持するとの説明がありました。しかも、今回取り崩した5億7100万円は、4期目の計画期間に積み立てた基金であり、3期目の計画期間の基金残約6億円は残したままとなります。なぜ基金を6億円残さなければならないのか、5期計画期間の保険料を4200円に据え置くという約束はどうなったのか、説明をお願いしたいと思います。

②県の財政安定化基金の取り崩しにおける県・国拠出分はどうしたのか

 兵庫県は、介護保険財政安定化基金の第4期末残高121億6200万円のうち、72億4300万円を取り崩し、市町拠出分3分の1の24億1400万円を各市町に保険料軽減交付金として交付するとし、伊丹市の場合、50円の軽減となるとされています。一方、県の拠出金は保険料の軽減に使わないと決めたそうです。しかし厚生労働省の見解では、その使途として保険料軽減のための市町村に対して交付すことは可能とされています。この点では、兵庫県下28市12町の民生主管局部課長・理事一同名で、兵庫県拠出分相当の取り崩し額について、第5期介護保険料の上昇に直接活用できるよう対応をお願いしたい、との緊急要望を、1月23日に提出されています。なぜ兵庫県はこの全市町の要望にこたえなかったのか。さらに、国拠出分に関しても、都道府県には保険料軽減に使えるといっておきながら、なぜ国は保険料軽減に使わなかったのか、伊丹市として、国に対する要望は行ったのか、その理由・その使途についてもお伺いします。

2)施設介護の遅れをどうするのか

 私は昨年の3月議会の代表質問で、介護施設の建設は常に後追いで、待機者は減少しないのではないか、家族の介護を軽減し、社会的介護の仕組みをつくるのが介護保険制度であることから、第5期介護保険計画は、この立場から安心できる計画をつくるべきとただしました。

 答弁では、第4期の計画期間に計画している施設の開設の見込みが立っており、待機期間の縮小を図ることができる、認知症グループホームや介護老人保健施設の待機者も一定の解消が図られること、さらに、24時間365日対応の定期巡回・随時対応サービス等新たな制度の検討がされていることから、在宅と施設サービスの割合等を検討して第5期の計画をつくる、とされました。

 しかし、現在特別養護老人ホーム等の待機者は、昨年6月現在で緊急性の高い待機者が184人。そうでない人を含めて400名を超えます。今後、第5次介護保険計画の中で、小規模特養と認知症グループホームをそれぞれ3ヶ所ずつつくろうとされていますが、毎年増え続ける待機者に対応できるでしょうか。もちろん、住み慣れたところで暮らし続けたいという高齢者の願いはありますから、居宅介護の充実を行いながら、せめて中規模程度の特別養護老人ホームは必要だと考えます。見解をお伺いします。

4.障がい者福祉について

1)国の総合福祉法制定状況における問題

 政府の障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会が2月8日開かれ、厚生労働省は自立支援法に変わる法案の概要を示しました。しかし、その法案概要に、障がい者が怒りの声を上げています。「総合福祉部会」が取りまとめた「骨格提言」は、障害者権利条約と「基本合意」を踏まえ、障がいのない市民との平等と公平、すべての障がい者を対象にした施策の充実、OECD諸国並みの安定した障がい者福祉予算の確保などを柱にし、障がいに伴う必要な支援は原則無料を打ち出していました。しかし法案概要は、利用料の原則無償化を見送り、対象とする難病の拡大も一部にとどめました。「提言」が廃止を求めていた「障害程度区分」も盛り込んでいます。このような障がい者・家族の創意を無視した姿勢は許されるものではありません。

 伊丹市議会も昨年12月議会で、「総合福祉法」は「骨格提言」を尊重したものにすることを求める意見書を全会一致で採択し、意見書を国に送付しました。伊丹市当局の答弁でも、当然「骨格提言」が尊重されるべきものと考えている、本市としては障害者福祉制度改革の目標達成が、本市のまちづくりの基本目標達成と将来像へとつながっていくものと認識しているとされました。

