2014年3月議会:上原ひでき 意見書に対する討論

 3月27日(木)、日本共産党伊丹市会議員団の2014年3月議会に提案した意見書に対する討論は以下の通りです。

 介護保険制度改正に関する意見書、「ブラック企業」根絶へ実効ある施策を求める意見書、集団的自衛権に道を開く憲法解釈は 行わないことを求める意見書、原発の再稼働はやめ、再生可能エネルギー政策に転換することを求める意見書(以上は賛成)、

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた環境整備及び地域における取り組みへの支援を求める意見書(反対)

2014年3月議会 本会議 意見書討論

日本共産党議員団 上原秀樹

上程となりました意見書案のうち、意見書案第2号から5号までは賛成の立場から、意見書案第6号には反対の立場から意見を述べます。

はじめに意見書案第2号「介護保険制度改正に関する意見書(案)」に対してです。

安倍内閣がすすめる介護保険改定の一つが、「要支援1・2」と認定された人が受ける訪問・通所介護サービスを、ボランティアなどを活用して市町村が行う「総合事業」に移すとともに、要介護認定を省こうとしている問題です。要支援者が受けているサービスは、「訪問介護」と「通所介護」が6割を占め、これらのサービスが市町村の事業になれば、自治体の財政状況によって左右され、どこでも平等に介護サービスを受けられる権利を奪うものです。二つには、年金収入280万円以上の単身高齢者などのサービス利用料を1割負担から2割負担に引き上げることです。三つには、特別養護老人ホームの入所を「要介護3」以上に限定することです。伊丹市でも、昨年8月現在で111名が待機されており、入所を待ち続ける高齢者・家族にとってあまりにも過酷です。このことで、安倍内閣が自ら「介護難民」を増やすことになるものです。

この改定の狙いは、「軽度者」の利用を削減・抑制して、公的介護保険にかかるお金を押さえ込むことにあり、しかしその結果、サービスから締め出された「軽度者」の重度化は、公的費用を更に膨張させることになります。

よって、本意見書案が、拙速な介護保険制度改正を行わないよう求めていることから、賛成とするものです。

次に意見書案第3号「『ブラック企業』根絶へ実効ある施策を求める意見書(案)」についてです。

本意見書案は、不当な雇用管理を行う「ブラック企業」が社会問題となっている現在、労働者や若者を使い捨てにする雇用のあり方を改めるため、相談窓口の設置・拡充と若者への就労支援拡充、「ブラック企業」名の公表、労働行政における監視・指導体制の強化を国に求めるものです。

日本共産党は、国会に「ブラック企業」規制法案を提出しました。その理由は、一つに、若者を「使い捨て」「使いつぶす」働かせ方を放置することはできないからです。いわゆるブラック企業では、採用した労働者を過重な労働に駆り立て、次々に離職に追い込むという、大量採用、大量離職・解雇を前提にした経営が行われ、多くの若者が心と身体の健康を壊して退職に追い込まれていきます。どんな企業であれ、そこで働く人たちの生活と権利、人間としての尊厳が踏みにじられているときに、それを是正することは政治の責任です。二つには、ブラック企業を放置すれば、日本全体の労働条件の悪化をもたらし、日本の企業経営とそこで働くすべての人たちの生活に、大きな被害をもたらすものであり、その規制は日本社会と経済にとっても急務となっています。

よって本意見書案に賛成とするものです。

次に意見書案第4号「集団的自衛権行使に道をひらく憲法解釈は行わないことを求める意見書(案)」についてです。

安倍政権が狙っている「戦争する国づくり」の核心部分が、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認です。政府の「安保法制懇」は、4月にも報告書を提出して6月中にも閣議決定する考えです。

しかし、第1次安倍政権を含む歴代政権は「自衛のための必要最小限を超えるので集団的自衛権を行使できない」との立場を堅持してきました。今の安倍政権がこれを否定すれば自己否定になってしまいます。このため安倍首相は、集団的自衛権行使に関して、自衛権には必要最小限の実力行使の制約があり、その中に入るものがあるかどうか検討しているとしています。しかし内閣法制局は「集団的自衛権は、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処するものではなく、他国に加えられた武力攻撃を武力で阻止することを内容とする」もので、「国民の生命等が危機に直面している状況下で個別的自衛権を行使する場合とは異なる」と説明している通り、集団的自衛権はどう考えても、海外での戦闘参加を可能にするもので、現憲法の下では行使できません。

また、安倍首相は、中国との尖閣諸島の領有権問題や北朝鮮の核・ミサイル開発などを念頭に、解釈改憲の必要性を強調しています。日本が個別的自衛権を行使できることは自明のことです。「安保法制懇」で示された集団的自衛権行使の事例はいずれも「個別的自衛権で対応できる」、米国向けミサイル迎撃は「技術的に不可能」、「政府が自由に憲法解釈を変更できる性質のものではない」との批判が相次いでいます。

では、なぜ、何のための集団自衛権行使容認なのか。安倍首相は何一つ合理的な理由を示していません。

日本政府は1981年5月の政府答弁書で、集団的自衛権の定義を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を持って阻止する権利」と規定、いわば「他衛権」といわれ、戦後米国の発案でソ連も賛成して、国連憲章第51条に書き込まれたものです。しかし、国際的には国内法が優先することは常識となっています。

