2014年3月議会代表質問:上原ひでき 中学校完全給食は自校調理方式を

2014.3.7. 上原ひでき議員

2.中学校完全給食を実施するに当たって

市長は、来年度の三つの重点事業の一つに、中学校給食の早期実現をあげられました。私は議員になって23年ですが、日本共産党議員団としては、それ以前、30年に渡って、「愛情弁当論」と対峙し、中学校における完全給食を求めてきました。市民の声が広がり、やっと実現できることは大変喜ばしいことです。そこで、次の点をお伺いします。

第1に、自校調理方式ではなく、センター方式にすることについてです。

「基本計画」では、総合的に判断し、自校方式のメリットを取り入れ、様々なニーズに対応した「センター方式」による中学校給食を実施するとされています。しかし、「基本計画」に書かれている実施方式の比較表によると、「食育」では各学校で食育と連動できること、「食中毒リスク」では被害範囲が最小限となること、「配送時間」では2時間喫職が可能であること、「適温提供」では調理後すぐに喫食できることで適温給食が可能、「地産地消」ではセンター方式に比べて調達しやすい、「災害対応」では避難している市民に食事の提供が可能などと、ほとんどの項目で自校方式のほうにメリットがあるとされています。

「アレルギー対応」では、自校方式は専用調理室の設置は困難とされていますが、専用室で多様なアレルギーすべてに対応できるものではなく、多くのセンターは卵と小麦粉ぐらいで、残るアレルギーには結局個別対応となっています。箕面市が昨年9月に自校方式による中学校給食を始めていますが、そこでの自校方式のメリットに、「食物アレルギーのある生徒に対し、きめ細やかな対応ができること」とありますが、自校方式によって栄養士や調理員、教職員が一体となって対応できることが、より安全で安心の給食となるのではないでしょうか。

「早期の実現」では、各学校での調整に時間がかかるとしていますが、もともと「早期実現」を何十年も拒んできたのは当局です。「やるときめたら早く実現」ということもありますが、「やるときめたら最善の給食を提供する」のが教育委員会の役割ではないでしょうか。

「敷地上の条件」では、自校方式の場合は制限を受けるとされています。新に調理室を設置するわけで、敷地内で制限があるのは当然のことです。「基本計画」では、学校を調査した結果、校庭・運動場に調理場をつくるしかなく、その場所は2箇所を除いて不可能であるとの結論を出しています。メリットの多い自校方式を実現するために、あらゆる手段を検討されたのでしょうか。私たちは、自校調理方式を採用することが、子どもたちに最善の学校給食を提供できると考えています。以上述べましたことに対する見解を伺うものです。

第2に、自校方式のメリットを取り入れ、様々なニーズに対応した「センター方式」による中学校給食を実施するとされていることについてです。

一つは、「食育」に関して、「生徒と栄養士・調理員との交流ができ、給食を作る人への感謝の心をはぐくむことができる」とする自校方式のメリットをどう取り入れるのでしょうか。現在の小学校の取り組みではとても十分とはいえません。自校方式は毎日身近のところで調理する姿を見ることができます。

二つには、「地産地消」では自校方式は身近なところで作られた食材が調達しやすく、作る人の顔が見えます。そのことが学校と地域をつなぎ、都市農業の発展にも結びつきます。どのようにしてセンター方式ではこれを実現するのでしょうか。

三つには、自校方式の場合は残食がほとんどないといわれます。それは身近なところで調理する人が見え、栄養士・調理員と交流する中で「嫌いなものもがんばって食べよう」との気持ちになれること、調理してすぐに食べることができることで、おいしいと感じるからだといわれています。どのようにしてこのことを実現するのでしょうか。

以上3点についての見解を伺います。

第3に、「基本計画」で、調理業務等は民間事業者に委託するとされている問題です。

学校給食は、子どもたちに安全で安心な食べ物を提供するという点にありますから、献立の作成から調理まで、職員がその先にいる子どもたちの心身の発達などを思い浮かべながら食材に向かうことが求められます。従って、学校給食調理業務は子どもたちの発達を保障する仕事であり、食育を含めて教育の一環であるということです。調理部門等を民間事業者に委託することで、伊丹市としてこのような公的責任が果たせるのでしょうか。

問題の一つは、民間委託しているところでは、偽装請負が常態化していることです。それは、毎日子どもたちに最もよい状態で給食を届けるためには、詳細な指示文書や口頭による栄養士や調理員との打ち合わせが不可欠であり、その場で臨機応変に対応しなければならないことが度々起こるからです。

民間委託した場合には、事業者が責任者をきめ、そこに指示することしかできません。委託の場合は、事業者が自らの責任で独立して業務を行うこととされ、厚生労働省の請負に関する問答集37号告示では、文書、口頭に限らず、発注者が作業の内容、順序、方法等に関して指示し、そのとおりに事業主が作業を行っている場合も偽装請負としています。

さらに、直営で行っている豊橋市では、調理員が学校の食育の授業に出かけ、食材の納品から調理、配送までの様子をDVDで紹介、調理の実演もしながら話をしているとのことですが、民間委託ではこのようなことはできません。

二つには、経費削減のために民間事業者で働く従業員の給料が抑えられ、入札によって事業者も変わることで、安定した調理業務に支障をきたします。

学校給食の調理業務は、大量生産でかつ味を落とさないことが求められるために、固有の技術・熟練が求められます。これは、経験の中で蓄積されるもので、そのため給食を専門職として雇用し保障することが必要です。ところが、利潤追求が求められる民間事業者に委託することは、コストダウンがメリットとされ、マニュアル化した調理業務になりがちになるとともに、給料も抑制されて官製ワーキングプアを生み、従業者が定着せず経験の蓄積もできません。伊丹市は小学校給食を直営で行っており、そのノウハウは蓄積されていることから、中学校給食を民間に委託することはありません。2010年3月の衆議院文部科学委員会で、当時の川端文科相は「学校給食の本来の目的を損ねてまで民間委託をするのは本末転倒」と答えています。

以上、二つの問題に対する見解を伺います。

第4に、学校運営の課題と対応についてです。「基本計画」では、学校現場では様々な教育課題を抱えていること、教職員がゆとりを持って生徒にかかわることができる教育環境の充実が求められているとし、施設面での環境整備と給食費の公金化、給食担当者会の設置などの対応をするとされています。一方、パブリックコメントでは、アレルギー対応に対する人的サポートの必要性、行政が責任を持つことなどが出されています。マニュアル整備や研修会だけでは不安が残るのではないでしょうか、見解をお伺いします。