2017年3月議会 上原秀樹:就学援助制度、マイナンバー、コミュニティスクール

2017年3月議会 一般質問
2017年3月7日
日本共産党市会議員団 上原秀樹

1.就学援助制度の充実を求める

 就学援助制度の充実に関しては、これまでも何度か質問をしてきました。いうまでもなく就学援助制度とは、学校教育法第19条において、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」とされているとおり、生活保護世帯や低所得世帯を対象に小中学校の入学準備費用、学用品費や給食費、修学旅行費などを援助することによって、所得による教育の格差をなくそうという制度となっています。この制度をさらに発展させ、憲法26条でいう国民の教育権を保障するため、以下の質問をします。

1)新入学児童生徒学用品費(入学準備金)について

 2017年度予算では、「要保護世帯」に対する就学援助のうち、新入学児童生徒に対する入学準備費用の国の補助単価が約2倍に引き上げられることとなりました。すなわち、小学生に対する補助単価は現在2万470円が4万600円に、中学生は2万3,550円から4万7,400円にそれぞれ引き上げられます。これは、日本共産党の田村参議院議員が、昨年5月の参院文教科学委員会で、新入学生が実際に購入する学用品費等が実態と大きくかい離している実態を告発して、引き上げを求めていたものです。

 伊丹市はどう対応されるのでしょうか。生活保護費における教育扶助費、教育委員会における就学援助費それぞれについてお伺いします。

2)入学準備金を入学前に支給することについて

 この問題については、以前に質問をし、9月支給から5月支給に変更されています。伊丹市としては改善していただいたのですが、全国的には、入学前に前倒しで支給する自治体が増えています。「朝日新聞」2月4日付けによりますと、少なくても全国の約80市区町村が、入学後から、制服購入などで出費がかさむ入学前に変更していることを報道しています。その方法は、以前にも質問で説明したように、前々年の世帯所得によって支給を決めているのがほとんどとなっており、そんなに難しい話ではありません。

 伊丹市としてどう対応されるのでしょうか。生活保護費における教育扶助費、教育委員会における就学援助費それぞれについてお伺いします。

3)認定基準を元に戻すことについて

 伊丹市は今まで、就学援助の認定基準を、生活保護の生活扶助基準の引き下げに伴い、2014年度は据え置いたものの、2015年度は2014年度の生活保護の基準をもとに引き下げ、2016年度も前年の生活保護基準に従って引き下げる方針を打ち出されていました。しかし、大幅な引き下げであることから、私は本会議・委員会で元に戻すことを求め、2016年度は据え置きとされました。

 しかし、所得基準額の引き下げは、全国的にも貧困と格差が問題となり、所得格差によって生じる教育の格差をなくすための制度として機能している就学援助制度の役割が損なわれてしまうことになります。2016年9月23日付の文部科学省初等中等教育局長「平成28年度要保護児童生徒援助費補助金の事務処理について(通知)」でも、生活扶助見直しに係る就学援助については、「児童生徒の教育を受ける権利が妨げられることのないよう、…生活扶助費見直し以降も引き続き国による補助の対象とすること、…準要保護者の対する就学援助については、その取り組みの趣旨を理解した上で適切な御判断」を求めています。

 伊丹市として、2013年に引き下げられた生活扶助費を基準とした就学援助費の認定基準を、元に戻すことを改めて求めるものですが、見解を伺います。

2.「給与所得等に係る市町村民税・都道府県民税 特別徴収税額の決定・変更通知書」への「共通番号」記載について

 総務省は、今年5月に各事業所に郵送される市町村民税等の「特別徴収税額の決定通知書」に、従業員のマイナンバー(共通番号)を記入するよう市町村に指導しています。しかし、これには3つの問題が生じることとなります。

① 国税庁として、従業員が事業主にマイナンバーを通知しなくても、すなわち提出者本人の番号が確認できなくても事業所の書類は受理するとされていますが、それにもかかわらず事業主と各自治体の間でマイナンバーがやり取りされることとなること。

