2017年6月議会 上原秀樹:代表質問

2017年6月議会:上原秀樹 代表質問

2017年6月14日
日本共産党議員団 上原秀樹

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1.情勢認識について

1)市長の「ニッポン一億総活躍プラン」に関する認識を問う

 市長は施政方針の中で、昨年6月に打ち出した安倍内閣の「ニッポン一億総活躍プラン」を引き合いに出され、女性や高齢者をはじめ誰もが活躍する全員参加型社会の実現を目指した成長戦略と、その実現を阻むあらゆる壁を取り除く姿勢を強く打ち出したとされています。

 確かに、この「総活躍プラン」にもとづく安倍内閣の「働き方改革」実行計画は、「経済再生」のために「労働生産性と労働参加率の向上」を図ろうとして、「多様な働き方を選択可能にする社会」が必要として、「画一的な労働制度」の「壁」を取り除くとしています。

 しかし、労働基準法をはじめ労働法制は、すべての労働者を保護するためのもので、その意味では「画一的」であるのが当然です。それを「壁」だとして壊し、「多様な働き方」で規制が及ばない働き方が広がれば、長時間労働や非正規雇用がますます増大し、人間らしく働ける土台が壊されてしまいます。非正規雇用の中心は女性や高齢者で、その人たちが活躍できる社会とは到底言えません。

 例えば、安倍首相は「同一労働同一賃金を実現する」と繰り返してきましたが、正規に対する非正規の賃金水準はフランス89.1、スウェーデン83.1に対して日本は56.6と、諸外国と比べて極端に低い水準にとどまっています。日本ではその非正規雇用労働者は2000万人を超えています。

 また、最低賃金を「全国加重平均1000円を目指す」としていますが、実際には全国平均823円で、アメリカ1169円、イギリス1105円フランス1240円などと比べても異常に低い水準です。日本の場合、この水準で1800時間働いたとしても年収は128万円から167万円にすぎず、年収200万円以下のワーキングプアの水準で、その人たちは1000万人を超えています。

 その結果、先月18日に内閣府が発表した2017年1~3月期のGDPでも、アベノミクスの結果、貧富の格差が拡大し、国民生活が疲弊し、個人消費をささえる所得が落ち込んでいることが明らかになっています。

 市長はこの現実をどのように認識されているのでしょうか。お考えをお聞きします。

2)市長の安倍首相の改憲発言に対する認識を問う

 安倍首相は、5月3日の憲法施行70周年記念日に、憲法9条に自衛隊を明記する改憲を行い2020年に施行すると、ある改憲を求める団体の集会にビデオメッセージを送りしました。その内容は「9条1項、2項は残し、自衛隊の記述を3項として書き加える」とするものです。しかし、3項を設けて自衛隊とその役割を明記したらどうなるか。この考え方の発案者である日本会議の伊藤哲夫氏が、「自衛隊を明記した3項を加えて2項を空文化すべき」と語っている通り、3項という独立した項目で自衛隊の存在理由が書かれれば、それが独り歩きすることになり、それを根拠に自衛隊の役割が広がって、海外における武力行使が文字通り無制限となります。

 伊丹市の平和都市宣言では「戦争はかけがえのない命を奪い、幸せを奪います」と書かれています。市長はこの立場から、安倍首相の9条改憲発言をどう認識されますか、お聞きします。

3)教育長の教育勅語に対する認識を問う

 学校法人「森友学園」が運営する塚本幼稚園に関して、土地疑惑と合わせて問題となったのが、教育勅語を暗唱させていたことです。映像で流されるその場面を見て唖然としました