そしてその後、米国、旧ソ連などの軍事大国は、他国に軍事介入するときに「集団的自衛権」の行使を主張してきました。たとえば、2001年からの米国によるアフガニスタン・対テロ戦争には、NATO諸国が集団的自衛権の行使で参戦、79年から89年の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻、アメリカのベトナム戦争では、集団的自衛権行使で参戦した韓国は5000人近い死者を出しています。

すなわち、日本政府が集団的自衛権を行使すれば、自国への攻撃がなくても、米国の要請があれば海外で武力行使できることになります。自衛隊が海外で人を殺し、殺されることにもなります。

したがって、集団的自衛権行使容認は、憲法のもとでは許されるものではなく、ましてや、解釈によって憲法を変えることなどできるものではなく、立憲主義を否定するものです。

よって本意見書案に賛成するものです。

次に、意見書案第5号「原発の再稼働はやめ、再生可能エネルギー推進政策に転換することを求める意見書(案)」についてです。

本意見書案は、福島第1原子力発電所の事故によって、いまだに多数の人が避難生活を余儀なくされ、放射能被害が広がっている現状から、安倍政権による原発再稼働をやめ、再生可能エネルギー政策に転換することを求めています。

一方、安倍内閣は、財界と一体になって、原発の再稼働への暴走を開始し、原発輸出の「トップセールス」に奔走し、「成長戦略」に「原発の活用」を明記、そして「エネルギー基本計画案」では、原発を重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委員会の「規制基準」の7月施行を受けて、泊、柏崎刈羽、高浜、大飯などの各原発の再稼働をねらっています。しかし、どの世論調査でも再稼働反対が多数で、国民の願いを無視して、危険な原発の再稼働を強行することは許されません。

原発による低レベル放射性廃棄物に関しても、すべての原発を今廃炉にした場合にも、49万6000㎥以上になることが明らかにされ、その処分地さえ決まっていません。また、高レベル廃棄物でも、技術自体が確立されておらず、政府が計画する「地層処分」も、めどが立っていません。まさに「トイレなきマンション」といわれるとおりで、原発の再稼働はさらにこれらを増やすことになり、無謀でしかありません。莫大な費用が必要にもなります。

原発事故から3年間の体験は、原発と人類は両立できないことを示しました。原発の危険から国民と地球環境を守るという点からも、国民合意という点からも、どの原発も再稼働する条件はありません。すべての原発の稼働がストップしている今、「即時原発ゼロ」を決断し、ただちに廃炉のプロセスに入ることが、最も現実的な道です。

原発にたよらず、省エネ・節電の徹底と、再生可能エネルギーの大幅導入への抜本的転換の計画を立てて、実行していくことです。エネルギー確保のためには、当面、5~10年程度の期間は、過渡的な措置として、火力による電力の確保が必要になりますが、その間に、再生可能エネルギーの大規模な普及と低エネルギー社会への移行をすすめます。原発推進派は「自然エネルギーは供給が不安定」などとしますが、多様なエネルギーである太陽光・熱、小水力、風力、バイオマス、地熱、潮力などを組み合わせて普及すれば、安定します。

よって、本意見書案に賛成とするものです。

次に、意見書案第6号「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた環境整備及び地域における取り組みへの支援を求める意見書(案)」についてです。

日本共産党は、もともと、オリンピックの東京への招致に関して、石原都政以来、オリンピックを利用して大規模な開発を進めようとしてきた経過があり招致に反対してきました。

しかし、IOCの総会で決まった以上、これを尊重し、スポーツを通じて国際平和と友好を促進するというオリンピック精神の実現に努めるという立場を明らかにしています。同時に、東京招致には内外から様々な不安と疑問の声が出されており、無条件の信任ではありません。

したがって、国立競技場の建て替えに3000億円かけるという話もありますが、オリンピックを口実とした大規模開発はやめるべきであり、今後もしっかりとした監視が必要と考えます。あくまでも、国民生活の向上を図りながら、東京大会を成功させるという見地が大切であり、国民・都民の生活や環境と調和の取れた簡素で無理のない取り組みにすることが大事です。

一方、本意見書案では、国に要望する項目のうち、4項目目に「国際空港機能拡充やアクセス強化に向けた交通インフラの整備」など、「社会基盤整備」を促進する項目があります。このことは、国会の「東京五輪成功決議」にもない項目であり、大規模開発に道をひらくものと言わざるをえません。

したがって本意見書案には反対とするものです。

なお、バリアフリー環境の促進やスポーツ基本法に基づく国民のスポーツ権を保障するための環境整備は、オリンピックに関係なく進められるべきであることはいうまでもありません。今後、オリンピックの準備に向けて、オリンピック憲章の精神と国民・都民の利益を守り、スポーツの民主的発展を促進するために、力をつくしていきたいと思います。

以上、それぞれの意見書案に対する意見とします。議員各位のご賛同をお願いし、討論を終わります。

2014年3月議会代表質問:上原ひでき 市長の情勢認識を問う(消費税増税、戦争する国づくり)

