日本共産党伊丹市議会議員団は、6月30日、12回目となる新型コロナウイルス感染症に関する市長への要望書を提出しました。
今回は、6月議会を踏まえて、PCR検査体制の強化や学校再開後の教育のあり方、コロナ感染防止をしながらの避難所のあり方等、総合的な要望書です。
皆さんのご要望をお寄せください。
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2020年6月30日
伊丹市長 藤原保幸 様
日本共産党伊丹市議会議員団
団長 上原 秀樹
議員 久村真知子
新型コロナウイルス感染対策に関する要望書
新型コロナウイルス感染から市民のいのちとくらしを守るためにご奮闘されていることに敬意を表します。
さて、兵庫県においては緊急事態宣言が5月21日に解除され、伊丹市においても学校が再開されるとともに、公共施設の利用も段階的に使用が可能となっています。街中にも徐々に活気が戻ってきています。
この間、市民と企業・事業者は長い間の自粛を余儀なくされながらも、市民らはこれに協力して来られました。新型コロナ感染対策では、国・県による対策にとどまらず、伊丹市はいち早く特別給付金を支給するとともに、市独自に中小企業・事業者への家賃補助制度や上下水道基本料金の免除、デリバリー・テイクアウト支援、学校と福祉施設への消毒液・マスクの配布、広報伊丹による特集号発行などさ、様々な取り組みを進めてこられました。
これから、社会・経済活動が再開・活発化していく中では、感染防止をしながら、段階的に進めていかなければなりません。感染拡大を抑止するための医療と検査体制を抜本的に強化して、安心して経済・社会活動の再開に取り組めるようにすること、「自粛と一体の補償を」の立場で、大打撃を受けているくらしと営業を支えることと一体に進めていくことを強く求めます。
以下、具体的に要望します。
1.感染流行の「第2波」に備え、医療と検査体制を抜本的に強化するために
1)積極的な検査体制に転換し、感染拡大を抑止すること
感染者を早期に発見し、症状に応じた医療と隔離を行うため、積極的な検査体制に転換し、経済・社会活動再開のもとでの感染拡大を抑止すること。そのために、兵庫県が設置しようとしている「地域外来・検査センター」とともに「発熱外来」を伊丹市内に設置することを求めます。その上で次のことを求めます。
① 感染が疑われる人――ごく軽症者を含む有症者とすべての濃厚接触者を速やかに検査する体制をつくること。
② 医療、介護・福祉従業者と入院患者・入所者への検査を積極的に行うこと。
③ 感染の広がりを把握する抗体検査を広く行うこと。
2)医療崩壊を起こさせないために財政支援を強化すること
医療崩壊を起こさせないために、今の時期に「第2波」に備えた医療体制を確立しなければなりません。その大きな障害となっているのが医療機関の経営危機です。国の2次補正予算で、コロナ対応の医療機関に1.2兆円規模の財政支援を行うこととしていますが、速やかに現場に届けなければなりません。国に対して、非コロナ医療機関、地域医療の経営危機に対する財政支援も含めて医療、介護・福祉施設への財政支援を抜本的に強化することを要望することを求めます。また、コロナウイルス感染対策で、改めて公立・公的病院の重要な役割が認識されました。伊丹市における病院の統合再編による新病院の機能等、今後の新たな感染症対策を講じることが求められます。具体的に次のことを求めます。
① コロナ患者を受け入れた市内医療機関の減収・負担増に対する補償を国に求めること。市立伊丹病院に対しては、伊丹市としても財政支援をすること。
② 地域の通常の医療を担う診療所・病院への減収補填を行うよう国に求めること。
③ 歯科診療所や眼科、耳鼻科など専門診療所が地域で医療を継続できるようにすること。
④ 医療従事者への危険手当支給をはじめ処遇を抜本的に改善すること。マスクなどの医療用防護具や医療用材料を、国の責任を基本として伊丹市としてもで確保できるようにしておくこと。
⑤ 介護事業所・障害者福祉事業所などの減収を補償することを国に求めることとともに、伊丹市としても必要な財政支援等を行うこと。その際、介護報酬の引き上げによって利用者に負担が及ばない措置をとるよう国に求めること。
⑥ 現場の声を聞き、国・県の対策が不十分なところは市独自の対策を講じること。
⑦ 伊丹市の病院統合再編による新病院の基本設計においては、今後の新たな感染対策に対応できる設備を整備すること。また、近畿中央病院の跡地への医療機関の誘致において、回復期機能だけではなく、診療機能とともに病床確保等の感染対策が可能な施設とすること。そのためにも、いずれの医療機関において医師・看護師等医療スタッフを充実すること。
3)保健所の各自治体への設置、国を挙げた感染総合対策を抜本強化すること
