2017年12月議会 上原ひでき:一般質問 介護保険 道徳の教科化

2017年12月議会 一般質問

日本共産党議員団 上原ひでき

1.介護保険について(第7期計画に関して)

 今年5月26日に参議院本会議において可決された「改正」介護保険法によって、伊丹の介護保険事業計画、介護を受ける市民はどうなるのか。

 この「改正」介護保険法は、安倍政権が2015年に打ち出した「経済・財政一体改革」に基づいて検討・実施されたもので、2025年を目途に医療・介護提供体制の再編・縮小、負担強化と公的給付の削減を強力に推進することを目的にしたものの一環。そして「経済・財政一体改革」によって社会保障費を徹底的に削減するとして、2013年度から2015年度の3年間で毎年8,000億円から1兆円増大する社会保障費を3年間の合計1兆5,000億円まで削減し、2016年以降の3年間でも社会保障増加分を毎年5,000億円まで圧縮するとした。

 以上の流れから、今回の「改正」介護保険法には、二つの柱があるとされている。

○その二つの柱に沿って具体的な問題で質問

1)「給付と負担の見直し」では、すでに今年8月から実施されている高額介護サービス費の「一般区分」の負担上限を現行の37,200円から44,400円に引き上げたこととともに、利用料3割負担が盛り込まれた。

◎ 「現役並み所得」者の利用料3割負担化の問題では、年間収入単身340万円以上の場合、利用料を3割に引き上げることになる。収入に応じた負担の形態はとっているが、対象となった利用者が果たして3割負担に耐えられるのかどうか。介護保険の利用料だけではなく、今後予定される医療の窓口負担や保険料の値上げ、年金の切り下げなどを含め家計への影響をどう考えるのか。

2)「地域包括ケアシステムの深化・推進」に関して

 地域包括ケアとは、「要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制」と説明されているが、国が実際に進めているのは、医療費・介護給付費削減の受け皿づくりとしての地域包括ケアになっているのではないかと思われる。次の点で具体的に伺う。

◎ 医療・介護供給体制の再編で、医療病床の削減による介護施設や在宅医療への流れを推進する中で、「介護医療院」が創設されることになった。これは介護療養病床全廃の受け皿として想定されるものだが、伊丹市にはその対象病床はないことから関係ないと思われるが、医療療養病床からの転換を自治体として規制できないことから、他市では介護保険財政に影響が出るのではないかとの懸念が広がっている。

 一方、医療・介護供給体制の再編によって、国は介護とともに医療の供給体制を在宅医療へと導いている。「住み慣れた地域で」という要望はあるが、供給体制がなければ医療難民を生み出しかねない。どのような体制になろうとしているのか。

◎ 国は、「自立支援・重度化防止」に向けて、国が示す評価基準に基づいて市町村が目標を設定し、その「成果」に応じて財政支援(財政的インセンティブの付与)を行うとされている。その具体的な評価指標として要介護認定率の引き下げなどが入る可能性があるのではないか。このことによる影響は要支援者・要介護者のサービス切り捨てにつながるのではないかと危惧するがどう考えるか。

◎ 「共生型サービス」の創設では、介護保険、障害福祉いずれかの指定を受けた事業所が、他方の制度における指定を受けることが容易になるとされ、対象となるサービスとして、訪問介護、通所介護、短期入所などが例示されている。高齢者・障害者に対するサービスでは重なる部分があり、行政の縦割りの是正にはつながる面はあるが、人員体制や介護・障害報酬によっては、サービスの専門性・質が担保され、高齢者・障害者の願いに適う事業になるのか危惧するところだが、どうお考えか。

◎ 「我が事・丸ごと・地域共生社会」が「我が事・丸投げ・地域強制社会」にならないように。…国は、制度・分野ごとの縦割りや「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人一人のくらしと生きがい、地域をともにつくっていく社会と定義している。この考え方が次期の介護保険計画に現れているのではないか。このことによって、介護保険計画の地域福祉計画化が進んでいるように思う。問題は地域住民の助け合いなどを行政機関の代替として地域福祉の公的システムに組み込むことにある。急激な制度改革による「制度の狭間」の問題に、地域住民等が自主的に地域福祉活動をすることは評価すべきことだが、「制度の狭間」を埋めるのは行政の公的責任で行うべきもの。見解を伺う。

3)全体的な問題として

◎ 介護離職は減少するのか…伊丹市は、第7期計画作成にあたってこの問題でのアンケートを実施されている。この結果を踏まえて、介護離職を減少することができるとお考えなのか伺う。

◎ 介護保険基金約10億円をどうするのか…第6期計画策定時に約11億円の準備基金があり、その半額を取り崩して保険料を軽減するとされた。結果としてほとんど準備基金は減少せず、10億円を残している。その原因をどう分析されているのか伺う。

 また、7期計画でこの10億円はどうされようとしているのか。本来計画遂行に必要とされた保険料を、何らかの理由によって余剰が生じた場合、サービス充実や保険料軽減にそのほとんどを使うべきものと考えるが。