 その教育勅語に関しては、明治天皇が「臣民」に対して下した教育原理として1890年に発表されたもので、国民を侵略戦争に動員するうえで大きな役割を果たしたものです。そして戦後の1948年に、衆参両院が教育勅語の排除・失効を決議しましたが、当時の森戸辰夫文部大臣は「教育勅語は明治憲法を思想的背景としており、その基調において新憲法の精神に合致しがたい」と答弁しています。議論の中に、「現代でも通用するような価値観はある」と正当化する稲田防衛大臣のような人がおられますが、親孝行などの12の徳目はすべて「重大事態があれば命を懸けて天皇を守れ」という結論につながっています。また、教育勅語の「夫婦相和し」という言葉の内容は、夫婦仲良くという意味ではなく、勅語発令の翌年に出された解説書によると、知識裁量は夫に及ばない、夫に服従し逆らうな、というのが真相で、憲法の両性の平等の精神に明らかに反します。

 こともあろうにこの教育勅語を、安倍内閣は今年3月、「憲法や教育基本法に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまで否定されることではない」とする答弁書を閣議決定しました。 教育長は、教育勅語に関してどのような認識をお持ちでしょうか。また、安倍内閣のこの閣議決定をどうお考えでしょうか。お聞きします。

2.幼児教育段階的無償化、幼児教育ビジョン策定等について

 市長は施政方針の中の4年間の重点政策で、重点施策の一つ目に幼児教育の段階的無償化による幼児教育の充実をあげられるとともに、公立幼稚園をはじめとする就学前施設を適正な規模や配置に再編し、幼児教育の充実を図るとともに、必要な財源の確保をめざすとされました。

 指摘されている通り、幼児期は人間形成の基礎が培われるきわめて重要な時期です。ノーベル経済学者であるヘックマン教授による研究では、就学前教育がその後の人生に大きな影響を与えることを明らかにし、その中でも重要なのが、IQに代表される認知能力だけではなく、忍耐力、協調性、計画力といった非認知能力も重要であるということです。

 一方、17歳以下の子供の貧困率は16.3%となっており、ある5歳刻みの年齢階級別貧困率の研究では、貧困率が一番高い年齢層は5歳未満の子どもたちであることが明らかにされています。この背景にはその親の世代にあたる20代から30代の貧困率が上昇していることがあり、労働法制が改定されたことによる若年の非正規雇用労働者が増加した2000年代に入ってから顕著となっています。実際ひとり親家庭の貧困率は50%を超えています。家庭の経済格差が、子どもの学力や非認知能力の格差につながり、さらに子どもが大人になってからの経済状態に重要な影響を及ぼすことになります。

 このようなもとで、本来国の政治の責任で貧困をなくし、子どもたち一人一人を大切にし、未来に希望を持ち生きていける社会の仕組みをつくることが必要です。しかし安倍政権のもとでは、子どもの貧困解決につながる社会保障、教育、子育て支援に充てる財源が十分ではありません。また、過労死を産むほどの異常な長時間労働は、子育てを困難にし、子どもの安心の暮らしを奪っています。

 したがって、伊丹市に求められるのは、国がやらないのであれば率先して、幼児期における多様な支援、幼児教育の無償化、子どもたちのサポートを目的とした予算の重点配分を行うということになります。この点でいくつかお伺いします。

1)幼児教育段階的無償化に向けた庁内体制を整備され、(仮称)幼児教育推進条例の制定を検討するとされました。その条例に幼児教育の理念などを定めるとされていますが、その理念とはどういうものをお考えでしょうか。

 また、幼児教育の無償化を行う場合、伊丹市が作成する「伊丹市幼児教育カリキュラム」に同意することを条件とするとされている問題で、育てたい子ども像を定める「カリュキラム」の内容にもよりますが、国による幼稚園指導要領や保育指針がある中で、これ以上の「指針」ともいうべき「カリキュラム」をつくり、同意を得ることは教育の介入にならないかと危惧するものですが、見解をお聞きします。

2)子どもの貧困対策として充実すべきことはなんでしょうか。中でも市長は、子ども医療費対象の拡大を重点施策の二つ目に挙げられていますが、いつからどこまで対象を広げるお考えでしょうか。早期に中学校卒業まで無料化し、思い切って高校卒業までの無料化を検討されてはいかがでしょうか。

