2023年6月議会 一般質問
2023年6月16日
日本共産党議員団 服部よしひろ
1.稲野駅前大手前大学跡地への大規模マンション建設に関連して
ただいま、議長の許可を得ましたので、日本共産党議員団を代表して質問します。
稲野町1丁目と2丁目にまたがる、大手前大学稲野キャンパス跡への大規模マンション建設計画を地域住民が知らされたのは、市が事業者から提出された「伊丹市宅地開発等指導要綱」第5条による事前協議を完了した2021年9月30日から半年後の2022年3月以降、5月連休前の時期でした。
稲野町では、ダイハツ工業の跡地へ小学校の誘致を進めていたが、断念し、代わって大手前大学が建設され「静かな文教地域」としての稲野町のイメージが出来上がったと自治会の歴代会長が語っています。
長年住み続け、「永遠の住み家」と思っていた家の道一つ隔てたところに15階建て44.5mの高層マンションが5棟、571戸出現し、半日日陰となる。東側に巨大な壁が出現する。うっとうしい、ビル風も予想される。自分たちが今まで獲得してきた住環境が守られないのはなぜか。地域住民の方の切実な声は、事業者の説明会では聞き流されました。
地域住民が計画を知った時点とは、市が事前協議を行い、計画そのものに異議はないことを行政が確認した時点であり、事業者は開発計画を説明し、関係住民の納得を得られなくとも地域住民の質問にすべて回答をすれば建設認可を申請できる時点となります。
事業者の説明会は、事業者の代理人である建設業者「長谷工コーポレーション」が主催し、回答します。大学跡地は3つの土地からなっており、事業者は同時期にすべて入手し、一体での775戸の建設を計画していたにもかかわらず、説明会では代理人が「知っているのは南敷地計画の571戸だけ」と言い張り、関係住民が「この建設計画の意義や理念の説明」を求めても答えられず、ただ「建築基準法で認められている」「法にのっとり問題のない建築物」の一点張りの説明が毎回繰り返されました。775戸およそ2500人が稲野町に移住すると、人口が約2倍になり、交通、流通、教育、医療、福祉、などのバランスが一挙に崩れることは明らかです。
稲野町の住民の方が、地域の住環境に重大な変化をもたらし、長期間の工事期間で自然環境を大きく削がれ、住居や生活に少なからず悪影響を受ける建設計画に対し、十分な説明と住環境を守るために「大手前大学跡地への大規模マンション建設問題を考える有志の会」を立ち上げ、市の開発指導関係部局に繰り返し面談、最終的に7月13日に都市計画課の担当者と面談し、市長による調整の必要性を伝える中で、「中高層建築物の建築に関する指導要綱」9条に基づく「紛争の市長による調整」を2022年7月19日に提出(担当部局:都市計画課)し、同時に住環境を守るための要望書を担当課に提出しました。
「伊丹市中高層建築物の建築に関する指導要綱」9条には、
建築主等および関係住民等は,対象建築物に関する紛争が生じたときは,誠意を持ってその解決のために努力しなければならない。
2 建築主等または関係住民等は,当事者間での話し合いによって紛争の解決ができないときは,市長に紛争の調整を申し立てることができる。
3 市長は,前項の申し立てがあった時は双方の主張を確かめ,紛争が解決されるよう努めなければならない。
とされているにもかかわらず、市担当課は、地域住民の納得が得られていない昨年7月15日時点で「調整は完了した」と判断して、対象建築物の届出(要綱第7条)を受理した結果、建築許可が出され現在に至っていることをまず市民と議員各位にお知りいただきたいと思います。
今日この時点でも、地域住民が納得していない状況で、開発が進行しているため、普通車がギリギリ離合できる狭い生活道路に、最大一日160台の工事車両が往復し、渋滞で通勤が阻害される、重低音の工事騒音・振動・衝撃音が日々形を変えて伝わってくる、砂ホコリで車が毎日真っ白になるなど、地域住民にとっては耐え難い苦痛が毎日繰り返されているのです。
(「ワンダーシティー571」建設に伴う利用者の損失)
さて、稲野公園運動施設は、身近な憩いの場、運動の場として市内、市外を問わず広く近隣住民に親しまれており、利用者は年間5万人規模になっています。
建設中の大規模マンション群のB、C棟は、敷地南境界線からわずか75㎝しか離隔していないところに、15階44.5mの建物が建設されます。