2014.3.7. 上原ひでき議員

1.市長の情勢認識と政治姿勢について

1)消費税の増税と市民の暮らし悪化の中でくらしを守る施策を

市長は、提案説明の中で、わが国経済の基調判断について政府の見解を引用し、個人消費の増加等、景気が回復していること、規制緩和などの成長戦略で「経済の好循環」が期待できるかのように言及されましたが、事態はまったく逆の方向に進んでいます。

安倍内閣による4月からの消費税増税によって、市民の暮らしは計り知れない深刻な打撃をもたらし、経済も財政も共倒れ破綻に追い込まれる「経済の悪循環」になることは明らかです。

働いている人の賃金は、18ヶ月連続で前年同月比マイナスとなり、1997年と比べて年間60万円も減少しています。これは、定期給与の抑制や非正規雇用化などによるものですが、その一方で、資本金10億円以上の大企業が保有する内部留保は前年対比で5兆円増の272兆円にも達しています。また、アベノミクスの金融緩和で、レギュラーガソリンや灯油、ガス・電気代、生鮮野菜、マーガリンなどの乳製品など生活必需品の価格高騰が続き、総務省が発表した2013年の消費者物価指数が前年比0.4%上昇しました。

賃金が下がり、物価が上がるその上に、国の2014年度予算案では、医療費では70歳から74歳の窓口負担を1割から2割に倍増し、生活保護の生活扶助費を2.5%削減、年金支給額も1%削減します。これら社会保障の負担増と給付減で負担は約2兆円、消費税増税と合わせて10兆円もの国民の負担が増えることになります。さらに兵庫県も、「第3次県行革プラン」において、老人医療費・母子家庭等医療費の助成を削減しようとしています。

このような国のアベノミクスによる国民の暮らし破壊と消費税増税などによって、市民の暮らしは深刻になっています。市長は、この市民の生活をどう認識されているのでしょうか、また、伊丹市が深刻な市民生活を守る防波堤としての役割を果たすため、国の国民いじめの政治に反対し、市民の暮らしを守るために、何が必要とお考えなのか、お伺いします。

2)安倍内閣による「戦争する国づくり」に対する見解を伺う

伊丹市の「平和都市宣言」は、「平和は人が生きるための大本です。戦争はかけがえのない生命を奪い、幸せをふみにじります」という言葉で始まります。しかし、安倍内閣は人が生きる大本である平和をないがしろにし、戦争の道へと暴走しています。

先の臨時国会で可決成立した「特定秘密の保護に関する法律」は、特定の情報を政府が恣意的に秘密指定でき、国民には何が秘密か明らかにされないというもので、国民主権、基本的人権、平和主義をないがしろにする憲法違反の稀代の悪法です。この法律が強行された後の共同通信の世論調査で、「法律に不安を感じる」が70.8%、「法律を修正する・廃止する」が82.3%に達しました。廃案を訴えた運動は各界に広がり、山田洋次監督ら5人が呼びかけた「反対する映画人の会」には、映画監督の宮崎駿さんや女優の大竹しのぶさん、脚本家の山田太一さんらが名を連ね、ノーベル賞を受賞した白川英樹さん、益川敏英さんなど著名な学者が呼びかけた「反対する学者の会」は、賛同者が約4,000人にもなり、今も広がっています。

このことは、この法律によって、懲役10年以下の重罰とそれによる威嚇や、適性評価の名によるプライバシー侵害と権力の監視にさらされるのは、限られた公務員の特殊な漏えい行為だけではなく、国民の普通の日常とその自由が広く対象とされるからです。

この法律の目的は、安倍首相がオバマ米大統領との会談で、特定秘密保護法案は「日米同盟強化を見据えたもの」と説明したとおり、集団的自衛権の行使を可能とし、海外で米国と一体に「軍事行動をする国」へ日本を作り変える構想との一環として出てきたものです。

そしてその「集団的自衛権」とは、「自衛」とは無関係の概念で、海外への武力行使を可能とするものあり、大国が侵略や軍事介入する際の口実として使われてきたもので、日本国憲法第9条に違反することは明白です。だからこそ歴代政府は、「憲法9条のもとで許容される実力の行使の範囲を超えるものであり、許されない」としてきました。

ところが、安倍首相は、「政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることで(行使容認は)可能であり、憲法改正が必要との指摘は当たらない」「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持つ」などと述べ、首相が自由に憲法の解釈を変更できるかのような発言を行っています。これは、最高法規としての憲法のあり方、立憲主義を否定するものに他ならず、さすがに古賀誠自民党元幹事長も、「立憲国としてとても考えられない」「普通だったら予算委員会がとまるほどの大騒動の話」と批判し、同様に河野洋平元衆議院議長や野中広務自民党元幹事長、村上誠一郎元行革担当相、漆原良夫公明党国対委員長らも批判しています。

市長は、伊丹市平和都市宣言に照らして、このような戦争への道を突き進む安倍内閣の暴走をどうお考えでしょうか、立憲主義に対する考え方も含めて、見解を伺います。