3)教育長が教育基本方針の中で、今後の幼児教育のあり方については、学校教育審議会答申の趣旨を踏まえて「基本方針」「実施計画」を策定するとされたことついてです。今まで党議員団は、統廃合ではなく、3年保育と預かり保育を実現すべきであると主張してきましたが、答申では、16園を10園程度に統合する、3年保育は実施することは難しいなどという趣旨で、これに対して市民関係者からは、一校区一園制を残してほしい、3年保育・預かり保育の実現を望むなどとともに、財政的に統廃合はやむを得ないなどの消極的統廃合賛成の意見など、様々な意見が寄せられてきました。

 一方、公立幼稚園の園児数は、答申が出された翌年度から急激に減少し、保育所とともに私立幼稚園の比率が上昇しています。この背景には両親ともに就労する家庭が増えたことともに、公立幼稚園統廃合の答申の影響が大きいことがあります。さらに重要なのは、様々な幼児教育の研究を反映して、幼稚園は3歳児からという希望が多いことがあります。そもそも「子ども子育て支援新制度」の中では3歳児からの幼稚園が前提になっていることや、学校教育審議会で参考とされた「社団法人全国幼児教育研究会」の報告も3歳児からの幼児教育を対象としたものとなっています。

 そこで改めて次の点をお聞きします。

① 公立幼稚園での3歳児保育について、答申では難しいとされたことについてです。先ほども言いましたが、3歳からの幼児教育の重要性をどうお考えなのでしょうか。重要だというなら、公立の幼稚園に通う子どもには3歳からの幼児教育は保障しなくていいのかという疑問が出ます。これだけ幼児教育の重要性が言われている中では、すべての子どもが等しく幼児教育を受けることができるような環境の整備が必要です。これに反して3歳児保育を実施しないならば、いくら統廃合しても公立幼稚園は消えていくことになるのではないでしょうか。

 改めて公立幼稚園の役割を見直し、3年保育と預かり保育を実現したうえで、その後の推移を見据えて検討することが必要かと考えますが、いかがでしょうか。

② 1クラスの人数は20人以上が望ましいとの議論がなされていることについてです。2014年3月議会でも指摘しましたが、この根拠を社団法人全国幼児教育研究会による研究結果に求めておられ、そこでは、教員が望む1学級の幼児数は、3歳児が20人以下、4,5歳児は20人以上とされています。しかし、配布しました参考資料①の通り、その結論に到る研究の中で、「個に応じた援助」と「協同性の援助」のそれぞれの得点の平均値を求めています。それによると、3歳児は11人から20人、4,5歳児は16人から25人の間がそれぞれの特性が拮抗することになっています。これらの特性がどのような形で調和されるのかは、調査においてもかなりの幅があり、調査結果はあくまでも一つの傾向ですが、発達や学びの状況に関しては、おおむね学級の人数がすくないほうが肯定的に捉えていると書かれています。したがって、このことを持って「20人以上が望ましい」ということを統廃合の基準とすることには、無理があるのではないでしょうか。

 当時の答弁では、研究の結果で20人以上が望ましいとの結論が出されているという趣旨しかありませんでした。改めてこの資料で示されている研究結果に関する答弁を求めます。

3.公共施設再配置について

1)市役所本庁舎の建て替えについて

 市役所本庁舎の耐震化対策、建て替えについては、今回の補正予算の提案で、従前の計画を前倒しし、本年度中に基本計画、来年度と再来年度で基本設計・実施設計で、建設工事を3年から4年後、5年後には新庁舎での業務開始とされ、全体で約7年間の前倒しとなります。そこで、次の点をお聞きします。