建造中を含め、高層建築物からの落下物による事故は最近も発生しています。当該マンションから、事情の如何にかかわらず落下物を完全に否定することはできません。公園利用者は幼児から高齢者まで、遊びや散歩に使用しており、危険を避けることはできません。
伊丹市が行った事前審査では、稲野運動公園の管理責任があるスポーツ振興課は「公園利用者の安全確保を十分に行うこと」を求め、事業者は「公園利用者に対する安全確保について継続協議します」と回答し、現在に至るまで決着をしていません。にもかかわらず、工事が進捗している事態に、公園利用者や地域住民は強い懸念を持ち続けています。 どういう理由付けで「継続協議中」つまり、事前審査が完全にクローズしていないのに工事が進んでいるのか、この問題はまだ事業者、市と「有志の会」の継続協議の議題となっています。
そこで、次の3点についてお聞きをいたします。
① スポーツ振興課が継続協議にしている理由は、何か端的にお答えください。
② 公園利用者の安全確保にどのような問題があるのかお答えください。
また、事業者側から「安全確保」への具体的提案は出ているのかお答えください。
③ 公園北縁1m幅の貸地の根拠条例の説明をお願いします。
この質問③の問題では、事業者代理人は敷地と建築物の離隔距離について地域住民から工事中から建築後までの危険性について繰り返し指摘したにもかかわらず、一貫して「敷地から工事は、はみ出さない工法を採用している」「ベランダから物は落ちません」と言い張ってきました。しかし、工事が始まって間もない昨年11月に、市に対し、南敷地の南側幅1mを市に借地を申し込み、受理されています。
ことの経過を知り尽くしている地域住民は、市はなぜ、どのような根拠で借地を許可したのか、法的、該当条例ではどういう根拠で借地を認めたのか説明を求めています。ご説明願います。
2.天神川水害
5月8日未明に発生した天神川堤防の決壊による水害は、荒巻6丁目にお住いの皆さんに予期せぬ被害を与えました。直接の原因は、天神川堤防の改修工事を行っていた県土木の工事内容にあると思いますが、間接的には伊丹市の市道拡幅トンネル工事に伴うもので、地域住民にとって伊丹市は心情的にも「完全部外者」とはなりえないのではないかと思います。
しかし、5月8日未明に市に対応をうったえた地域住民に「県のことだから県に聞いて欲しい」との対応があり、市の市民への対応に不信感が募ったと、8日の朝から現地に調査のために入った我が党加柴議員他の調査団の現地聞き取り調査でお聞きしています。
(質問1)
今回の豪雨に対する避難指示は従来の危機管理マニュアルにのっとり、北村センターその他への避難が指示されましたが、天神川トンネル工事に関連した天神川堤防工事が実施されていることによる従来にないリスクが今回は加わっており、それへの対応はとられていたのでしょうか。
現に、地元の方が119番通報を行った際の消防署の対応は「堤防決壊」を全く予想しておらず「寝耳に水」状態だったと伺っています。
そこで、質問の1は、今回の天神川堤防決壊に関する危機管理上の問題はなかったのか、お伺いします。
(質問2)
被災現地では、大量の土砂が道路や側溝、住宅敷地や床下、農地や工場敷地に流れ込み、乗用車が冠水し、床上浸水2軒、床下浸水10軒などの被害が出ました。天神川は天井川であり、絶えず堤防決壊のリスクはありますが、近年は発生しておらず、今回被災された住民も初めての経験で何もかもが予測しない事態で、災害復興においても行政に頼らざるを得ないのが実情です。
発生直後の対応に不手際があったにも関わらず、その後の市の対応は迅速であり、心身のケアに及ぶまで対応されていることに対しては敬意を表します。
同時に被災者は市民であり、市は、市民の安全と財産を守る立場から市民への誠実な対応を求めます。
質問の2は、市民の安全と財産を守る立場から、初動の市の対応に問題はなかったのか伺います。
(質問3)
県は、県知事が責任を明言したにもかかわらず、その後は担当部局が「原因究明が前提」などと言って補償の実施を先延ばしにする態度を示しています。
また、県は「予測不能な時期と雨量が原因」などと「天災も原因の一部」といった表現で、県の全面的な補償責任をうやむやにする態度も出てきており、このまま県の「天神川氾濫災害調査委員会」での長期の検討で市民への損害補償がずるずると引き延ばされることは許されません。