 市長は、今回の厚生労働省の法案概要についてどのような認識をもっておられるのでしょうか、お伺いします。

2)災害と障がい者支援について

 東日本大震災では、障がい者や難病患者の救命の困難さが改めて浮き彫りになりました。筋ジストロフィーを患い、人工呼吸器をつけて車椅子生活を送っていた35歳の「佐藤まさあき」さんは、ヘルパーの交代時間1時間半の空白時間に地震がおき、近所の親族が助け出そうとしているとき、「もう、あきらめましょう」とつぶやいたのが最後の言葉となってしまったそうです。一方、災害弱者の避難に関して、「被災地障がい者支援センターふくしま」のスタッフが避難所調査をしたところ、避難所にいったものの苛酷な環境に耐えられなかったり、病状を悪化させたりして自宅に戻った人らが目立ち、「思いのほか少なかった」と語っています。

 同「支援センター」代表の白石清治さんは、1月に開催された障がい者制度改革推進会議への提出資料で、東日本大震災における障がい者等「災害時要援護者」に対する取り組みについて教訓を述べておられます。その一つは、避難計画策定や訓練への障害者団体の参画と連携が行われていなかったことで、災害が起こったとき、どうしても障がい者が後回しにされてしまっている。逃げ遅れる障がい者などに重点を置いた避難計画策定委員会を組織してきめ細かく策定する必要があること。安否の確認と支援ニーズの把握に関しては、サービス利用者は事業者が責任を持って行うべきだが、サービスを利用していない障がい者は、行政と民間事業者、民生委員、町内会等の連携によって迅速に行える状況をつくっておく必要があること。また、災害直後における障がい者支援の仕組みのありかたについては、一般の避難所では、車椅子の障がい者は横になって寝ることができない状況があり、駐車場に車を止めて家族と共に避難生活をしているケースがあった。福祉避難所は存在したが、どこにあるのか判らない状況にあった。そのような時、緊急避難時の相談支援体制も、相談支援を行っている事業所が避難していることもあり、緊急に同センターが県の委託を受けて相談支援体制を築くことができたことなどとなっています。

 伊丹市における障がい者等の緊急時における避難体制と避難所はどうなっているのでしょうか。

 NPO法人兵庫県障害者センターが、昨年11月、兵庫県下全市町を対象に「障害者と防災に関するアンケート」を行っています。それによりますと、伊丹市としての問題の一つは、要援護者防災マニュアルを策定する予定なしとされたことです。41市町中回答のあった40市町のうち、伊丹市を含めて5自治体だけでした。今年度中に防災マニュアルを見直す予定とされています。先ほど東日本大震災の教訓を引用しましたが、このことに学び、障がい者等要援護者に対する防災マニュアルを関係者とともにきめ細かく策定する必要があると考えます。また、福祉避難所は指定されていますが、災害の規模にもよりますが、その対象者に対する定員割合は0.02%しかありません。また、障がい者が横になって寝る場所や様々な障害の程度を想定した福祉・医療関係の危惧・備品の確保等福祉避難所の運営マニュアルの作成も必要と考えます。

 以上に対する見解、今後の予定についてお伺いします。

5、国民健康保険事業

1)国保をめぐる国の動向について

 高すぎる国保税を何とかしてほしいという被保険者・国民の声、伊丹市等保険者にとっては一自治体では対応できないという声があります。このことを解決するためには、1984年に国庫負担金を医療費の45%から38.5%に引き下げ、2009年度には24.7%まで下げた改悪措置を元に戻すなど、国の負担割合を増やす以外にありません。

 しかし、民主党政権はこのことに背を向けて、「広域化」の推進を打ち出しました。開会中の国会に提出される国民健康保険等「改正」案では、2015年度から保険財政共同安定化事業の対象医療費を拡大して、国保財政の都道府県単位化を行うとしています。すなわち、現在30万円を超える医療費に関する共同を、すべての医療費に関する共同に変更するというものです。また、財政安定化支援事業については縮小、もしくはなくす方向で検討、伊丹市の場合、2010年度決算で、一般会計から約1億円が繰り入れされています。また、定率国庫負担を34%から32%に引き下げ、都道府県の調整交付金を7%から9%に引き上げて財政運営の都道府県単位化を進めるといっていますが、その財源は年少扶養控除の廃止に伴う地方税の増税分を財源として活用するとしています。このことは明らかに国の負担削減の方向です。

