2017年3月議会 服部好廣:市職員(市長部局)の労働時間と労働時間管理について

2017年3月議会 一般質問

2017年3月9日
日本共産党市会議員団 服部好廣

市職員(市長部局)の労働時間と労働時間管理についての質問

 議長の発言許可を得ましたので、私は日本共産党議員団を代表して質問をいたします。

 今、日本の労働者の働き方、働かせ方が大きな社会問題になっています。使用者の都合による際限のない仕事量の押し付けで、天井知らずの長時間労働と過密労働が押し付けられ、心身ともに疲れ切った労働者が過労死や過労自殺、メンタル疾患に陥る例が後を絶ちません。

 過労自殺した電通の女性社員、関西電力の課長の労災認定が昨年されました。

 長時間労働に加え、いわゆるサービス残業といわれるただ働き残業も大企業を中心にはびこっています。厚生労働省は昨年末、「監督指導による賃金不払い残業の是正結果」を発表しました。2015年度に企業が労働者に支払ったサービス残業代の是正額は99億9423万円。厚労省が調査を始めた01年以降の15年間で、是正総額は2402億9597万円に達します。

 15年間の累計で、是正された労働者総数は206万7351人、企業総数は1万9411社。このなかには、トヨタをはじめとする製造業、都市銀行、電力会社などの大企業が多数含まれています。

具体的な事例では

▽ 終業時刻と退門時刻にかい離。「本人都合による業務外の出社」などとされたが、eメールの送受信記録から虚偽の理由が申告されていた(製造業)

▽ 労基署が夜間に立ち入り検査を行った結果、複数の店舗で、自己申告した終業時刻後に労働者が就労していた(金融業)―などの手法がありました。

 労働者の粘り強い告発と労基署等の立ち入り調査で毎年100億円に及ぶ不払い賃金が支払われていますが、告発されるのはほんの一部、氷山の一角にすぎません。国の制度として、過労死やメンタル疾患、家庭崩壊を生まない労働時間の上限設定やインターバル時間の設定を法制度として確立させる必要があります。しかし今、安倍政権は逆に、長時間過密労働と「サービス残業」を合法化する「働き方改革=残業代ゼロ法案」=(何時間働いても残業代を支払わなくてもよい制度)を提案して大企業中心の法違反を合法化することを狙っています。

 私は在職時代「サービス残業」の是正と労働時間の客観的把握制度の導入のために活動してきましたが、そのことも踏まえて、質問をいたします。

 厚生労働省は、1970年代からのわが党国会議員団の300回に及ぶ追及の結果、サービス残業と長時間過密労働による過労死・メンタル疾患の急増への対策として2001年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」と題する通達を出し、労働時間の適正な把握の使用者責任を明確にし、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」を具体的に6点示し、(2)で就業時間は使用者が自ら確認するか「タイムカード、ICカード等の客観的な記録で確認」することを求めました。また、「サービス残業」の温床となっている「労働時間の自己申告制」に対しては具体的に事例を示し3点の措置を講ずるよう指示しています。

 これらを通じて労働時間の「客観的な把握制度」に切り替えるよう雇用者に指導強化しました。

 ところがそれから15年、いまだにその状況が大企業中心に温存されていることが今回の過労自殺、過労死問題で明らかになりました。2001年4月の通達が実行されていない実態を踏まえて、厚労省は改めて今年2017年1月20日に「労働時間の適切な把握のために使用者が講ずるべき措置に関するガイドライン」を発表し、「労働時間の客観的な把握制度」を実施するよう強い勧告を行いました。ガイドラインの「趣旨」いわく労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。

 しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用等に伴い、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況もみられるところである。

 このため、本ガイドラインでは、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにする。

 そのうえで、この間に明らかになった不正行為を具体的にあげた詳細な指示を行っています。特に「自己申告制」に対しては使用者による圧力や指示で申告がゆがめられてきた実態を意識した詳細な指示がなされています。

