2012年6月議会:かしば優美 原発ゼロ、本格的な自然エネルギ-の導入に向け今できること

一般質問 2012年6月15日
日本共産党議員団 かしば優美

 ただいま議長より発言の許可を得ましたので、私は日本共産党議員団を代表して、―原発ゼロ、本格的な自然エネルギ-の導入に向け今できること―と題して3点質問します。

1.大飯原発再稼働について

 はじめに大飯原発再稼働について市長の見解をうかがいます。

 関西広域連合が関西電力大飯原発3、4号機の再稼働について声明を発表したのをうけ、野田首相は6月8日、「再稼動すべきだというのが私の判断だ」と表明しました。「国民生活を守る」ことが「唯一絶対の基準」などとしていますが、この判断は「国民生活を守る」どころか、国民の命と安全を危険にさらす最悪の判断といわなければなりません。

 なぜなら再稼動については次の五つの大きな問題があります。

① 福島原発事故の原因究明がされていないことです。いまだに原子炉内部の様子さえわからない状態であり、事故原因が究明されていないのに、安全基準や対策も確立できません。

② 政府がとりあえずやるべきとした「安全対策」さえ取られていないことです。大飯原発の場合、事故のさい不可欠な免震事務棟の整備などはすべて計画だけですまされています。また「特別な監視体制」といっても、経済産業省の副大臣や政務官が大飯原発で運転状況を「常時監視」するというもの。原子炉の専門的知識もない政治家に「監視」の役目が果たせるはずもありません。

③ 地震・津波の学問的知見を根底から見直す必要があることです。全国の原発がどの程度の地震や津波に見舞われるかの想定さえ見直しが迫られているのに安全が確保できるようにいうのは、新たな「安全神話」そのものです。

④ 原発事故が起こった場合の放射能被害の予測も住民避難計画もないこと、

⑤ まともな原子力規制機関がないことであります。また野田首相が繰り返しのべたのは、電力不足や料金値上げになれば、「国民の安心が脅かされる」ということでした。しかしもともとこれらの問題と原発再稼動とは天秤にかけてよい問題では決してありません。

 電力不足問題そのものについて見ても、「夏場のピ-ク時には関西は15%不足する」としていますが、その具体的根拠はなんら示されていません。夏場の電力需給について、ピ-ク時はどのくらいの時間帯、日数なのか。原発が再稼動しなかった場合、天然ガスなどの火力の活用、電力融通、節電努力などによって、どれだけ需要を減らし供給を増やせるのか。これらも具体的には明らかにされていません。野田首相から繰り返し語られたのは、「日常生活や経済活動」が混乱するという脅しの言葉でした。具体的な根拠も示さず、恫喝によって原発再稼動を迫る態度は、国民ら大きな批判を浴びています。

 いまなすべきことは「原発ゼロ」の政治決断であり、そうしてこそ、当面の電力需要への対応も、再生可能エネルギ-への切り替えにも本腰が入るのではないでしょうか。市長の明確な答弁を求めるものです。

市長の答弁(要旨)

 原子力発電の稼働や存廃問題といった原子力行政は国の専管事項であると考える。 市民の生命や安全・安心な生活を守る立場にある市長として、(今回の再稼働は)直近にせまる電力不足への対応として、立地自治体の判断に加えて国が判断し決定されたものと考えています。なお将来的には原発に依存しない社会が望ましいと考えています。

2.文科省「放射線副読本」に関連して

 文部科学省が作成した放射線副読本について、昨年12月議会一般質問で取り上げられました。この中で、「副読本の活用につきましては各教科における指導に関連付けた活用ができるよう、11年度中に活用方法、活用単元等検討し活用を進めていきたい。」と答弁がありました。新学期がはじまりおよそ2ヶ月が経過する中、福島原発事故による放射能汚染のため、いまだに16万人の人々が避難生活を余儀なくされ、一方で原発再稼動をめぐる動きが日々報道されている時、児童・生徒の関心も非常に高いものがあると思います。よって現時点での副読本の活用等に関して数点質問します。

