2012年6月市議会:ひさ村真知子 中国帰国者の高齢化対策、市営の合葬墓に関して

2012年6月19日
ひさ村真知子

1、中国帰国者の高齢化対策について

 中国残留邦人、帰国者支援に関しての質問を数回させていただいていますが、今回もその続きとなっています。

① 残留孤児である帰国者一世は、第二次世界大戦後も帰国できず、1972年日中国交回復した後、大変苦労の末母国日本に帰国されました。しかしその後今日まで、生活習慣の違いや言葉の壁のため、生活面、就労で多くの苦労を重ねて来られています。

 2007年の「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立に関する改正支援法」で、生活費の面では、老齢基礎年金の支給が行われ、自治体には帰国者の立場を理解した支援員の配置が義務付けられました。伊丹でも中国語で相談できる支援員の体制ができており、帰国者が安心して相談できる状況が進んでいると思います。そのような中少しは日本での生活に慣れてこられているでしょうか。

 先日、帰国者の方の体験談を聞く機会がありました。幼い時何軒もの中国人の方の家を廻され育てられた話し。日本では言葉が十分通じない中での職場で、日本語を一生懸命練習しているとうるさいと灰皿を投げられたという就労時の苦労、まだ自分の実の親がはっきりしないという悲しい体験を涙ながらに話されていました。

 自分の親に育てられず、自分が何人かも分からず、幼いときには、いろいろといじめられたたがその理由さえ分からなかった。居住している地域では、「中国人」といわれなかなか受け入れてもらえない。

 なぜこのような悲しい人生を帰国者は歩まなければならないのか。私たちはきちんと知っていなければならないと思います。満州事変後(1936年)国策ので旧満州へ「満蒙開拓団」として、「大陸の花嫁として」「義勇隊」として大陸へ渡りましたが、多くの命が戦争の犠牲になりました。その中で幼い子どもたちは命だけでも助かればと、置きざりにされて形で中国人に育てられ、肉親に会いたい日本に帰りたい一心で今日を迎えられています。

 市内の帰国者のこのような過去の戦争での体験を私たち市民はどれだけ知っているのでしょうか。体験談を聞く中で一刻も早く地域での疎外感を取り除き安心した生活を保障しなければならないと痛感します。伊丹在住の帰国者の方も、日本に来て何年もなっています。しかし、日本語は思うようにしゃべれません。近所付き合いのできる友達が来ている状況ともみられません。が時間は過ぎていきます。

 3年前同じ様な質問をさせていただいています。

 そのとき市長は「すべての市民の皆様方が、その地域の中で安全に安心して暮らせるまちづくり、暖かい地域社会つくりをいっている当然その中には、市民の一部として残留邦人の方もいらっしゃる。われわれ迎える側としては温かい思いやりで、できるだけの配慮をしていくべきものと考えております。」と市長は応えていいただいています。
 いま帰国者の方々が市長の言われたような状況となっているのかきになるところです。支援相談員さんは配置され大変皆さんから信頼されておられ様々な相談も持ち込まれているようです。

 しかしすでに皆さん当然高齢のために様々な病気が発生し、介護の問題があり、病院に頻繁にいかなければならない状況となっています。高齢化対策を急がなくてはならないと思います。その一つとして、医療に関しての対応にかんしての質問も以前もいたしました。病院に行っても自分の症状をきちんと伝えるのが本当に難しいです。中国語の通じる病院があるときいて市外の病院に行かれているとも聞いていますし、中国語で症状を話せると安心するが、日本語では文字を書いてもらったりするが医療用語は分かりににくい。といわれています。

 介護に関しても同じです制度の理解や当然ヘルパーや施設での言葉の通じる介護が必要です。このようの言葉の壁が依然として安心して医療にかかることができない要因ともなっています。当然介護施設でも話ができないため寂しさを感じておられます。今後ますますこのような要望は多くなります。医療関係や緊急時の対応は自立支援通訳を設置し緊急時も対応できるように支援していくという方向ですが、ますます増えていくのではないかという現状で安心して医療を受けるための今後の対策はいかがでしょうか。御伺い致します。

答弁

 「中国残留邦人」といいますのは、昭和20年当時に、開拓団等で中国に多く居住していた日本人の方々が、ソ連軍の対日参戦により、戦闘に巻き込まれたり、避難中の飢餓や疾病で犠牲となり、このような状況で肉親と離別して孤児となり、中国の養父母に育てられたり、やむなく中語に残ることになった方々です。筆舌に尽くせないご苦労をされ、ようやく日本に帰国された時は、高齢のため、言葉も不自由なため就労も思うようにいかず、地域にも溶け込めず苦労をされてこられた。