 以上の厚労省ガイドラインを前提に、市長部局の職員の労働時間管理の実態をお聞きします。

1点目として、

① 労働時間の把握方法はどのようになっていますか?1日の労働時間、1か月の労働時間、一般職と管理職で相違があればそれもお答えください。

② 各部門(部単位)の月別所定時間内労働時間と所定時間外労働時間(代休処理前の実質時間)

③ そのうち、各部ごとの最短と最長の時間外労働時間の状況。また、厚生労働省が示している過重労働の基準の一つである、月80時間を超える時間外労働の実態、また同一労働者が複数の月にわたりそれが連続している状況

④ 具体的な労働時間記録方法    たとえば職場のタイムカード 就業時間記録用紙に各自で記入(毎日or週ごとetc.) ICカードによる記録 上司による記録などの方法と、具体的な記録(記述)方法

⑤ 休日出勤時の労働時間管理方法

⑥ 休日出勤時の部門一人出勤の有無とフロア一人勤務の有無

⑦ 代休の処理方法 部門の人件費枠の調整で使用することがあるか

⑧ 実労働時間と「自己申告時間」との間に乖離が生じていないか、どのようにして確認しているか

 2点目は、入庁後3年以内で退職した職員は何人で、その採用者数に対する比率はいくらか、過去5年程度の状況をお聞かせください。

以上で1回目の質問とします。

【2回目の質問】

 1回目の質問のご答弁で、市長部局の職員の時間外労働時間の実態をお聞きしました。

 その中で、一人あたりの月平均の最長は総合政策部における2月の41.9時間、次いで都市活力部の10月32.3時間、財政基盤部の1月の29.6時間、健康福祉部の4月28.9時間となっています。

 一部の部門ではかなりの長時間の時間外労働が行われていることがわかりました。問題なのは月80時間を超えて残業している人が一定数いることです。この状況をどう解決しようと考えているかお答えください。

 厚労省の基準である1か月45時間以内、年間360時間以内とするにはどのような方策が必要なのかお聞きします。

 次に、時間外労働時間の把握ですが、「出勤簿への押印時に所属長が出勤を確認し、超過勤務の命令のある場合を除き終業時刻後に順次退庁している」とお答えいただいたところですが、私の経験から言えば、このような時間管理の方法は「ザル」だと言わざるを得ません。

① 出勤時に「超過勤務の命令」の有無がすべて判明しているとは思えません。その日の仕事の状況や突発的な事案の発生で残業せざるを得ない、期限の迫っている場合は翌日に回せない。そういう事態で管理職は当日の状況判断で残業命令を出していると思いますが、残業時間に入ってからの事態の急変に対してはどのように対応しているのでしょうか。

② 21時以降、宿直職員が不在の場合の退庁時刻の客観的把握はどのように行っているのでしょうか。

 長時間過密労働は地方公務員も例外ではなく、2月8日の衆院予算委員会での日本共産党の梅村さえこ議員の質問では、滋賀県庁が一昨年、年間1000時間超えの時間外勤務を行った職員が20人もいたことで労働基準監督署から是正勧告を受けています。伊丹市が同じような勧告を受けない前に実態把握を行うことを求めたいと思います。

 長時間労働の背景には、国が2005年に「集中改革プラン」を地方に押し付け、約29万人の地方公務員を削減してきたことなどがあります。自治体職員でも労働時間は「1日8時間週40時間」は大原則で、それを超えるのは「災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要性がある場合」などに限られなければなりません。

 同時に、就業時間の記録や残業時間の申告は、実際には「自己申告制」になっているといえます。答弁では「実態時間と申告時間の乖離はない」とのことですが、客観的な管理方法が導入されていない状況では「ない」と言い切れる状況ではない。のではないですか。

 次に、副主幹以上の管理職とされている皆さんの労働実態です。先に質問を行った議員の質問に対し一定の回答がありましたが、管理職の皆さんにも、健康管理上就業時間の把握が必要です。現状は自己申告による記録しかありません。管理職の皆さんの長時間就業の実態は把握されていますか。正確な実態把握がされていないと健康を害する危険が生じます。