この間、エボラ出血熱、エイズ、SARS、MERS、新型コロナウイルスなど毎年のように新興感染症が発見されています。感染症への取り組みの強化は人類的な課題です。
ところが自民党政治のもとで、医療費削減・社会保障費抑制が続けられ、わが国の保健・公衆衛生の体制は、大きく弱体化してしまいました。保健所は、この30年間で約半分に減り、職員定員は7000人も減らされました。地方衛生研究所の予算・人員も、国立感染症研究所の予算・人員も、連続的に削減されました。
感染対策を抜本的に強化するために次のことを求めます。
① 保健所の予算を増やし、人員・体制を緊急に補強するとともに、定員増に踏み出すことを国に求め、各自治体に保健所を設置することを兵庫県に要望すること。
② 地方衛生研究所、国立感染症研究所の予算・体制を抜本的に拡充し、地方衛生研究所の法的位置づけを明確にし、設置基準をつくることを国に求めること。
③ 感染症発生に対応する専門的機関として疾病予防管理センター(日本版CDC)を構築することを国に求めること。
2.新しい自粛要請と一体の補償を行い、急いで必要な支援を現場に届けるために
“自粛と一体の補償を”という、大きな国民の声が政治を動かし、一律10万円給付、雇用調整助成金の上限額引き上げ、家賃支援などで一連の前進がかちとられましたが、なお改善すべき問題点が残されています。最大の問題は、支援が現場に届くのが決定的に遅く、失業や倒産・廃業が増え続けていることです。
大きなダメージを受けている中小企業、個人事業主、フリーランスで働く人たちに、新しい自粛要請による“経営難”が加わります。緊急事態宣言の解除や休業要請の「解除・緩和」を理由に、必要な支援を1回限りにしたり、打ち切ったりすることは許されません。
1)雇用調整助成金、持続化給付金、兵庫県休業要請事業者経営継続支援事業、家賃支援など、必要な支援を迅速かつ確実に届けること。
緊急事態宣言による「休業・自粛要請」に応えた事業者への助成や給付が、2カ月に及ぶ緊急事態宣言が解除された段階になっても、多くの人に届いていません。
国においては、5月末現在、雇用調整助成金の相談件数は50万件ですが、助成金が支給されたのは5万件です。休業者は600万人に上りますが、助成金が支給されたのは、数十万人程度にすぎないと推定されます。持続化給付金は、150万件の申請に対して支給は100万件です。しかし、支給まで3週間以上かかった例や「書類不備」を理由に保留になっているものが多数あります。新たに家賃補助制度がつくられましたが、対象は5月以降、「1カ月で5割売り上げ減」か「連続した3カ月で売り上げ3割減」です。3月以来のコロナ危機で苦しんできた多くの事業者を切り捨てる不十分なものです。しかも支給開始は早くても7~8月とされています。兵庫県の休業要請事業者経営継続支援事業でも、申請18,000件のうち給付されたのは約3,200件に過ぎず、手続きの複雑さが懸念となっています。
これらのことから、次のことを求めます。
① 労働者が休業補償を国に直接請求できる制度は、緊急措置として、速やかに支給できるようにすること。雇用保険未加入の登録型派遣やフリーランスで働く人たちに休業補償が確実に行われるようにすることを国に要望すること。
② 持続化給付金の支給遅れをただちに改善すること。申請を簡易にし、窓口での相談体制を強化し、1回限りにせず、新しい自粛要請と一体で持続化給付金を持続化すること。「雑所得」などを理由にフリーランスを除外した支給要件はようやく改善されましたが速やかな支給が必要です。これらのことを国に強く要望すること。
③ 兵庫県の休業要請事業者経営継続支援事業の手続きを簡素化し、速やかに給付できるように要望すること。
④ 国による家賃補助制度は、「5月以降」ではなく、「3月以降1カ月でも売り上げが3割減少」した事業者を対象にするように改善を求めること。同時に市独自の家賃補助制度の拡充・継続等の対策をとること。
⑤ 農業者への持続化給付金や経営安定交付金の拡充など、事業継続を支援すること。
⑥ 国・県だけではなく伊丹市も文化、芸能、スポーツ、イベントへの補償を行うこと。政府は500億円規模の支援を決めましたが、自粛要請による3300億円の損失からみれば不十分です。関係者の要望に応え、国が数千億円規模の拠出をして文化芸術復興基金を創設することを国に求めること。
⑦ 上下水道基本料金の免除、デリバリー・テイクアウト支援等は、「新しい自粛要請」の中で今後も必要とされる対策であり、継続すること。上下水道基本料金の免除においては、厳しい経営状況にある事業者への免除対象を拡充すること。
⑧ 国民健康保険における傷病手当の支給において、白色申告の事業者の家族専従者も対象とするとともに、新型コロナで働けなくなった事業主にも対象を広げること、もしくは見舞金を支給すること。