(1)具体的な活用方法、活用単元をどう考えているのか。

 市教育委員会にお聞きしますと、この副読本は今年3月、伊丹市内の小・中・高校・特別支援学校に在籍する全児童生徒分が文部科学省から各学校に送付されたとのことです。まだ新学期が始まったばかりですが、昨年度末に検討された具体的な活用方法、活用単元についてお聞きします。

(2)「放射線副読本」の内容に対し、批判的意見が多いことについて

 福島大学の坂本恵教授は、文部科学省が昨年作成した副読本は福島原発事故の記述がほとんどなく、放射線は身近であることを強調して健康被害を過小に見せるものだと批判しています。

 得丸浩一全日本教職員組合教文局長は、新たな副読本について次のような談話を発表しています。

 新たな副読本で「原子力発電所」の文言が出てくるのは、小学生版では1カ所、中学・高校生版では2カ所のみです。そこには「原子力発電所や放射性物質を扱う施設などの事故により、放射性物質が風に乗って飛んでくることもあります。」と記述しています。放射性物質をあたかも「杉花粉」のように扱う記述に危機感は微塵も感じられません。文部科学省は、「安全神話」にもとづく教育政策の反省に立った総括を行うべきであり、新しい副読本には、原子力発電の持つ根本的な危険性と原子力発電所事故が引き起こした未曾有の深刻な事態とその原因、および対応などについての客観的で科学的な記述が求められます。

 また「この副読本では、放射線の効用やメリットについては非常に細かいことまで書いてあるのに、放射線の危険性や悪影響についてはほとんど書いていません。いまなぜこの時期に放射線に関わる教育が必要なのかという、具体的な問題意識と現実の状況を明確に教材の内容に反映すべきです。」との指摘もあります。

 市教育委員会は批判的意見の多い副読本に対してどのように受けとめているのか見解をうかがいものです。

学校教育部長の答弁

 この副読本は福島原発の事故により放射性物質が大気中や海中に放出された状況を受けて、放射線への不安や関心を抱いている児童生徒が多いことをふまえ、放射線について解説・説明したものです。高校生のための副読本では、専門的な内容を取り扱っていますが、放射線に関する一般的な知識としては適切な内容であると考えています。

(3)子どもたちに原発や放射能について、正確に教える取り組みについて
 ―新学習指導要領解説内容に触れて―

 新学習指導要領解説において、原子力がどのように取り扱うこととされているかを見ました。小学校社会では、「火力発電所や原子力発電所においては環境に配慮していることや安全性の確保に努めていることについて取り上げることも考えられる」とし、原子力発電の危険性については、触れる余地のない記述であります。また中学校理科では、「原子力発電ではウランなどの核燃料からエネルギ―を取り出していること、核燃料は放射線を出していることや放射線は自然界にも存在すること、放射線は透過性などを持ち、医療や製造業などで利用されていることなどにも触れる。」とし放射線はあまり危険なものであるという印象を受けない文章であります。

 放射線や放射能を語るとき、被災地はもちろん全国を震撼させた原発事故を避けて通ることはできません。教育も同様ではないでしょうか。今子どもたちに原発や放射能について「科学の目」で正確に教えることが必要です。

 「科学の目」で客観的に原子力発電を見るとどうなのか。それは「未完成」で危険な技術だということです。理由の第一は原子炉の構造そのものが「不安定」であること。なぜなら①原子炉の中で核燃料を燃やす時はもちろん停止した状態でも、ウランから生まれた核分裂の生成物は膨大な熱を出し続けます。ですからそれを絶えず水で冷やしておく機能が必要です。水の供給から止まれば膨大な熱により暴走が始まる。あらゆる場合を想定すると、水が止まらないようにすることができないこと。また②どんな型の原子炉も、核エネルギ-を取り出す過程で、莫大な死の灰を生み出します。どんな事態が起こっても、大量の死の灰を原子炉の内部に絶対かつ完全に閉じ込めるという技術を人間はまだ手に入れていないこと。