 自己申告による労働時間の把握について、厚労省が1月20日に発表した「ガイドライン」では次のように具体的な指示を行い、自己申告制により引き起こされてきた過少申告の実態を警告しています。

ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。

 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

 これらの厚労省の指摘に対してどのようにお考えでしょうか。

 これを遵守する考えがあるかお聞きします。

 また、厚労省の通達で求めている「労働時間の客観的な把握制度」の導入に関して─いつどのように実行するのか、その計画をお聞かせください。

 客観的な労働時間の把握がなぜ必要か、理解いただくためにわたくしの在職時の職場実態を少しお話します。

 ある技術部門の職場で内臓疾患やメンタル疾患が多発しました。自己申告での労働時間はほかの職場と差異はことさら大きくはありませんでした。職場での「サービス残業是正」の運動と労基署の立ち入り調査の結果、自己申告時間と実際の労働時間の乖離が大きく、是正勧告を受け、セキュリティ管理で導入されていたICカードによる就業時間管理を導入したことにより、この職場の異常な労働実態が判明し、部門長は更迭されました。総務部門はようやく従業員の労働実態を客観的に把握でき、メンタル疾患への対応も実施できるようになりました。

 次に、一人出勤に関してですが、なぜこの質問をしたかです。部門で一人、またはフロア一人で就労しているときに突発的な事故や急な体調不良に見舞われたときに対応できないからです。

 私が現役時代にもそういう事例がありました。早朝からラインの点検のために一人で出勤していた管理職が心筋梗塞で死亡しているのが、定時に出勤してきた従業員に発見されました。

 現在まで、そのような事例はありませんか。たとえなくとも今後の発生に備えて一人出勤や一人残業への対応を検討する予定はありますか。

2、次に、新入職員の3年以内の退職者の状況をお聞きしました。

 民間企業においては、入社3年までの新入社員の退職者は3割に上ると言われています。

 主な理由は

① 仕事がきつい(39.1%)
② 仕事が面白くない(39.1%)
③ 労働時間が長い(32.8%)
④ 待遇(給与や福利厚生)がよくない(29.7%)
⑤ 会社の雰囲気が合わない(28.1%)
となっているそうです。市職員の退職理由について把握されているならお聞かせください。

 以上で2回目の質問を終わります。

3回目は意見と要望といたします。

1、市民の福祉向上に日々努力いただいている市職員の皆さんに、その能力を発揮しまた市民への適切な対応を行っていただくためには健康で働くことが前提であり、適正な労働時間管理は欠かせないと思います。これは管理職も含めて当然のことです。

 そのためにも厚労省のガイドラインで求めている「客観的な労働時間把握制度」への早急な移行の具体化を求めておきたいと思います。

 ご答弁では勤務時間は正確に把握している、との認識をお持ちのようですが、それならば厚生労働省の「ガイドライン」で示している「自己申告制による記録と実際の労働時間が合致しているかの実態調査」を実施すべきと考えます。庁内では客観的な記録媒体がないため、各自の使用するパソコンのログオン、ログオフ時刻の記録を取って自己申告時刻との照合を実施することを求めておきます。

 政府の「働き改革」では残業時間の上限を100時間、2か月平均80時間という案を出していますが、今回、答弁いただいた職員の異常な長時間労働がそのまま容認される恐るべき内容です。これでは過労死を助長してしまうと、国会厚生労働委員会での参考人質疑でも厳しい批判がされているところです。
命より大切な仕事はありません。

 新入職員の早期退職理由をお聞きしましたが、私が例に挙げた民間企業の例とはだいぶ違うようで安心しました。今後とも働きやすい生きがいある職場になるよう、お願いいたします。

 長時間労働や客観的な労働時間管理については、その他の職場も含め、今後も引き続き取り上げていきたいと思います。

以上