2)子どもと教育、学生など、必要な支援が届かない分野をなくすために
第2次補正予算案でも、支援対象から外されたり、対象が狭いなど、必要な支援が届かない分野がすくなくありません。よって次のことを求めます。
① 長期の休校による、学習の遅れと格差の拡大、心身のストレスは大きな問題です。手厚く柔軟な教育と感染症対策をすすめるうえで、教職員を思い切って増やして、20人程度の授業ができるように、小中高校に教員の10万人の増員と、養護教員をはじめ教職員・学習指導員などの十数万人の増員をはかることを国に求めること。同時に国の2次補正での学習指導員やスクール・サポート・スタッフの配置に加え、伊丹市独自に加配をすること。
② ことば蔵における電子図書を充実すること。
③ スポットクーラーの設置等、体育館における熱中症対策を講じること。
④ 学生の1割にしか届かない支援を改め、学費半減など経済的支援を抜本的に強化することを国に求めること。伊丹市独自の学生支援策を講じること。
⑤ 保育・学童保育、放課後デイ、幼稚園、児童養護施設、乳児院など、子どもに関わる施設は「3密」を避けることが困難です。感染対策をすすめながら、子どもたちの心身のケアと成長を支えるためには職員の加配が必要です。国に職員の加配を求めるとともに、処遇の改善を国と伊丹市の責任で行うこと。
⑥ 雇用保険未加入などで失業給付などから除外されている人への支援と給付金、ネットカフェ難民などへの住まいの確保、外国人労働者への支援など、生活困窮者を緊急に支援ができるように、国と自治体の連携を強め、地方創生臨時交付金を生活困窮者支援に活用すること。緊急小口融資の返済猶予・免除を拡充すること。児童虐待やDVへの相談体制を強化し、被害者の生活支援を行うこと。
3)消費税を5%に減税することとともに、小規模な事業者の支援策として、免税事業者の売り上げ基準を年間1000万円から3000万円に戻すことを国に求めること。
3.コロナウイルス感染に留意した人間らしい避難所環境の整備を
梅雨入りする中で、地球温暖化の影響による大雨・豪雨被害への備えが問われています。また、台風の到来シーズンも近づき、さらに地震災害はいつ起こってもおかしくありません。
新型コロナウイルス感染が収束しない中で、「3密」(密閉、密集、密接)状態といわれるこれまでの避難所に、国民の不安が高まっています。コロナのもとで、避難所や避難時の生活環境を改善することは、国民の健康や人権を守るために重要な課題です。
政府はこの間、コロナ下の災害時における避難所での対応などについての「通知」、「連絡」の文書、「Q&A」を自治体に向けて相次いで出しました。そこでは、コロナ感染を防ぐため「避難者の健康状態の確認」「十分な換気の実施、スペースの確保」「発熱、咳(せき)等の症状が出た者のための専用スペースの確保」「必要な物資資材の供給」などを明示しました。さらにホテルや旅館の活用も含めた「可能な限り多くの避難所の開設」「親戚や友人の家等への避難の検討」「自宅療養者等の避難の検討」などの他、必要経費に対する国の支援策も記載されています。これまでの一連の災害の教訓を踏まえて、政府は、避難所におけるプライバシーの確保、防犯、温かく栄養バランスのとれた食事、衛生および暑さ対策をはじめ、被災者の生活環境の向上のための指針も示しています。
これらのことから以下の要望をします。
① 国にいま問われているのは、文書や指針を出して、後は自治体任せにするのではなく、提示した改善策を着実に実現するために政府が責任を持つことです。自治体が地域の実情に応じてとる対策に、政府が責任をもって財源保障をすることを国に求めること。
② 避難所となる学校体育館に空調設備を導入すること。学校体育館以外の避難所においても、感染防止対策を講じること。
③ 伊丹市として、直ちにこれら国の「通知」等を参考に、「人間らしい避難環境の整備」のための計画を作成し、市民に周知すること。その際、「幸福追求権」「生存権」「ジェンダー平等」の保障をはじめとした憲法の理念にもとづく避難対策を、国の責任で進めることを求めるとともに、伊丹市でもこの憲法の理念に基づく計画とすること。
④ コロナ感染が続く中で発生する豪雨・地震などの災害は「複合災害」であり、そこでは、地域のコミュニティーが果たす役割を改めて重視する必要があります。安全な避難場所の確認、備蓄・炊き出しや物資などの援助体制を生活圏の小さい単位で相談し、連絡網や役割分担、手順を検討・点検しておくことが求められます。
これら自治会単位、小学校区単位での災害対策に対して、伊丹市としても必要な支援を行うこと。また、避難所以外の被災者に、行政の情報や支援物資が確実に届くようにしておくこと。