 国は国保財政の運営を「広域化」することだけに奔走し、財政負担を削減しようとしていますが、このことは国保会計に何の改善策にもならず、むしろ国の責任放棄、都道府県丸投げに繋がるもので、被保険者・国民にとってもメリットはありません。市長はこの動きをどう認識されておられるのでしょうか。国の責任放棄に反対すべきと考えますが見解をお伺いします。

2)国保財政の安定化と一般会計からの繰り入れ

 伊丹市の国保財政は、2009年度には約12億円あった赤字が、2011年度決算見込みで約5億6600万円、2012年度予算案で3億6700万円まで減少する見込みとなります。このことは、一般会計から2011年、12年の2年間で8億5000万円の繰り入れを行うことによって成し遂げられるものです。改めて評価をしたいと思います。

 しかし、この間被保険者への負担は低所得者と中間所得者への増税は行わず、限度額のみの引き上げで切り抜けてきましたが、依然として高い国保税には変わりはありません。しかも、来年度、国保会計における一般医療分の赤字は4億円以上の見込みで、後期高齢者支援金と介護2号保険分は単年度赤字が出る見込みとなっています。このまま推移すると、また赤字が膨らみ、国保税の増税へとつながらざるを得ません。

 国の動向は、国保の「広域化」へと進んでいますが、2015年度の国保財政都道府県単位化においても、国保税設定の権限は自治体に残され、一般会計からの法定外繰り入れによる保険税軽減策などは引き続き可能となっています。国に対する国庫負担増額を求めながら、一般会計からの法定外繰り入れルールの改善・増額を行うべきと考えます。その方法は、以前にも述べましたが、現年分の滞納額2分の1の繰り入れを全額繰り入れとする、財政安定化支援繰り入れを一般減免分繰り入れと切り離し別立てとして増額する、さらに一般減免の制度を充実させることも合わせて行うことも求められています。ご見解を伺うものです。

6.子育て支援について

1)「子ども・子育て新システム」の動向について

 民主党政権は、国と自治体が責任を持つ公的保育制度を解体し、保育を保護者と事業者の「契約」で購入するサービスにして、保育の「営利化」「市場化」を進める「子ども・子育て新システム」の関連法案を、今国会に提出する方針です。「社会保障と税の一体改革」のトップに据えられ、待機児童の解消と子育て支援の充実を行うことで、消費税増税の口実に使おうとしています。しかし「新システム」では、待機児童の解消の保障はありません。児童福祉法第24条の自治体の保育実施義務をなくし、保育の提供を事業者にゆだねてしまうためです。また、新設される施設である「総合こども園」(仮称)には、0歳から2歳児の受け入れは義務化されません。しかも、幼稚園と保育所の一体化の展望は示されませんでした。政府が待機児童解消に期待しているのは、これまで認可外施設も一定の基準を満たせば指定が受けられるようにすること、「地域型保育給付」に位置づける予定の定員5人以下の「保育まま」や、空き教室などを利用した「小規模保育サービス」、ベビーシッター型のサービスです。

 これらのことは、従来の保育制度が、認可保育所による保育を基本としてきたことに対して、その原則を覆し、認可保育所外の様々な施設や「多様なサービス」でよいとするものです。保育の密室化、低い保育条件の固定化につながり、子どもへの影響や事故等の増加も懸念されます。また、「新システム」の保育供給にかかわる基準は、こども園と地域型保育、さらには総合こども園のトリプルスタンダードになるのではないかと思います。どの子どもも、一定の基準に基づく施設、集団的で系統的な保育が保証されることが大切ではないでしょうか。一時期、緊急的な対策として、このような方法が活用されることがあっても、格差を固定化させる方向ではなく、国と自治体の責任で、希望する認可外保育所の認可化や保育条件の改善、底上げなどの支援策を進めることこそ必要と考えるものです。

