2013年3月議会:上原ひでき 地方交付税の削減、地域の元気臨時交付金、子育て支援事業計画

 今年の3月予算議会では、4月に市長選挙を控えていることから、2013年度予算案は「骨格予算」として提案されました。「骨格予算」とは、経常的な経費と国の予算に伴う経費の計上にとどめるもので、政策的な予算は6月議会における新市長の所信表明とともに提出されることとなります。

 上原議員は、次の点で質疑を行いました。

 ①地方交付税に関して、特に来年度予算で政府は、地方公務員の給与削減を前提として、交付税を削減している問題について。

 ②国による補正予算に伴う「地域の元気臨時交付金」について

 ③「子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査委託料」について

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2013年3月議会 議案質疑

2013年2月28日
日本共産党議員団 上原秀樹

1.歳入 第10款 地方交付税

1)政府の「平成25年度地方財政収支見通しの概要」から地方一般財源、地方交付税について伺う

① その「概要」によりますと、2013年度の地方財源に当たる一般財源総額は、前年と同額とされました。しかし一方では、社会保障関係の自然増分5500億円は確保したとされたことを勘案すれば、実質的には抑制基調となっているではないかと思いますが、現場での実感はどうなのかお伺いします。

② 政府は地方公務員給与の7.8%引き下げることを要請し、地方交付税を8505億円減額した問題について

・ 民間の賃金も1997年をピークに年間59万円下がっており、働くものの所得は下がるばかりです。安倍首相も所信表明演説で、国民所得が失われていることを経済危機の要因にあげ、「突破にまい進する」と言明されました。それならば自治体に公務員の賃下げを強要し、政府が主導して国民の所得を奪おうとするやり方は矛盾するのではないかと考えるものです。

・ 地方6団体も批判している通り、政府のやり方が乱暴で、ルールに反していることも問題です。地方公務員の賃金は、自治体が独自に自主的に条例をつくって決定するのが地方公務員法で定められた原則です。職員との交渉にも応じなければなりません。政府が一方的に下げ幅を決め、実施を強要する前提で地方交付税を減額するやりかたは、この原則を踏みにじる行為と考えます。

 これらの点に対する見解をお伺いします。

③ 地方公務員給与削減に見合った歳出を確保することについて

・ 全国防災事業費973億円、緊急防災・減災事業費4550億円を財源は全額地方債で措置するとされました。これらには伊丹で活用できるものがあるのかどうか。

・ 地域の元気づくり事業費3000億円は地方交付税で措置するとされました。
 この件に関して政府は、これまでの人員削減や給与削減の実績を反映して算定するといっていますが、いったいどういうことなのでしょうか。政府には、国家公務員の7.8%削減後の国の指数と比較して、それを上回る給与削減を「要請」するとの考え方があるようですが、人も給与も減らしたところががんばったところなので交付税を余分に措置するなどというやり方は、地方交付税の算定方法として原則を踏みにじっていると考えるものです。

 以上に対する見解を伺います。

④ 将来の地方交付税はどうなるのか

 地方財源不足額と財源対策に関しては、その不足分を国と地方が折半し、地方では臨時財政対策債で対応しています。一方、国は折半対象外の財源を、財源対策債と臨時財政対策債の既往債元利金分の財源対策と合わせて行っています。さらには、2012年度2月補正予算のような補正予算債が後年度返済時に100%交付税算入されることになってもいるところです。後年度にどんどん付回しをし、当面の財源対策をしているようですが、国と地方の借金は膨らむ一方であり、いったい国はどんな展望を持っているのでしょうか。地方固有の財源である地方交付税のあり方は、伊丹市にとっても死活問題でもあることから、この点についても見解をお伺いします。

2)伊丹市における普通交付税と臨時財政対策債の予算について

 来年度、普通交付税は47億円、臨時財政対策債は36億4千万円で、合計83億4千万円を見込んでおられます。一方、今年度の補正予算後の原形予算は、普通交付税臨時財政対策債を合計すると、85億270万3千円で、今年度の見込みは原形予算比で、1億6270万3千円の減となるものです。市税の増収が見込まれるということもありますが、どのような見通しで予算を組まれたのでしょうか。お伺いします。

