伊丹市の公立幼稚園・保育所統廃合に関する1月臨時議会について

伊丹市の公立幼稚園・保育所統廃合に関する1月臨時議会について

日本共産党伊丹議員団

 伊丹市は、一小学校区に一つの公立幼稚園が存続するという近隣ではまれな自治体です。今まで、公立幼稚園の園児数が減少する中、伊丹市教育委員会は2度にわたって公立幼稚園の統廃合の答申を出してきました。しかし、一定の園児数が確保できていることと市民の運動もあり統廃合計画は進めることができていませんでした。

 2014年、3度目の学校教育審議会で、神津を除く16園を10園程度に再編するとの答申が出されました。党議員団としては、公立幼稚園で3年保育と預かり保育を実現すれば一校区一園制は存続することができると主張し、市民団体とともに運動をしてきました。ところが、2年間の当局による市民講座等での議論がなされたのち、2017年8月、幼児教育推進計画案を発表し、公立幼稚園16園の内11園を、公立保育所7園を3園閉園し、幼保連携型認定こども園3園に再編するという大規模な統廃合計画が出されました。この計画は、市長が選挙で公約した幼児教育の段階的無償化の財源を確保するとともに公共施設再配置とも一体のものです。そして、計画発表後わずか4か月の12月議会に関連議案を提出するという急ぎぶりです。

 党議員団は早速議員団ニュースを発行し、この計画の全容と党議員団の考え、ウェブアンケートをつけて5万枚の全戸配布で知らせました。当局が計画案を十分市民に知らせない中、このニュースで計画を初めて知ったという市民が立ち上がりました。中でも保護者達が「伊丹市の子どもの未来を考える会」をつくって若い人たちの運動が始まりました。当局による73回の説明会に1841人が参加しましたが、納得できる説明はなく、「考える会」の人たちによって、「12月議会で決めないこと」「市民参加で見直しをしてほしい」「更なる丁寧な説明を求める」の3項目の署名運動が始まり、瞬く間に署名は18000を超えて市長に要望書を提出。最終的には23000を超えました。また、党議員団によるアンケートも290通集まり、そのすべての意見と計画に大半が反対している結果を市長に提出しました。その結果、市長は12月議会への関連議案提出を断念、1月臨時議会を招集するといわざるを得ませんでした。

 この間、毎日のように子どもを連れたお母さんたちが議員と懇談する光景が生まれました。そして「考える会」から12月議会に、「市民参加で見直しをしてほしい」「更なる丁寧な説明を求める」の2項目の請願書が出され、賛成者多数で可決されました。

 12月25日には、当局が計画の修正を提案。閉園予定の一つの幼稚園を分園として存続すること、無償化は4月から4,5歳児幼稚園・保育所等全額無償化にする、3歳児保育は預かり保育とともに存続する園すべてで実現するというもの。この修正はそれまでの運動の一定の成果ともいえるものです。

 1月臨時議会が17日に召集され、統廃合の議案が提出されました。党議員団は、幼稚園児が一けた台のところがあり、一定の再編をやむなしとして認定こども園の新設は認めるが、統廃合は白紙に戻し、保護者や地域住民と十分協議をすることを求めるという点で他の2会派と一致し、修正案を提出。文教福祉常任委員会で可決されました。2月9日の最終日の本会議でもこの修正案は可決されたことで、市長はこの修正案に対し、財源の見通しのないままに無償化等の推進計画は実行できないなどとの理由をつけて、「再議」に付しました。「再議」とは、市長も議員もともに公選による市民の代表として対等の立場であることから、議会による修正に対して「拒否権」が与えられており、これを行使することを言います。「再議」に付された場合は3分の2以上の賛成がなければ可決されないことから、この修正案は否決されてしまい、元の市長提案の原案を再び議論することになりました。

 再度開催された委員会では、先ほどの修正案に反対し、原案が最もふさわしいとしてきた公明党が再修正案を提出。その中身は、閉園の予定だった公立「こばと保育所」を近隣の公園内に新築移転して存続させるとともに、2020年と2022年に再編するとしていた施行日を削除して規則に委ねるというものです。党議員団としては、「考える会」や「市民の会」とも相談し、公立保育所を1か所存続させるとともに、施行期日が外されることで「市民参加による見直しに」に道を開くものとして賛成することにし、共同してきた2会派と相談して「付帯決議」を提案することにしました。その内容は「統廃合計画に固執することなく市長も含めて保護者・地域住民と協議すること」「施行日は、関係者の意見を聞き、保育・幼児教育のニーズを踏まえたうえで決定すること」などの8項目です。結果、再修正案は委員会・本会議で全会一致、付帯決議は委員会で賛成者多数で可決されました。また、この議会に出された7本の請願-保護者・地域住民と十分話し合いを行うこと等もすべて賛成者多数で可決されました。

 この間の教訓として、議員団のニュース発行によって市民に計画の問題点を知らせたことで、「考える会」の結成等市民運動を巻き起こす契機をつくったこと。また、若い保護者を中心とした運動が議会と市長を動かし、当初の計画を一定変更させ、このことで市民参加による統廃合計画の見直しに道を開いたことです。しかし、このことを実行させる運動と見直しの協議はこれからであり、伊丹市に付帯決議の誠実な実行を求め、地域の話し合いに積極的に参加することが必要です。