 市長はこのような「新システム」の動向をどのように認識されているのでしょうか、

2)待機児童の解消について

 現在、伊丹における保育所待機児童は、2月1日現在で214人とお聞きしています。この数は、昨年同期とほぼ同じとなっています。この状況から、「育児休業からの復帰期限が迫っているのに入所できない」「働かなければ生活できないのに子供を預けられない」などの声があり、待機児童の問題は、子育て世代のくらしと子どもたちの育ちを脅かしています。年度明けには待機児童は解消するといわれますが、定員を超えた「詰め込み」保育が実態です。

 今まで、民間の認可保育所の誘致等によって一定の定員を増やされてきたことは評価をしていますが、民間任せでは限界があるのではないでしょうか。かといって公立保育所を作れといっても財政上の問題があります。2004年、小泉構造改革で公立保育所への補助金を廃止して一般財源化し、同時に地方交付税を大きく削減したからです。

 したがって、待機児童解消のためには、第1に、国の責任で保育所をつくるという政策を打ち出すこと、そのためには、廃止した公立保育所への国庫補助を復活し、用地取得費の助成制度をつくること、その要求を国に求めるべきですが、見解を伺います。

 第2には、国の第4次補正で「安心こども基金」が1234億円積み増しされたことを利用することです。保育所整備事業については、来年度中に着手し、2013年度に完了が見込まれる場合に助成対象とすることになっていることから、急ぐ必要があります。第3に、未認可保育所で認可を希望されるところへの助成をすることです。以上のことを踏まえて、待機児童解消のための方向についてお伺いします。

7、地域内経済循環に視点を置いた産業活性化の方策について

 伊丹市第5次総合計画では、「にぎわいと活力あふれるまち」の施策目標②「活力ある地域産業の振興と創出」で、「地域内経済循環に視点を置いた産業活性化の方策を検討します」と述べています。この視点から質問をします。

1)公共事業の減少と建設業者への支援策について

 来年度予算の説明の中で、歳出予算のポイントとして「公共事業を縮減する中で市民の安全・安心、子育て支援の予算を積極的に確保する」とされました。もちろん、不要不急の公共事業は必要ありません。しかも伊丹市の行政課題として公共施設に関しては、今後公共施設のマネジメントに基づく修繕等は出てきますが、施設を建設する対象そのものも減少しています。その中で建設業者にとっては、民間需要も減少する中で苦境に立たされているのが現状ではないかと思います。

 一方、伊丹市の産業政策では、商業の活性化や企業立地制度、農業振興策はありますが、建設業者に対する施策は取り立ててありません。このことから、党議員団として何度も住宅リフォーム助成制度創設を提案してきました。しかし当局は、個人財産への助成はできないこと、経済効果はないことを理由に創設しようとしません。いま全国で昨年4月現在330自治体において実施され、その自治体から経済効果は8倍から30倍という報告がなされています。

 そこで、伊丹市は、どの自治体の教訓から経済効果がないと判断されたのか、伊丹市の産業構造の独自性に理由があるのか、改めてお伺いします。また、個人財産への助成は従来から、政府も住宅建設への税制や融資での優遇措置を行い、自動車や電化製品にはエコの名目で補助を実施してきました。ではなぜ景気対策のための助成ができないのか、その理由をお伺いします。

 さらに、産業の振興と創出に関する建設業者への施策についてどのようにお考えなのかお伺いします。

2)TPP(環太平洋連携協定)参加で伊丹の経済はどうなるのか

 民主党野田内閣は、昨年11月の「アジア・太平洋経済協力会議」首脳会議で、TPP交渉に参加するため関係国と協議に入ると表明しました。TPPは、関税を原則完全撤廃し、農産物の輸入を完全に自由化するもので、農林漁業と国民の食料に大打撃となります。さらに、「非関税障壁」撤廃の名の下に、食の安全、医療、金融、保険、官公需、公共事業の発注、労働など、国民生活のあらゆる分野での「規制緩和」をねらうものです。

 農林水産省は、TPP参加による日本経済への影響について試算をしています。そのれによると、農産物の生産減少額は4兆1千億円、食料自給率は40%から14%に、農業の多面的機能の喪失額は3兆7千億円、農業および関連産業への影響は、GDP減少額7兆9千億円、就業機会の減少数は340万人となっています。