日本共産党市議会議員団は、6月5日にも現地調査と聞き取りを行いました。そこではエアコン室外機や車の修理、床上浸水で床が朽ちたために引越しを余儀なくされる方もおられましたが、県はいまだに補償内容を明らかにしておりません。
5月15日に続き、日本共産党県議団とともに去る6月9日に県知事への2回目の申し入れを行いました。次の4点です。
1.住宅の浸水被害からの復旧のために係る経費、破損した車の修理代などの補償は、全額公費で行うこと。被害に対する県の責任は明確である。補償については、県の検証委員会を待つことなく、ただちに行うこと。補償の実施について、早急に住民に説明を行うこと。
2.被災者自身が行う復旧作業のための電気や水道、ガス代などの免除・減額措置をおこなうこと。補償や減免申請については、手続きを簡素化すること。
3.被災者の健康被害に対する医療費負担についても、補償すること。
4.設置されている「天神川氾濫災害調査委員会」は公開でおこない、議論の内容を速やかに県民にあきらかにすること。科学的客観的な検証を行い、原因究明、再発防止に努めること。住民への補償については、調査委員会とは区別して、個別に対応すること。
知事は、5月10日、現場を訪れた際に「補償についても丁寧に対応したい」と話されています。
この被害は、天井川という特有の河川構造にある天神川の河川改修工事を県がおこなっていた最中に起きたものであり、本来ならば平時でも管理のレベルをあげる必要があったにも関わらず、取っていなかったこと、河川改修工事の工法の問題、工事中における安全管理対策や体制が十分とられていなかったなど、県の責任は明確だと考えます。
質問の3は、これらのことから、今回の責任の所在はどこにあるのか、市の責任をどう考えているかお聞きします。
(質問4)
質問の4は、県の責任が明確である以上、県の負担を明らかにして住民への補償を速やかに実施を求めるなど、県への要望も踏まえた市の考えを伺います。
6月議会質問 (2回目)
2回目は、意見要望とします。
稲野駅前大手前大学跡地への大規模マンション建設に関して
先ほどの答弁で、公園敷地の幅1mの借地について、法的根拠を示されて妥当であるとのことでした。また、今後の経過を見ながら問題があれば協議を行うとも答弁されました。
現在、工事はマンション本体の基礎工事中です。これから44.5mの本体の建設が始まります。
国交省発行の「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説」第4章第31「落下物による危害の防止」によると、ふ角75度以上のところに一般の交通その他の用に供される場所がある場合には危害を防止する措置を講じなければならない。」とされています。高さ44.5mの建築物に対するふ角75度は、水平距離で約12mとなります。民法上の離隔距離はわずか50cm、今回の工事では最小75cmであり、工事中の落下物から稲野公園利用者を守ることはできません。
事業者が国交省の求める安全策を実施するなら、敷地境界から11mもはみ出した構造物を仮設しなければなりません。
また、マンションが完成した後も不測の事態の発生は避けられません。法の規制は制定当時の制約を免れないため、それを補正するのは現在生活する市民であり、行政でなければなりません。
市民の安全を守るためになにをなすべきか。
敷地境界からわずか75cmしか離れていないところに44.5mの構造物を建設すればどのようなことが引き起こされるか、常識のある一般人なら容易に想起できる内容ではないでしょうか。
その結果、市民の共有財産である稲野公園スポーツ施設が「市民の安全確保」とはいえ一事業者の事業のために使用が制限されることになってよいものでしょうか。
事業者はキャッチコピーに「目の前に約1万4千m2の「稲野公園」。パークフロントの解放感に包まれる日々」と、稲野公園をちゃっかり借景しています。汚い言葉を使えば「市民の財産をただ食い」しているに等しいではありませんか。
スポーツ振興課が事前審査で「公園利用者の安全確保」を求めたのは極めて常識的な判断だと思われます。現在は幅1mの借地ですが、今後の工事進捗では間違いなく先ほど指摘した幅11mの借地が発生してきます。
今回は稲野公園に関係する問題点を取り上げましたが、その他の問題点については今後も調査して、引き続き市議会で取り上げていきます。
「継続協議中」の案件を抱えながら建築工事が進行しています。