 第2に、使った核燃料の後始末ができないことです。「使用済み核燃料」とは原発を運転したら必ず大量に出てくる死の灰の塊です。人間は、この「使用済み核燃料」を始末するシステムをいまだに開発できず、日本では各原発の建屋と敷地及び青森県六ヶ所村の再処理工場敷地内の貯蔵プ-ルに貯蔵するしかないという状況です。福島の実例で明らかになったように、いざという時には、原発だけでなく、「使用済み核燃料」のプ-ルの一つひとつが核事故の発火点になるのです。自分が生み出す核廃棄物の後始末ができないようなエネルギ-の利用の仕方が、本当に完成した技術といえるのかであります。大きくは二つの理由から、原子力発電は「未完成」で危険な技術であることをきちんと教える必要があると考えますが、見解をうかがいます。

学校教育部長答弁

 学校教育における教育内容は、法により規定された学習指導要領に則り各教科等の目標達成に向けて様々な指導方法を用いて行うものです。この指導内容は一般的・普遍的なものであり、議員ご指摘の事故を受けて、技術的な面について危険である等といったことは指導事項としてでなく、学習教材として活用することが大切だと考えています。

3.自然エネルギ―導入に向けた方向性について

(1)地域新エネルギ―ビジョン策定の考えは?

 地球温暖化や福島原発事故などにより、従来からの化石燃料を中心としたエネルギ―政策がゆきづまり、自然エネルギ-への志向が高まってきています。また再生可能エネルギ―の固定価格買取制度(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスを用いて発電された電気を、一定の期間・価格で電気事業者が買い取ることを義務付けるもの)が来月7月1日からスタ-トとなります。

 こうした背景のもと、本格的な自然エネルギ―導入に向けて何が必要かであります。国政では、政府が自然エネルギ―の明確な導入目標を設定すること。そのために必要な財源を確保すること、初期投資での負担を軽減する国の補助などが必要です。

 自治体では、自然環境や地域産業など自然エネルギ―の開発に役立つ地域の資源を探すことが必要です。そのために地域の自然エネルギ―のビジョンをつくり、住民と共有することが大事です。このビジョンは、地域の特性をふまえて、市民、事業者、行政が一体となって自然エネルギ―の導入に取り組むための方向性を示す計画書です。地域に眠る自然エネルギ―を掘り起こし、まちづくりと一体になって計画的に導入していくことで、地球温暖化問題の解決に向けた地域レベルでのとりくみを推進するためのものです。この地域新エネルギ―ビジョンを策定した自治体は、2010年度末現在で約45%にのぼると聞いています。地域新エネルギ―ビジョンの策定に対する当局の見解をうかがいます。

市民自治部長答弁

 市の「環境基本計画」では、公共施設も含め太陽光発電などの新エネルギー設備導入をかかげています。この基本計画を具体化する基本方針=エネルギービジョンの策定は非常に有意義であり、本市に適したビジョンのあり方を検討していきたいと考えています。

(2)住宅用太陽光発電設置に対する補助制度を

 補助制度を求める質問を昨年9月議会で行ないましたが、答弁は味も素っ気もないものでした。理由の第一は、「独自の補助制度を創設した場合、今後の太陽光発電の普及に伴い市の財政負担が非常に大きくなっていくことが予想される。」こと。第二には、「住宅用太陽光発電設備の設置は比較的資金に余裕のある方が実施されている場合が多いことから、多額の市税を投入して補助制度を運営することは慎重にならざるを得ない」との内容でした。

 兵庫県内で当補助事業を実施している姫路市や西宮市の具体的内容を見ますと、西宮市では「当補助事業は申請総数が450件に達し次第受付終了となります。(先着順)」とし、姫路市では「予算の範囲内で先着順に受付」と、あらかじめ予算額を決めておき、申請件数がそれを超えると受付終了としており、財政負担が大きくなることはありません。

 また姫路市では、工事請負契約業者が市外の場合の補助金額は1万円/KWで、市内業者の場合は1万円/KWに2万円を加算しており、市内業者と市外業者で補助金額に差を設けるなど、市内業者、市内経済の活性化に向けた工夫を行っています。さまざまな方法を駆使することにより税を有効に活用することができると考えますが、改めて住宅用太陽光発電設置に対する補助制度についての見解を求めておきます。

市民自治部長答弁

 国・兵庫県は住宅用太陽光発電設置への補助額を今年度は昨年度に比べて減額しています。エネルギーは基本的に国がインセンティブを提供すべきであり、こうした補助制度は国の責任と負担で運用されるべきと考えています。