2012年6月議会本会議:上原ひでき 緊急事態基本法の制定を求める意見書案 反対討論

意見書案第3号に対して賛成、意見書案第4号に対して反対の立場からの討論

2012年6月29日
日本共産党議員団 上原 秀樹

 日本共産党議員団を代表して、議題となりました意見書案のうち、意見書案第3号「県立こども病院のポートアイランドへの移転計画の中止を求める意見書」(案)に対して賛成、意見書案第4号「「緊急事態基本法」の早期制定を求める意見書」(案)に対して反対の立場からの意見を述べます。

 はじめに意見書案第3号についてです。

(意見書案第3号「県立こども病院のポートアイランドへの移転計画の中止を求める意見書」(案)に対して賛成の討論はこちら)

 次に意見書案第4号についてです。本意見書案は、いつ起きるかわからない自然災害と、予測ができ外交上などの措置が検討できる武力攻撃とを一緒くたに「緊急事態」とする、緊急事態基本法の制定を求めています。

 そもそも突発的な自然災害への対応は、現行法でも充分可能であり、基本法制定など必要ありません。意見書案では、現在の憲法は平時を想定した内容となっており、非常事態事項が明記されてなく、大規模自然災害へ対応できないかのように言っていますが、これは現行法の規定をわきまえない理論です。

 震災と津波被害への対応や、原発事故による放射能被害への対応については、憲法のもとに「災害対策基本法」「大規模地震対策特別措置法」「原子力災害対策特別措置法」など、対処すべき法律が制定されています。災害対策基本法の第8章では、大規模な非常災害が発生し、その災害が国の経済や公共の福祉に重大な影響を及ぼす激甚なものであり、災害応急対策を推進するため特別に必要があるときは、首相が「災害緊急事態」を布告し、緊急災害対策本部を設置するとされています。そしてそのもとに、必要ならば国民の行動に一定の制約が認められることも国会で明らかにされています。

 今回の大震災の初動の遅れに関しては、法整備の問題ではなく、政府の初動対応の遅れこそが被害を拡大したことも、国会の議論等ですでに明らかとなっています。その被災地ではいま、復興への懸命の努力が続けられている最中であり、その震災を利用して基本法制定を企てるなど、全く理解できません。

 同時に、この法制定を突破口にして、憲法改定のねらいが背後にあることも重大です。

 2004年5月に、自民・公明・民主が合意した緊急事態基本法とは、政府が緊急事態と認定したら、憲法が保障する基本的人権を制約できるようにするものです。
 日本国憲法は、戦前、基本的人権を抑圧してきた政治体制が、無謀な戦争を引き起こしたという深い反省の上に立ってつくられ、そこには、政治の責任で、あのような惨禍を再び起こさせてはならないという決意がこめられています。それを踏みにじって、「必要最小限」を口実に、基本的人権を制限しようとすることなど認めるわけにはいきません。

 また、意見書案には、中国漁船尖閣事件や、ロシア閣僚の北方領土訪問、北朝鮮核ミサイル脅威などが列挙されています。中国漁船衝突事件に関しては、尖閣諸島が日本の領土であり、その領海内で外国漁船が不法な操業をしていたのを海上保安庁が取り締まるのは当然のことです。これら領土問題などを含めた国際的な紛争解決に関しては、憲法九条で、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とされているとおり、平和的外交政策を粘り強く推進していくことであり、決して武力などで対処することではありません。そしてこのことは、いまや国際的ルールとなっています。

 したがって、いまやるべきは、憲法をないがしろにする緊急事態基本法の制定ではなく、大震災や原発事故など多くの苦難のなかから学んだ教訓と、基本的人権と生存権の保障を明記した憲法を生かし、震災の復旧・復興に全力を上げることです。

 よって本意見書案は、到底賛同できるものではなく、反対とするものであります。

 以上、議員各位のご賛同をお願いしまして、討論とします。

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資料

「緊急事態基本法」の早期制定を求める意見書提出に関する請願

請願者 伊丹市南鈴原二-一三二 隅田敏生氏  
紹介議員 加藤光博(新政会) 山内寛(公明党)  
川上八郎(伊丹市民連合)      
 新内竜一郎(躍進会)杉一(蒼翠会) 
相崎佐和子(無所属)         

請願の要点
  今回の東日本大震災や原発事故において、国の取り組みには甘さを感じる。更に言えばわが国の憲法は平時を想定した文面になっており、外部からの武力攻撃、 テロや大規模自然災害を想定した「非常事態条項」が明記されていない。そこで2004年に自・公・民三党で合意した「緊急事態基本法」を早急に制定するよ う要望する意見書を提出頂きたい。