 当然伊丹市の農業にも大きな影響があるとともに、関連産業、雇用、食料の安全性にも大きな影響を与えることになると考えます。市長はTPP参加の伊丹市に与える影響をどのように考えているのか、見解をお伺いします。

8.教育について

1)人権教育・啓発推進について

 伊丹市は2010年10月に「伊丹市人権教育・啓発に関する基本方針」を定め、これを推進しています。私は、この年の3月議会で、「基本方針」は必要ないとしながら、つくるとすればとして、次のことを問題としました。

 一つは、「市民は社会福祉基礎構造改革による福祉切り捨て、大企業の横暴とそれを野放しにしてきた政治によって不況、倒産、リストラなど深刻な貧困を押しつけられており、まさに耐えがたい人権侵害を受けているという事実であります。これらの問題解決に「教育・啓発」はどんな役割を果たすのでしょうか」と問題提起しました。

 答弁では、「雇用契約を打ち切られて仕事と住まいを失う労働者が相次ぐなど、格差社会や貧困の実相が浮き彫りになっている。このような状況の中でこそ、市民一人一人の人権意識の向上と、そのために行われる人権教育・啓発の重要性につきましては、どんなに強調しても強調し過ぎることはないものと考えております」とされました。

 では「基本方針」策定以降、格差社会や貧困問題に関して、国家・企業がもたらす人権侵害に対して、どのような人権啓発を行ってこられたのでしょうか。また、答弁では、賃金の未払い、解雇などは専門の相談員が相談に乗っている、とされましたが、相談は人権啓発ではありません。憲法と労働諸法に基づく正しい知識が必要ではないでしょうか。

 二つには、同和行政・教育は必要のない時代になったということを明記すべきであると求めました。答弁では「現在でも偏見や差別意識が解消されているとはいえない中で」必要とのことです。かつての部落差別問題に関して、正しい知識を得るための学習は必要なことでもあります。問題は、伊丹市の同和教育・啓発の出発点が「いまだに差別意識が根深い」という認識にあることです。具体的な差別・人権侵害には正しく対応しなければなりませんが、就職差別や結婚差別はほとんど発生していません。それなのに「差別意識は根深い」ことを強調することは、市民が正しい認識を持つことができなくなるとともに、旧関係住民の気持ちも逆なですることになります。このことは、人権教育指導員に、同和問題に関して、部落解放同盟のメンバーが4人入っていることにも起因します。啓発をするなら、同和問題は解決できること、いまその時代が来ているという展望を市民が認識できるようにすべきです。

 以上2点に対する見解を伺います。

2)学校図書館について

 教育長の提案説明で、学校園において、「ことばと読書を大切にする教育」を推進し、コミュニケーション能力の向上と「ことば」を通して深い思考をめぐらす心豊かな子どもを育むとされました。そのために学校図書館の果たす役割は大きいと思います。

 一つは、図書標準100%を達成することについてです。伊丹市教育委員会の計画では、平成28年度、2016年度にすべての学校で達成するとなっています。国でも、地方交付税措置として昨年度に引き続き200億円が計上され、2016年度をめどに図書標準100%を達成するとされています。「ことば文化都市」を標榜する伊丹市として、達成年度を早め、すべての子どもに平等に豊かな読書活動ができるようにすべきではないでしょうか。

 二つに、国では、同じく地方交付税措置として、新たに学校図書館担当職員の配置に対して150億円が措置されます。伊丹市は、他市に先駆けて全校の学校図書館に読書指導員をすでに配置されています。しかし以前にも指摘しましたが、例えば小学校の場合、5時間の勤務時間が設定されていますが、実際には賃金が発生しない超過勤務時間が相当あるということから、実態を考慮した時間延長が必要ではないかということ、もう一つは、2010年に時間給を10%カットされたということに対して、その役割の重要性からせめて嘱託職員としての身分保障としかるべき報酬の保障をすべきであるということを求めました。この機に実現すべきではないでしょうか。

 地方交付税は補助金とは違うことは承知のうえで、国の政策として打ち出されていることから、二つのことの実現を求めるものですが、見解を伺います。