① 説明資料では、事業の目的を、熊本地震における庁舎等の被害を踏まえ、来庁者及び職員の安全を確保し、災害発生時の庁舎機能の業務継承の重要性を考慮したことにより計画を変更するとされています。 確かに熊本地震による被害には衝撃を受けました。震度7の地震が2回にわたっておこることによる震災です。しかし、伊丹市においては庁舎の耐震化工事か新築かの議論の時、地震による被害も想定して庁舎新築とするとともに計画期間を定めたはずです。地震の規模もいつ起こるのかも確実な想定はできませんが、現時点での想定に基づく計画ではなかったでしょうか。改めて計画変更の理由をお聞きします。

② 財源の問題では、第5次総合計画期間中に基金を積み立てるとされてきましたが、財源の見通しをどうお考えなのでしょうか。また、国において新たに「市町村役場機能緊急保全事業」が設置され、市町村本庁舎の建て替えを対象に、充当率90%、交付税措置対象75%まで、交付税措置率30%の起債発行が可能となりました。「公共施設等適正管理推進事業債」として3500億円が予算化されて、「保全事業」では2017年度の見積もりが300億円、4年間の継続とされています。伊丹市が予定されている庁舎建て替え事業でこの国の事業が適用可能とお考えなのかどうか、お聞きします。

③ 説明資料では、「PFI導入可能性に係る検討」があげられています。PFIについてはこれまでも問題点を指摘してきました。全国的に見れば、民間事業者が参入しても見込み通りの利益が見込まれず事業者が撤退した福岡市の「タソラ福岡」、事業者が経営破たんして市が40億円もの支出をして施設を買い戻した北九州市のひびきコンテナターミナル、さらに事業者は収益を上げるために参入するため、経費の面で安くならないこともしばしばあり、滋賀県野洲市では市立野洲小学校と野洲幼稚園についてPFI事業として増改築と清掃などの施設の維持管理をしていましたが、通常の10倍の経費がかかり委託契約が解除されています。

 このようにPFIには、事業者破たんのリスクがあり、事故等の負担の問題が生じ、経費削減は必ずしも実現しないなどの問題があります。いずれにしても、民間の大型事業者の利益を促進するもので、公共施設やサービスについて、質が高くて経費も安い、ということはありません。

 市庁舎新築等公共施設にはPFI事業は適さないと考えますが、いかがでしょうか、見解をお聞きします。

2)中央公民館、女性・児童センターの機能移転について

 公共施設再配置計画において、短期計画に位置つづけられている中央公民館、女性児童センターについてです。これらいずれの施設も現在地での建て替えはせず、機能移転をすることとされています。短期計画とは2020年(平成32年)までの期間内とされており、計画の周知と建て替えか機能移転かの議論を市民・利用者で行う時期ではないでしょうか。

① 中央公民館に関しては、以前、社会教育施設として教育委員会の職務権限において管理運営すること、現地の建て替えも含めて検討すべきではないかと質しました。公民館は、市民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増大に応えるとともに、伊丹市のまちづくりに大きな貢献をしている公共施設であり、指定管理者制度等民間委託にはなじみませんし、一般のまちづくり施設とは異なった役割を担っています。したがって職員も一定の数の配置が必要であり、他の施設への機能移転には困難な点があると思います。どのような検討をされているのでしょうか。また、市民・利用者との話し合いの場では現在地での建て替えも含めた検討が必要ではないでしょうか。お聞きします。

② 女性・児童センターに関しては、働く女性をはじめすべての女性の福祉の増進並びに児童の健全な育成を図ることを目的に、働く女性の家と女性交流サロン、児童会館、グランド、児童プールの施設が置かれています。これらの施設の機能移転となると、移転先は容易ではありません。いずれかの施設の規模縮小が問題となるとともに、男女共同参画センターとしての充実も図られなければならないことにもなります。ここでも市民と利用者等の議論が始まらなければならないと思いますが、どうお考えでしょうか、お聞きします。

