2014年9月議会:かしば優美 一般会計決算についての討論

報告第6号「平成25年度伊丹市一般会計歳入歳出決算」に対する討論

2014年10月9日

かしば優美議員

 ただいま議長より発言の許可をえましたので、はじめに御嶽山(おんたけさん)噴火によって犠牲になられた方々及びこの夏、広島の土砂災害をはじめ、台風や大雨によって犠牲になられた方々への深い哀悼とともに、被害を受けられた方々に心からのお見舞い申し上げます。

 それでは私は日本共産党議員団を代表して報告第6号「平成25年度伊丹市一般会計歳入歳出決算」の認定に同意できない立場から討論を行います。

 2012年に行われた総選挙によって第2次安倍政権が発足しました。この政権は「アベノミクス」と称して、無制限の金融緩和策と200兆円もの大型公共事業を進めてきましたが、しかしこれは過去において失敗済みの経済対策でしかなく、見せかけの「経済成長」を演出し、消費税大増税を予定通り強行。また社会保障政策では、民・自・公3党合意による「社会保障と税の一体改革」を進め、国民の生存権の保障をないがしろにしてきました。

 このような中で伊丹市政に求められるのは、市民のくらし、福祉、営業を守り充実することにありました。この視点で決算の内容に触れていきます。

 2013年度一般会計決算規模は、歳入が対前年対比1.1%増の661億9848万円、歳出は対前年対比0.6%減の645億1348万円となっています。

 歳入の根幹となるべき市税については、大阪国際空港民営化にともない固定資産税等で約2億円の増加となり、個人市民税は約4180万円の微減にとどまったものの、リ-マンショック以降の5年間で、給与所得者一人当たりの所得は17万4千円、営業所得者等一人当たりの所得は4万円それぞれ減少するなど、市民にとって依然として厳しい状況を反映しています。法人市民税は「ゆるやかな景気回復基調」といわれているものの、法人税の引き下げ等の影響もうけて2700万円の微減となり、リ-マンショック直前の2008年度(平成20年度)の29億円と比べると69%という水準であります。今後消費税の相次ぐ増税が市民のくらしや中小企業・零細業者の営業を直撃することが予想されるだけに、伊丹市はいっそう市民のくらしと安全を守る施策が求められていることを強調しておきます。

 次に普通交付税と臨時財政対策債の合計は、前年対比で1億7千万円、率にして約2%の減となっています。特に国において、地方財政計画に国家公務員の特例措置に伴う地方公務員の給与削減を盛り込み、一方的に地方交付税を削減してきたことはまったく異例であります。全国市長会の緊急アピ-ルの通り、こうした行為は地方の財政自主権を根底から侵すものであり、断じて許されるものではありません。

 以下咋年度決算の問題点を述べていきます。

 第一は、職員給与の削減・引き下げです。国家公務員の給与減額に端を発し、本市においても一般職職員の給与について7.8%もの大幅減額が実施されました。その内容は、一般職の定昇見送りと課長級以上の給与カットにより平均2.2%の給与削減、市長等特別職の5%給与カットであります。伊丹市はこれまでも職員給与に関して、「給与構造改革」の名の下に4.8%削減し、さらに地域手当も下げてきました。それらの結果単純に比較できないものの、本市一般行政職の平均給与月額は阪神間で最低クラスとなっています。先に述べた減額分に関して、給与カット分約4500万円については今年10月から復元するとしていますが、一般職員の定期昇給見送り分約1億8千万円については明言されていません。いち早い復元を強く求めるものです。

 第二は、医療費助成制度にかかる問題点です。

 特定疾患医療費助成制度について、2015年10月廃止を決定し、昨年10月から段階的に上限額を引き下げています。廃止に向けて「新規申請は受け付ける」とか「所得制限、対象疾病の見直しはしない」等の経過措置を設けていますが、難病がゆえに多額の医療費負担に苦しむ市民には冷たい仕打ちとなるものです。

 またこども医療費については、県制度にあわせて昨年7月から通院について小学4年から中学3年までの自己負担分1/3の助成が始まっています。子育て支援策拡充への市民からの要望は大きく、さらに通院についても中学校卒業まで無料にすることを求めておきます。