2.歳入 第14款 国庫支出金 第2項 国庫補助金

1)第1目 総務費国庫補助金 地域の元気臨時交付金について
政府は、公共事業を積極的に活用した大型経済対策を打ち出し、補正予算と2013年度予算を「15ヶ月予算」として一体的に取り組むとして、補正予算では国債の追加発行によって公共事業拡大を中心に「大盤振る舞い」をする一方、2013年度予算については国債発行を抑制し、社会保障等の抑制によって歳出抑制を重視するという枠組みなっているように思います。しかし地方にとっては、国の補正予算で「地域の元気臨時交付金」が創設されたことで、歓迎される内容ともなっています。

 伊丹市における「元気交付金」は、補助事業における地方負担額を12億1737万6千円とし、その70%を交付見込みとして、8億5216万3千円とされています。国は交付限度額の算定対象となる公共事業等は、国の補正予算に計上されたものの内、建設公債の発行対象経費となるものが含まれることとなるとされ、また、追加公共事業を実施しない団体には交付されないとも言われています。伊丹市の場合は、交付金算定における補助事業における地方負担額をどの部分から算定されたのか、すべて事業実施5カ年計画の中から出されたものと見ていいのか。さらに2013年度、14年度に渡って交付金を充当する事業についても同様と考えていいのか。交付金の算定根拠も合わせてお伺いします。

○また、政府も今回の交付金は今年度に限るとされているとおり、臨時的なものに過ぎず、一時的な雇用は生まれるものの、継続的な経済効果が見込まれるとは思えません。この点に関して、伊丹市における経済効果をどう考えるのかお伺いします。

○補正予算債と合わせて、「後年度の市の一般財源を約19億円縮減できる」ことについて

3.歳出 第3款民生費 第4項児童福祉費 第1目児童福祉総務費のうち、「子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査委託料」について

1)ニーズ調査、並びに事業計画を策定するにあたって、子ども・子育て支援法をどのように受け止めるのか

 民主・自民・公明の3党による合意をもとに、新システムに関する子ども・子育て関連法が8月10日に可決成立しました。今回予算措置されている「子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査委託料」は、子ども・子育て支援法の中で、市町村、都道府県は基本指針に即して、5年を1期とする教育・保育および地域子ども・子育て支援事業の供給体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画を定めるとされたことによるものです。

 子ども・子育て支援法の概略の一部を、個人的に列挙すると次のような問題があります。

・ 児童福祉法第24条で、争点となっていた市町村の実施義務規定が、第1項として残ったこと。同時に第2項で、認定こども園または家庭的保育事業等により必要な保育を確保するための措置を講じなければならない」とされたこと。このことは、必要な子どもは保育所で保育しなければならないが、認定こども園や家庭的保育事業等を整備・誘致すればそれでいいということになりかねません。すなわちこのことは、保育に対する公的責任の縮小であると考えます。一方で市町村は認定こども園や家庭的保育事業、小規模保育事業などを確保する措置が求められるということにもなります。

・ 認可保育所の建設や改修整備のために、4分の3を国と市町村が負担してこいた国庫補助制度が廃止されたことです。

・ 保育所等と保護者の直接契約制度が導入されたこと。

・ 親の就労時間によって子どもの必要な保育時間を決める認定制度が導入されること。

などです。

 これらの内容は、従来の「次世代育成支援行動計画」とは大きく違ったものになり、2015年4月の本格施行に向けて、諸準備に大変な作業も一定の費用も見込まれるものとなります。今年度のアンケート調査に続き、今後事業計画を策定するにあたって、これらの新たな法律の内容を、伊丹市の子育て支援の方向性を見据えるにあたってどのように受け止めておられるのかお伺いします。

2)子ども・子育て支援事業計画ニーズ調査と「子ども・子育て会議」について

 事業計画ニーズ調査の項目は、おそらく国が示してくると思われます。しかし、伊丹市独自の調査項目の検討や、新しい制度の理解を深めることとあわせて議論する必要性から、早い段階から関係市民の参画が必要と考えるものです。国は、地方版「子ども・子育て会議」の開催を来年度4月にも予定しているが、伊丹市はどうするのかお伺いします。

3)次世代育成支援行動計画との関係について

 「次世代育成支援行動計画」が2014年までで、2015年からは新制度が施行されることになります。「行動計画」は現在、「次世代育成支援推進協議会」で実施状況の点検・評価および推進する体制を取っていますが、来年度「子ども・子育て会議」が設置されると「推進協議会」と平行して二つの会議が運営されることになります。

 その二つの会議の関係をどうするのか、また、「次世代育成支援行動計画」は今後どうなるのか、「支援事業計画」に発展的解消となるのか、あわせて見解をお伺いします。