3)市営住宅の建て替えについて

 市営住宅に関しては、住宅施策に係る最上位計画である「伊丹市住生活基本計画」に基づき、建て替えは行わず、築60年をめどに維持保全・用途廃止の方針を定め、民間活力を活用した市営住宅の供給に取り組むとされています。しかし、「住まいは人権」と言われる通り、市営住宅は、公営住宅法で「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」とされていることから、伊丹市の責任で供給するべきであり、需要と供給によって建設される民間住宅にゆだねるべきではありません。この立場から以下お聞きします。

① 「伊丹市住生活基本計画」は今年度見直しがされることになっており、伊丹市住生活基本計画審議会の設置と委員が公募されました。この計画の見直しによっても、市営住宅の建て替えは行わないということは既成の事実となっているのでしょうか。今回、改めて市民や専門家による審議会の中で議論がなされ、仮に市営住宅は建て替えるべきとされた場合、当然「公共施設再配置計画」もその最上位計画に沿った見直しがされるのでしょうか。お聞きします。

② 現在の住生活基本計画で、市営住宅として民間住宅を借り上げる場合、その条件としての「公営住宅整備基準に適合し、かつエレベーターの設置がされている新築または既存の住宅」はどれくらい存在すると見積もられているのでしょうか。築60年を迎える住宅は5年後から大量に出現します。その時の住宅供給数は充足するという確信をお持ちなのでしょうか。いくら空き住宅が多く存在するといっても、条件に適合した住宅はそれほど存在しないと思えるのですが、いかがでしょうか、お聞きします。

③ 熊本地震による被害は、庁舎だけに限らず、市営住宅の居住されている市民にも大きな衝撃でした。市庁舎は耐震化のために新築するが、市営住宅は耐震化しないということで、市民、特に市営住宅入居者は納得できるのでしょうか。県営伊丹中野団地が用途廃止とされ、その土地の所有が伊丹市となっています。その用途は決まっているのでしょうか。耐震化推進のために市営住宅の建て替えとして使用することは考えられないでしょうか。お聞きします。

4.部落差別の解消の推進に関する法律について

 「部落差別の解消の推進に関する法律」が昨年12月に成立しました。この法律はこれまで法制上使われたことのない「部落差別」という用語を冠するとともに、これまでの時限立法ではなく初めての恒久法とされています。第1条では、「現在もなお部落差別が存在する」、「部落差別は許されない」、「解消することが重要な課題」とし、法案提案者は「理念法」と繰り返していましたが、具体的に国や自治体の責務として相談体制の充実や教育・啓発、実態調査の実施を明記しました。しかし、「部落差別」の定義はなく、「何が部落差別に当たるのかの判断をだれがやり、どうするのか」も不明確のままです。人を出自や系譜、住んでいる地域によって差別してはならないのは当然でのことです。憲法13条は「すべて国民は個人として尊重される」と基本原理を宣言し、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と、法の下の平等を保障しています。

 ところが、この新しい法律をつくることによって、様々な「同和の特別扱い」が復活、固定化され、市民の言動を差別と認定し規制する圧力、根拠とされかねません。それは法によって新たな障壁を作り出すことであり、乱用されれば、行政をゆがめ、内心の自由・表現の自由が侵害されるのではないかという危惧を持つものです。この立場から以下質問をします。

1)市長の現段階での部落問題の到達点に対する認識について

 日本国憲法のもと、基本的人権と民主主義の前進を図る国民の不断の努力を背景に、1969年以来33年間にわたって、国では約16兆円、伊丹市でも約230億円が投じられ、1965年の同対審答申が指摘した「差別と貧困の悪循環」は大きく改善しました。2002年の特別対策終了から15年が経過しようとする今日、「社会問題としての部落問題」は基本的に解決したといえる到達点にあるというべきです。結婚も部落内外の婚姻が主流となっています。インターネットによる差別的言動も、法務省の調査・統計では、同和問題に関する申し立ては0件から7件と数件でしかありません。今や問題があれば市民相互で解決に取り組める時代になったとみるべきではないでしょうか。当局の現段階でのこの問題の到達点についての見解をお聞きします。