② 多くの事業所では、マイナンバーの管理体制がきわめて不十分なのが現実であることを多くの税理士が指摘しているが、事業主にとっては、安全管理体制が整っていいなくても、自治体からの郵送によって、一方的にマイナンバーが通知されてしまい、番号が漏れれば厳しい罰則が科せられる可能性が出てきます。また、本人が通知していないマイナンバーを他の社会保険の手続きに利用した場合にも処罰の対象とされてしまいます。

③ 伊丹市にとっても、総務省からマイナンバーに関しては適正な管理運営を助言されており、普通郵便でマイナンバーを送付し、郵便事故により情報が漏えいした場合には、損害賠償されることも想定されます。書留などの特定の郵便で送付する場合には、自治体のコストがかかるという問題が生じます。

 以上3つの問題点に対し、どうお考えなのか、また、特別徴収税額の決定・変更通知書にマイナンバーを記載しないことを求めるものですが、合わせて見解を伺うものです。

3.コミュニティスクールについて

 伊丹市教育委員会は、全市立小中高等学校に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5に規定する学校運営協議会を設置し、保護者及び地域住民の学校運営への参画の促進や連携強化を図ることにより、学校と保護者、地域住民等の信頼関係を深め、一体となって学校運営の改善や児童生徒の健全育成に取り組むシステムを整備するとされています。そして、昨年度と今年度、小学校6校、中学校4校をコミュニティスクールとして指定し、来年度はその充実を図るとともに、新たに7校を指定するための準備を行うとのことです。

 全国的には、昨年4月の集計で、公立小・中学校の9.0%、2654校がコミュニティスクールとなっています。2004年に始まったこの制度は、地域によってばらつきがあり、現在の法律に基づく指定校がゼロのところもあるように、必ずしも全国的に進んでいるとは言えません。

① その理由の一つが、学校運営協議会が教職員人事に関する発言権を持っていることが障害となっている問題です。したがって、本来ならば本協議会の3つの権限を協議会設置規定に規定することになるが、全国的には「任用規定」を規定していない例が32%、好調などへの事前意見徴収などを条件づけた例が約30%で、近年、この規定を設けない例が増えているとのことです。

② さらに、2013年の文科省委託研究調査によると、コミュニティスクール指定前と指定後の校長の課題認識で、「管理職や教職員の勤務負担が増える」との認識が、指定前が61.2%、指定後でも51.8%あるとされている問題です。このことは、現在の学校評議員制度や学校地域連携本部、土曜学習等による連携によって地域との連携が取れていることもあり、なぜいま新たな制度を作らなければならないのかという認識にもつながるものと考えられる。

③ 子どもの権利条約実践の観点から、学校運営になぜ子どもの意見を取り入れる機会を、このコミュニティスクール設置事業でつくらないのかという疑問も出てくるのだが。

 以上この3つの点に関しての見解を伺うとともに、この数年間で急速に全小中学校にコミュニティスクールを設置する意義をどう考えたらよいのか、また、今まちづくりを進めるという点では全小学校区で地域自治組織をつくることも行われているが、この地域との関係をどう考えているのか、見解を伺う。

(2回目の発言)

1.就学援助制度の充実

1)入学準備金について

・入学準備金の補助単価が、生活扶助費の補助単価と同額に、すなわち現在小学校2万470円が4万600円に、中学校は2万3,550円から4万7,400円にそれぞれ引き上げられた。しかし、国の予算案が1月30日に示されたため、伊丹市における予算措置ができていない。この件では、子どもの貧困の実態も鑑み、検討すると。

・これは制度的に確立したわけだから、検討するもしないも、引き上げられた入学準備金を支給するしかない。予算化されていないことをどうするかという検討は必要だが。実現の方向で検討していただきたい。

2)入学準備金の前年度3月支給について

・答弁は前回と同じ。就学援助システムの改修が必要と。「就学援助制度の趣旨に基づき」と答弁があったが、先ほど紹介した2016年9月23日付の文部科学省初等中等教育局長「平成28年度要保護児童生徒援助費補助金の事務処理について(通知)」でも、入学準備金の支給に関しては、各費目について児童生徒が援助を必要とする時期に速やかに支給することができるよう十分配慮すること、とされている。援助が必要とする時期とは、入学に必要な物品の購入に充てる時期であり、入学前に支給するのが当然。