 安心して医療を受けるための対策」については、新たな支援策の一つである「地域社会における生活支援」のなかで日常生活の相談、医療機関受診時の通訳を行うため、自立支援通訳を派遣している。その利用者は増加してきている。医療通訳の研修会にも参加しスキルアップに努めている。今後も安心して慰留機関を受診できるよう、支援を行っていく。

②点目、支援員の増員について、帰国者の高齢化のため相談内容も複雑となり、帰国者だけでは解決できないことも今まで以上に多くなるのではないでしょうか。

 先日残留邦人の方のご主人がなくなられました。お葬式の仕方に関しても日本の習慣が分かりづらく式場の方とも中々話しが通じません。私たち第3者に対して式場の方が相談される状況でした。その後家族の方からの相談なども声をかけられました。

 このようなことから、もっと生活に関しての相談内容が複雑になり、多くなってくるのではないかと思います。スムーズに相談に乗り解決していくためには、支援員の増員も必要ではないでしょうか。医療関係や先ほども出しましたが、介護関係への対策への支援員も必要と思います。いかがお考えでしょうか。

答弁

 平成20年8月より1名配置し、週3日では業務が困難になったため常勤配置としている。いる。医療、介護、についても、支援・相談員が必要に応じ、医療、介護機関等と連絡を行いながら、適切に対応を行っている。

③点目として、実態調査のアンケートについて、伊丹市では、帰国者のみなさんの生活への不満点、不安などの状況の把握はどの様にされているのでしょうか。新支援法から4年目となっていますが、帰国者の方は今日の生活の中で様々な問題を抱えておられると思います。安心して生活するためにその問題をつかみ解決していくことをしなければなりませんが、現状はどうなのでしょうか。

 近所との交流ができていない、トラブルがある、このようなことは中々言い出せない相談ではないでしょうか。生活状況の把握や要望などをアンケート等で聞き取り調査を行うことも必要と思いますが、いかがお考えでしょうか。お聞きいたします

答弁

 支援・相談員活動の中で、帰国者の家庭訪問をし、様々な話しを聞いているため、市内の中国残留邦人の要望などについては一定の把握をしているため、改めてアンケート調査の必要性については低いものと考えている。市得に関しては、今後も引き続き、国の支援策に基づき、市内の支援団体とも連携を行いながら実施していく。

④聞き取りの記録に関して、帰国者の永年の体験話は大変貴重なものだと思います。物心付いたときには自分を守ってくれる親族、親はいない。知らない中国の人にもらわれ、預けられ、育てられるが、なぜなのか理由が分からず周りからはいじめられる、自分が日本人と分かり、自分の親の元へ帰りたい。しかし1972年の日中国交回復までは、その手立てもかないません。どの方の話を聞いても切なる思いがあふれています。

 このような状況の中でやっと日本に帰れたと思っても、そこからがまた苦難の始まりとなっていいます。このような悲しい歴史を二度と繰り返さないためにも、また、帰国者の皆さんが帰って来てよかったと思えるように、市民との交流がスムーズに行われ、安心して住んでいただけるような環境をつくっていかなくてはなないと思います。

 そのためには、このような体験を多くの市民に知っていただくことが必要ではないでしょうか。

 地域のかたに時々残留孤児についての話をしましても、国策としての満蒙開拓団、義勇軍などで多くの子どもが犠牲になったことをご存じない方も多くおられます。これからますますこのようなことを語れる人もいなくなります。

 伊丹におられる帰国者の方やその関係者の方の中国での体験、帰国してからの体験を記録し、多くの市民に伝えていくことが帰国者が地域に受け入れられることにも大きくつながると思いますし、理解をしてもらうためにはその歴史的な経過を知ってもらうことはどうしても必要ではないでしょうか。このようなことを後世に伝えることが平和を保つためにも大きな役割を果たすことと思います。そのための資料として話を聞き、伊丹市での記録を残してはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

 また先日帰国者関係の問題を学ぶために資料をお借りしようとしましたが、平和問題に関して様々ありましたが、残念ながら満蒙開拓団、義勇軍、大陸の花嫁の問題などの関係の視聴覚材料がありませんでした。「大地の子」だけありましたが、長編のため使えません。

 地域の方との交流を深め理解していただくためには、説明材料が必要です。帰国者への聞き取りなど行うなかで、その説明材料として、なぜ残留孤児となったのかなどの関係資料を今後そろえていただきたいとも思います。地域の方や中高生にも理解してもらえるようにそろえていただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうかお聞きいたします。