2)1986年の地対協意見具申について、その中で指摘された「新たな差別意識を生み出す新しい要因」に対する認識についてです。

 資料③に関係する部分の全文を抜粋して配布しています。それは、①「民間団体の威圧的な態度に押し切られて」、「行政の主体性の欠如」が「国民の強い批判…を招来していること、②「同和関係者を過度に優遇するような施策の実施は、むしろ同和関係者の自立、向上を阻害する」、③「何らかの利権を得るため」の「えせ同和行為」は「新たな差別意識を産む要因」となっている、④「民間団体の行き過ぎた言動が、…自由な意見交換を阻害している大きな要因」になり、それが「差別意識の解消の促進を妨げている決定的な要因となっている」ということです。

 当局は、伊丹市における同和特別対策解消にご尽力されたわけですから、聞くに及ばないかもしれませんが、改めてその認識をお聞きします。

 また、3月議会のこの法律に対する市長の答弁では、この法律を受けての新たな事業として、法律の成立を広く市民に伝える施策、「部落差別の実態に係る調査」への協力、学校教育等での人権教育の充実と受け止めてよろしいでしょうか。その際、教育・啓発は、参考資料②の高砂市のように、長年の市民と行政の努力で、基本的には社会問題としての部落問題は解決していること、今や問題があれば市民相互で解決に取り組める時代になったという展望を市民に伝えることを基本とすべきと考えますが、当局の見解をお聞きします。

3)成立した「部落差別の解消の推進に関する法律」において全会一致で可決された付帯決議についてです。

 この参議院法務委員会の付帯決議全文も資料③で配布しています。この付帯決議では、①「過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講ずることも併せて、総合的に施策を実施すること」、②「教育及び啓発を実施するに当たっては、…新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法に配慮すること」、③「部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、…新たな差別を生むことがないように留意しつつ、…慎重に検討すること」とされています。この付帯決議は、本法律にもとづく教育・啓発や調査、対策が新たな差別を生む危険性を認識して採択されたものです。当局には、この付帯決議を踏まえた対応が求められますが、どう対応されるのでしょうか、お聞きします。

5.国民健康保険の県単位化について

 国民健康保険事業では、来年度から、都道府県が国保の「保険者」になり、市町村の国保行政を統括・監督する仕組みが導入されます。新制度では、兵庫県が、国保事業に必要な費用を伊丹市等市町に「納付金」として割り当て、伊丹市が市民に保険税賦課・徴収し、集めた保険税を兵庫県に「納付」する、そして「納付金」の負担額を提示する際、同時に、市町ごとに「標準保険料率」を公表することになっています。伊丹市はこの「標準保険料率」を「参考」にして国保税を決めることになります。

 全国的に「納付金」「標準保険料率」の仮算定が公表されたところでは、保険料の値上げの懸念が広がっています。兵庫県ではいまだに公表されていませんが、伊丹市でも国保税の負担が増えるのではないかと危惧することから、次の点をお聞きします。

1)兵庫県はいつ「納付金」「標準保険料率」を公表されるのでしょうか。遅れている原因はどこにあるのでしょうか。市民に公表したうえで、少なくとも9月議会で議論できるように早めに公表することを兵庫県に求めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

2)公表された「納付金」によって、現在の国保税が増税となる場合、一般会計からの法定外繰り入れを増額することを考えるべきです。国は法定外繰り入れを否定していません。阪神間7市の中でみると、2015年度決算値で、最も高いのが宝塚市で被保険者一人当たり21,501円、伊丹市の場合は一人当たり2,536円と最も低い金額となっています。同時に、新しい制度によって市町の負担が増加しないように、国と県の責任において対策をとることを求めていくべきと思います。見解をお聞きします。