大手前大学跡地への大規模マンションの建設は、地域の景観を大きく変えてしまいます。明るく静かな住宅街は、午前中は日が差さない薄暗い街に変貌します。
周辺の建造物による「うっとうしさ」を測る尺度に「形態率」というものがあります。空を見上げて、そこに映り込む障害物がどこまで広がっているか。を評価します。過去の裁判記録では19%で近隣に建設中のマンションの一部を取り壊した判例があります。
稲野町2丁目の近隣住宅では、大手前大学の建物では9%程度だったものが、30%近い値となりました。
形態率は今はまだ建築基準法に規定はありませんが、今後の世論形成によっては基準に取り入れられるかもしれません。
伊丹市宅地開発等指導要綱第13条によれば、建築計画戸数が100戸以上になれば、延べ面積70m2以上の集会所を設けなければならないとしていますが、775戸のマンション群で、独立した集会所は計画されていません。別の目的の部屋を臨時につなげて集会所として利用できるとしています。近隣の自治会集会所は稲野東自治会200世帯の稲野東センターしかありません。
昨日の大津留議員の質問で明らかになりましたが、避難所の不足は、新たに2500人の住民が増える南小学校区ではさらに深刻となります。
南小学校、南中学校などの教育施設、医療施設、介護保育施設など、公共インフラへの影響は相当に大きくなることが予測されます。
法に違反していなくとも迷惑なものは迷惑だ。というのが地域の皆さんの声です。
先に住んでいる住民がなぜ苦しめられるのか。建てるのなら周辺住民と折り合いを付けて建設すべきではありませんか。これから新たに稲野町に来る皆さんには、隣人として気持ちよく接していきたいと誰もが望んでいます。
そのためには、尼崎、宝塚、芦屋にはすでにある、周辺住民と事業者、行政による事前の話し合いで、お互いに納得できる開発が行われる地域開発における住民参加の「地域開発協議会条例」というような条例の制定が必要と考えています。
市民が安心して住み続けられる伊丹市の住環境を守るために、伊丹市が今後とも市民の視点で取り組んでいただくことをお願いいして、要望といたします。
次に、天神川堤防決壊に係る答弁についてです。
1つ目の、危機管理上のリスクの点ですが、答弁では「危機管理室において今回の河川情報を把握したのは発災直後」とされています。
雨季において、河川の改修工事の有無というのは、危機管理上見落としできないリスクだと思いますが、全く事前に把握されていなかったのはどういういきさつがあるのか、本来、県から「こういう工事を行っているから危機管理上のリスクですよ」といった通達が来るのに、来ていなかったから把握できなかったということでしょうか。それとも、天神川の河川管理は県の仕事だから把握する必要がない。という観点からなのでしょうか。
私の感覚からすると、市の市道拡幅に伴うトンネル工事に起因する河川改修が行われている。それがどのような内容で実施されているかというのは、危機管理上関心を持ってもよい内容ではないかと考えるのですが、この点、危機管理上のリスク管理として問題はなかったのか、今後の対応への真剣な検討を行うことを要望します。
住民への対応について問題はなかったか
次に、住民への対応について問題はなかったか、についてですが、すでに他の議員の質問でも繰り返し答弁いただいている内容で、多くの職員の皆さんが奮闘いただいたことは評価したいと思います。被災者のメンタルへの対応や障害をお持ちの皆さんへの配慮も含めての対応は重要で評価いたします。
次に、責任の所在と、県の対応についてですが、6月8日に開催された「天神川氾濫災害調査委員会」の配布資料と、6月9日に行った県土木部、河川整備課長からのヒアリングによると、調査委員会は非公開で4回開催され、今年の秋ごろ開催の4回目で結論に至る予定ですが、その間、補償の責任がどこになるか、また責任の割合がどうなるか判明するまで具体的な補償に手がつかないかのような発言でした。
被災された市民は、元の生活を取り戻すためにやむを得ず私費で修理や購入を余儀なくされており、すべて自己負担で行わねばなりません。暑い季節に向かい、エアコンは必需品で、また防カビや、防虫対策にも多額の費用が発生します。悪徳業者の訪問もあるとのことで、被災者の心労は大きくなっています。
県の迅速な対応を求めると同時に、市からも県への働きかけを強化していただくよう求めまして、要望とします。
以上で質問を終わります。