第三に、人権教育・啓発及び同和問題に関連する点であります。

 昨年度市の学校・職場・地域での人権教育研修会では、主として同和、男女共生、セクシュアルハラスメント、外国人等の問題をテ-マに行なったと報告がありました。問題なのは人権教育・啓発の中心が「市民相互における人権侵害」に特化し、歴史的にも今日的にも、人権とは国をはじめとする公権力によって侵されることのない永久の権利であるとの視点と実践が極端に弱いことです。福島原発事故により多くの人々が、居住権や財産権など生存権そのものを奪われている現状は人権侵害の最たるものであります。今学校生徒や市民がどのような人権に関心をもっているのかを把握し、それに沿った教育・啓発が必要と考えます。同時に同和問題に関して、その認識において現状から大きく乖離している「差別を許さない都市宣言」はただちに撤廃し、同和行政・同和教育の終結宣言を行うことを強く求めておきます。

第四に、生活保護の引き下げについてであります。

 安倍内閣のもと生活保護費のうち生活費に当たる生活扶助が3年間で段階的に6.5%
引き下げられることになり、昨年8月から削減が始まっています。その結果96%の世帯が引き下げられ、世帯類型ごとに現在と2015年度以降とを比較すると、都市部に住む70代以上の夫婦で5.3%、40代夫婦と小中学生の子ども2人の場合(都市部に住む)で9.0%それぞれ減額となります。なかでも子どもの数の多い世帯が一番の打撃を受けることになります。貧困に陥った人の「生きる権利」侵害する重大な内容です。前年度決算には生活保護費削減が反映しており、憲法第25条にうたう生存権をおびやかす内容を認めることはできません。文字通り憲法を市政にいかす立場から、国に対して生活保護費削減撤回を強く求めるべきであります。

 第五に、学習到達度調査についてです。

 市教育委員会は昨年4月、全国学力・学習到達度調査と市学習到達度調査を小学校6年と3年生を対象に悉皆(しっかい)調査を行いました。党議員団は以前から指摘しているように、全国一斉学力テストは子どもたちと教育に対するいっそうの競争と管理を強め、教育の格差づくりを進めるものです。同時に、子どもの学力実態を客観的に明らかにする調査も必要な場合があり、その際には調査目的を限定して、無作為による最小限の抽出で行い、数年に1回行うことでも、その後の学力保障に向けた具体的な施策に反映できるものです。以上の理由から、全員参加による学力調査は必要なく中止を求めるものです。同時にテスト結果の公表は今後とも行なうべきではありません。

 次に今後に向けた具体的要望です。

 第一は、中学校給食実施における運営方式です。

  市は、中学校給食の運営方式を「原則として民間事業者による運営を採用する」としています。

 しかし給食は教育の一環であること、また給食調理業務はあくまで栄養士の指示に従い、その指揮監督の下で行うべきものであり、業務の委託にはなじまないと考えます。同時に経費節減のために働く従業員の給料が抑えられ、また入札により事業者も変わることで安定した調理業務に支障をきたす恐れがあり、中学校給食はあくまでも直営で行なうことを求めます。

 第二は、ルネサス北伊丹事業所の移転問題についてであります。なによりも伊丹市が誘致した企業が事業所を閉鎖し、労働者、地域、住民にしわ寄せする身勝手な行動は許さるものでないことを重ねて指摘するものです。国、兵庫県、伊丹市は、住民に就業と生活を保障する自らの責任とともに、大企業に雇用と地域経済を守るという社会的責任を果たさせていく責任があります。同事業所から関東への移転は年明けから本格化します。伊丹市は労働局や県と連携し、障害者、家族の介護など家庭の事情で転勤できない社員を調査し、雇用の受け入れを三菱電機等に求めるなど必要な対応を求めます。

 第三に、就学援助についてですが、2013年度は小学生1740人(15.4%)、中学生1100人(20%)が利用しています。改めてクラブ活動費や生徒会費など支給項目の拡大を求めるとともに、かなり「前向きの答弁」をしていただいた新入学児童生徒学用品費の入学前支給についてはただちに実施されるよう要望しておきます。

 第四に、来年度施行予定の子ども・子育て支援新制度に関して、保育所待機児童の解消は急務であり、認可保育所の増設による解消を求めます。さらに公立幼稚園の問題では、統廃合はやめ、3年保育と預かり保育の実現を要望するものです。

 その他本会議、委員会で多くのことを要望しましたが、十分に検討していただき来年度予算に反映していただきますよう要望しておきます。全体として、国の経済対策を受けた補正予算、元気交付金を活用しての、学校園施設の改修・耐震化や市営住宅・プ-ルの改修など暮らしに密着した公共事業の推進については評価するものの、先に述べたとおり、多くの問題点を含んだ決算内容になっており認定できないことを述べ討論とします。