2.来年から始まる道徳の教科化について

 来年から小学校における道徳の教科化が始まる。今年6月議会で、教育長は教育基本方針のなかで「道徳教育については、子どもたちの豊かな情操や規範意識、生命の尊重、自尊感情、思いやり等の道徳性を養うため、道徳教育推進事業における研究の成果を踏まえ、子どもたちが議論する授業を推進してまいります。また、授業公開や授業研究会を実施し、子供たちの成長を認め、励ます評価の研究を進めてまいります」と述べられた。

 私は、一昨年3月の代表質問で道徳の教科化について質問し、子どもの道徳が評価の対象とされることで、子どもの価値を評価することの問題とともに、検定教科書導入の問題点について質すとともに、子どもの権利条約を中心に、子どもの尊厳と権利を大切にすることを求めた。

 いよいよ道徳の教科化が始まることから、次の点を伺う。

◎ 伊丹市教育委員会が採択した教科書は、「廣済堂あかつき」の教科書となった。伊丹市教育委員会として、今までの道徳教育推進事業における成果を生かすことができるのか。また、この教科書にはどんな特徴があるのか、伺う。

◎ 考え方の押し付けではなく、児童が話し合い、自ら考えることができるようにすること必要…道徳は人間が生きていくうえで重要な働きをするもの。道徳は人間らしさや人間としての価値を作るものであることから、強制やわざとらしさがあってはならない。それがあるならもっとも非道徳的な教育になる。したがって、本人が自主的に考え判断できるように環境を整えることが重要と思う。道徳教育のあり方に関する見解を伺う。

◎ 小学校から中学校、高等学校へとつなぐ「主権者教育」のありかた…道徳教育には4つの項目があり、その一つが「主として社会や集団との関わりに関すること」があげられている。どの学年にも国、郷土との関わりが明記されており、身近な伊丹市にかかわることから兵庫県も国の問題でも一緒に考えることができる。子どもたちは結構敏感に政治のことに興味を抱いており、例えばこの前の総選挙や核兵器禁止条約、「モリ・カケ問題」など、発達段階に応じて新聞等を利用して情報提供し、話し合う機会を設けることも可能。見解を問う。

◎ 評価の基準はどうするのか…教育長の答弁で「励ます評価の研究を進め」るとされているが、どのような基準で評価されるのか伺う。

(2回目)

1.介護保険について(第7期計画に関して)

 そもそも今回の「改正」介護保険法は、参議院委員会での審議打ち切りと本会議における異例の中間報告という形での採決強行で決まったこと。

○利用料3割負担について

 2015年8月から実施された2割負担。国会審議の中で、この負担増が家族の生活を脅かしている実態が示され、国会でも問題となった。参考人の陳述でも、認知症の人と家族の会から、5万から10万円の負担増となり、食事を削るしかない、介護を続ける気力さえ失われると述べられている。この2割負担の影響の検証がないままの3割負担の強行がされたという問題があるということを指摘しておく。

○自立支援・重度化防止へのインセンティブについて

 サービスの切り捨てにつながるものではないとされているが、もともとの動機は財政支出削減にある。その指標として、介護するためにかかる時間と要介護認定の変化をアウトプット指標として設定するものとされている。詳細は決まっていないが、引き続き具体的な議論はしていきたい。

◎「共生型サービス」の創設について

 サービスの専門性・質の担保…国は、高齢障害者が介護保険に移行しても同じ事業所やヘルパーが利用できるようにするために導入するととともに人材確保のためと説明。しかし、「介護保険優先原則」により、全国で利用料負担やサービスの打ち切り・縮小など深刻な問題が生じており、「共生サービス」の創設で解消できないのではないか。例えば、少なくない障害者が介護保険では「要支援」と認定され、総合事業の対象となることで、無資格者のヘルパーが担当することにもなりかねない。さらに、介護保険では、現在国が「生活援助」サービスに対して回数制限を設定しようとしており、大幅なサービス後退につながる可能性も出ている。

 「共生型サービス」は、介護保険優先を貫き、65歳以上の障害者の介護保険利用をより徹底することにならないか危惧するところ。特に重度障害者に対しては、一人ひとりに応じた支援が必要になっているが、今までの対応はどのようにされており、今後どのような対応に違いが出るのか伺う。

2.来年から始まる道徳の教科化について

○「道徳教育のめざすもの」に対しての教育長答弁

 答弁の通り、「考え議論する道徳」ということ。他の教科のように正解が決まらない分、考えていく面白さがある分野。それだけ授業者の力量も試されることになるが、児童と一緒に成長するという立場で臨んだらどうかと思う。

○廣済堂あかつきの教科書、ノートと評価について

 道徳の教科書として採択した理由が述べられた。その中で、別冊ノートに関して、自由に記述する欄が多く取り上げられおり、「書く」ことによってより深く自己を見つめ、自ら考えることができやすい構成となっているとのこと。しかし、「書く」ことに時間がかかる児童にとったら負担になることもあり、物語を読んだり他の児童の感想を聞いたりして自分の心が揺さぶられて自分の考えが変化していく過程で、その気持ちを「書く」ことは私たち大人でも難しい。

 書かれたノートを見ることで、教員からすれば評価しやすいということになるだろうが、一人ひとりの子どもをより丁寧に見ることが必要になると思う。研究していただきたい。