答弁

 筆舌に尽くせない長年のご苦労を語り継ぎ、二度とこのような惨事を引き起こさないための取り組みの充実・拡大の必要性を感じているところです。啓発事業につきましては、人権啓発センターで啓発映画の上映を行ったり、講演会として中国帰国者体験談のお話しを聞く会を設けたりし市民の皆さんに対して、中国帰国者の問題を提起する中で平和意識の高揚に努めております。

 しかし、帰国者で語り継ぐことに抵抗感をもたれている方もあり、行政が中心となって記録資料作りをするといったことは、困難な状況にあります。市として対応できることは、関係者と連絡調整しながら、状況に応じた適切な対応もすることも必要であると考えております。

 市民団体との連携をしながら、民間団体が発行されている記録集やDⅤDなどを視聴覚教材として活用できる方向で検討したいと考えている。

2、市営での合葬墓にかんして

 今日お墓のあり方に関しては色々問題があり結構悩めるところです。新しく作る墓は大変な金額となりますし、子どもがいなければお墓の世話ができないため作ることはできません。お葬式のあり方も家族葬などや簡素にされる形が増えてきています。同時にお墓のあり方も様々な問題から様変わりしています。

 共同墓や合葬式の墓への関心が高くなっています。各自治体での設置も増えています。伊丹市でも必要ではないかと思います。

 ある新聞報道では2007年以降に合葬式の墓を設置した自治体は大阪市や神戸市など少なくとも18市となっています。大阪市平野区の市営霊園の合葬墓では、使用料5万円別に5万円を追加すれば10年間、10万円なら20年間遺骨が個別保管されるそうです。合葬墓の申し込み数は、現在、生前予約を含め約850体あるということです。一般墓地の区画使用料は、安いもので80万となっています。墓石を立てれば中々経済的には大変です。また空きはないため募集は停止されているそうです。奈良県橿原市では、6000万円かけて約5000体収容できる合葬墓を建設しています。基本使用料5万円で、4月から募集を始めています。

 資金の問題や墓の後を見る人がいないなど、今日的問題が問われ要望が強いため、各自治体が設置してきているようです。大阪市が2006年に行った40歳以上の市民アンケートでは、合葬式を「使用したい」「関心がある」との回答が35%で、奈良県橿原市も400人のアンケートでは「必要」とする人は55%であったそうです。伊丹でも同じように考えている市民は多いのではないでしょうか。伊丹市内にもすでに共同のお墓があります。ある運動団体が墓地内に立てています。

 すでに43人の方が眠り、生前予約が100人となっているそうです。生前予約は5万円なくなれば5万で名前(俗名)が刻まれます。ここでもおまいりする方がおられるのできっと眠っている方はさみしくないのではないでしょうか。お隣の宝塚市も検討中とされています、伊丹でも必要とされている方も多いのではないでしょうか。是非色々研究を重ねて設置していただきたいと思います。

 見解を御伺い致します。

答弁

 「合葬墓」が近隣市に市営墓地に整備や計画され、話題となっている。希望する方が増える傾向にあるものの、全体からみてまだ少数と感じている。今後としては、継続してその傾向を見定める必要性を感じている。しかし新たな墓地造成は困難と思われるが、市民の皆さんからの要望も踏まえながら調査研究を進めてまいりたい。

 先ほど述べた、中国帰国者の老後の安心を支えるために、この問題はどうしても避けて通れません。「日本人としてやっと帰国できても人生の最後がどうなるかの見通しがないと安心はできない。」という声がありますが、日本人としての最後の証としての要望をかなえることを伊丹市として必ず実現していただきたいと思います。

 様々な思いを胸に秘め親がいない幼いときの中国での生活、やっと帰ってきても心場細い生活です。二世三世となる子どもたちとともに日本に移り住んで20年30年となります。中国には帰れない状況です。切なる思いで、母国での生活を終えようとされる、帰国者のみなさんの胸のうちを聞いていただき、要望に沿っての形に近づけての墓の設置を実現していただきたいと思います。

 難しい面があるともいますが、どのような要望があるのかを早急に聞いていただく機会を持っていただき、ともに墓のあり方、設置の仕方を考えていくという大切な時期でないでしょうか。帰国者のみなさんの声に是非耳を傾けお墓作りの検討課題のひとつにいれていただきたいと思います。ご見解をお伺いいたします。

答弁

 市営墓地の空きが出れば募集を行う。全国には帰国者の専用霊園や共同墓が関係者の方々の協力で整備されている。帰国者の方々の要望を聞き、墓地のあり方については、調査研究をすすめていきます。