3)減免・軽減制度の拡充を行うことです。特に低所得者と子育て世帯に対する軽減措置は急務です。子育て世帯の負担を軽減するため、子どもに係る均等割り保険料を軽減する支援策を創設することを国と県に求め、伊丹市独自の軽減策を行うこと。さらに低所得者に対する軽減策、ひとり親世帯への減免制度を創設することを求めますが、見解をお聞きします。

6.介護保険事業について

 本年度、「新総合事業」がスタートし、現在要支援1・2の認定を受けている人の訪問型、通所サービスはすべて「新総合事業」に移行することになりました。「新総合事業」への移行に関しては、訪問型サービスは基準緩和型サービスとなり、そのサービスにおいては、身体介護と切り離して、無資格者による生活援助が行われることになります。さらに、「総合事業」に移行するのは、新規の人以外は要介護認定を経由しないで、すなわち要支援1・2のままで、基本チェックリストによって振り分けられることにもなりました。

 今年の3月議会では、「新総合事業」がスタートするにあたって、要支援該当者のサービス水準を切り崩さないこと、事前のチェックリストによる選別はやめ、申請権の侵害はしないことを求めたところです。「新総合事業」が始まって2か月が経過しましたが、伊丹市としてその実態をどう把握されているのでしょうか。

 ある事業所で、5月の1か月間の実態をお聞きしましたところ、要支援者に対する生活介護では介護報酬が8割の850円となったことで、介護報酬が5月に約60万円減収したとのことです。このままでは年間700万円以上の収入減が予測されることから、事業所としての苦肉の策で、1時間の訪問介護を45分で切り上げることにしたそうです。始まったばかりとはいえ、ほとんどの事業所では研修を受講しただけの支援員の確保が進まず、もしくはサービスの質の低下を心配して積極的に確保をせず、既存のヘルパーで対応されていることから、このように明らかに利用者に対するサービス低下につながっているのが現状ではないでしょうか。実態をどう把握されているのかお聞きします。

7.都市計画道路山田伊丹線の延伸について

 都市計画道路山田伊丹線は、今から70年前の1947年(昭和22年)3月31日に都市計画決定されました。以来、長年かかって県道塚口長尾線までの延伸にとどまっています。2014年からの都市計画道路の見直し作業により、同計画道路は継続となり、2015年策定の伊丹市都市計画道路整備プログラムでは、今後9年間で優先して整備すべき個所として位置づけられました。この間、道路整備の対象となる周辺住民の間では、山田伊丹線の延伸には疑問の声が出され、計画の見直しを求める意見が多く出されていたとお聞きしています。特に対象となる地域は高齢化が進み、移転が困難であるばかりでなく、近隣への移転先もほとんど見当たらない地域です。道路建設によって、良好なコミュニティが壊され、安心・安全なまちづくりは、むしろ破壊されるのではないでしょうか。県道飛行場線の整備が進み、渋滞が緩和される見通しが立つ中、今なぜ急ぐ必要があるのか理解できません。

 今回、小学校区の住民の代表に対して道路延伸工事を進める趣旨の説明があったとお聞きしています。このことに対しても、十分話し合いがなされないままの強行ではないかとの疑問が出ています。

 今一度、周辺・関係住民の意見を丁寧に聞き、見直しされることを求めるものですが、見解をお聞きします。

(2回目の発言趣旨)

1.情勢認識について(意見)

○安倍首相の9条改憲発言について

・自民党総裁も首相も同じ人物。首相がよく読んでほしいといった『読売』には「安倍首相インタビュー」と掲載している。憲法遵守義務のある一国の内閣総理大臣が、9条改憲の具体的な内容と期日まで示したこと、この内容は自民党の中でも議論されていないことだったことを見れば、内容もやり方もひどいもので、まさに「安倍首相の政治の私物化」と言われても仕方がない。

 市長が言うような、この国の将来像を見据えて、憲法改正の発議家案を国民に示すための一つの例として挙げたものではない。そもそも首相が改憲の発議案の考えを示すのが憲法違反で、発議するのは立法府である国会。それを無視して9条改憲に焦点を絞った発言と言える。

・「伊丹市平和都市宣言」での「平和な社会を築くことを誓い」という言葉は、憲法の前文と9条に由来しているもの。その9条改憲発言には、平和都市宣言をしている市長はもっと敏感であるべきと考えるものである。

○教育長は「教育現場で『教育勅語』を使用する考えは全くありません」と答弁された。先の大戦の教訓からみて、まっとうな見解。安心した。

2.幼児教育無償化

1)無償化は伊丹市が作成する「カリキュラム」に同意することが条件なのか…これに対する答弁はなかった。ビジョンやカリキュラムを、幅広い関係者、市民によって作ることはいいとしても、そのカリキュラムに同意することが無償化の条件とすることには疑問がある。ぜひこれらは分離した計画を作っていただきたい。→要望

3.公共施設再配置

1)庁舎建て替え

・PFIの活用について…答弁では「可能性は低い」とされた。PFIが全国的に問題となっていることを踏まえ、PFIはやめるべき。強く要望をする

3)市営住宅の建て替え

・市内の県営住宅では建て替えが進んだ。全国的に、公営住宅をすべて民間住宅に依拠する自治体はないのではないか。公的責任の放棄にならないか。

・民間借り上げ条件に適合する住宅は約3,300戸で、住宅供給数は一定確保できると答弁。…しかし、一団となった集合住宅が市営住宅として確保できなければ、高齢化した入居者がバラバラにされ、長年培われたコニュニティが喪失する。また、5年後以降、順次耐用年数を過ぎていく市営住宅が出てくるし、耐用年数が経過しない住宅でも、耐震化基準が満たされていない住宅に関しても民間住宅への住み替えが必要となる。空き家が多いとされる民間住宅は、市営住宅の耐用年数が切れるまで空き家で待っていてくれるわけがない。また、民間住宅の多くはファミリー向けの住宅で、単身者用の住宅を多く必要とする市営住宅の基準と合わないことがある等々、矛盾が大きいのではないか。これらの矛盾をどう考えるのか。耐震化された住宅への住み替え、高齢者等の4・5Fからの住み替えのために一定の民間住宅の活用は考えられるが、すべてを民間住宅で賄うという考えは改め、建て替えを求めるものだが、改めてこれらに対する見解を聞く。→見解を問う。

4.部落差別の解消の推進に関する法律について

・「社会問題としての部落問題」はおおむね解決したとの認識。一方、差別意識については、いまだに十分とは言えないと答弁。…「電話による土地差別問い合わせ」「人権センターへの差別身元調査」を問題とされたが、これらが社会的な問題となるほど広がっているのか。これら人権侵害があった場合、差別の事実を重く受け止め、きちんと対応するのは当然であって、このことを根拠に、教育・啓発を市民一般に強化することが適切なのかどうかということ。これが、お配りした資料③の参議院の付帯決議、「教育及び啓発により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、」「真に部落差別の解消に資するものになるように」ということに結び付くと考える。当局は改めて参議院において全会一致で可決された意味を考える必要がある。ことさら差別が厳しいということを強調することで、差別意識を広めてはいないか、ということ。長年教育・啓発を行ってきて、このような事実はないといえるのか。資料②の高砂市の立場をどう考えるのか。このことを踏まえて改めて見解を聞く。→質問

5.国民健康保険事業

・国保税は高いと当局も認識されていると、かつて委員会で答弁がされた。一方、今回の答弁では、法廷外繰り入れを行うことは、国保会計の基本的ルールに反すること、国保以外の市民の負担になることから実施すべきものではないと。これは、国保以外の被保険者と国保被保険者との保険料を同等にした場合に言えること。国保被保険者の負担を以上に高くする仕組みを作って、ルール違反だから繰り入れはできないということが、「住民の福祉の向上」という本来の自治体の役割に合致したものなのかどうか。→質問