・伊丹市の場合、中学校では制服等全部で6万円から7万円の費用負担。低所得者にとってはこれを立て替えると生活費を大きく圧迫することになる。ぜひ早期に実現を。

3)就学援助の認定基準を元に戻すこと

・この件は、やっと元に戻していただいた。

・今後、就学援助制度がさらに充実し、所得の格差によって教育権が侵害されないように。

・就学援助制度は子供の貧困対策の一つ。貧困対策法では、子どもの貧困対策は自治体の責務とされている。このことを子ども施策の中心に置いた政策を求める。

2.「給与所得等に係る市町村民税・都道府県民税 特別徴収税額の決定・変更通知書」への「共通番号」記載について

◎まず大前提として、この通知書にマイナンバーを記載し、郵送することは、重大な個人情報の大量漏えいが危ぶまれるということ。番号の記載は中止することを求める。東京都・中野区では、昨年の11月、「通知書」に番号を記載しないこととし、市が保有する納税義務者にはアスタリスクを印字するとした。

① その上に立って、せめて従業員が事業主に個人番号を提出しない場合、伊丹市からの特別徴収額の決定通知書にその人の個人番号を通知するのはやめたらどうか。

・伊丹市は、法令に基づき国から番号を記載して通知書を送付することを「指示」されている。

・しかし、一方、番号法は個人に対して番号の提出を強制する規定はない。

・さらに、番号を提供しないことに対する不利益はない。

・そういう中でどうするのか。答弁では、本人が番号を提供したのか否かは要件とされていないことから、その番号を記載して通知することは問題ない、とされた。

・本人の考え方によって番号を提供しないということは当然ありうること。これは、マイナンバー制度に対する信頼の問題もあろうかと思う。提供しなくても不利益は受けないことになっているということもある。

・これらのことから考えると、「個人の人格的な権利利益」を侵害するという可能性を考慮し、番号を提供していない個人の場合、番号欄にアスタリスクを印字する方法ととることができないのかどうか。報道を見れば、東京都内の約50%はこの方法によるとされている。検討していただきたいと思うが、いかがか。

3.コミュニティ・スクール

1)職員の任用に対する意見(質問)

・全国的にこの事業を進めるうえでの妨げとなっている要因の一つ。しかも出される意見は全体の15.9%で、英語の免許を持った教員を配置してほしいなどの一般的要望がほとんど。「こういう先生がほしい」などの要望はどこの学校でもあり、教育委員会がそのすべてに応えることなどできない。国会で法律の改正案が審議されるというが、その内容も発言権を制限できる規定を置くとのこと。

・任用に対する意見という規定は必要なのか。全国的にも「任用意見がない」というところが32%存在する。どうしてもこの規定がなければならないのか。いらないのではないかと思うが、いかがか。

2)学校支援地域本部などとの関係(要望)

・以前の答弁で、学校支援地域本部は約600名の登録があり、学習支援や環境支援、図書支援などが行われていると。しかしこの活動はあくまでも学校支援というものであり、地域の活性化を視野に入れるなら、コミュニティ・スクールは学校、地域、家庭が対等の立場で、一定の権限と責任を持って協働する組織として活動するものとなる。そのために現在の仕組みを組織化・体系化すると。

・教育の主体はだれか。学校、家庭、地域それぞれの役割を明確にすること。教育基本法第6条(学校)…体系的な教育を組織的に行う。第10条(家庭)…子の教育について第1義的責任を有する。第13条(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)…それぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携および協力に努める。したがって、教育の主体は、学校と、学校と連携する家庭で、それを支援・連携するのが行政と地域ということになる。地域の支援・連携は単なる「協力」ではなく「参画」という立場で、学校に対する理解を深め、より積極的にその幅を広げていくこと。この理解は教育委員会にとっては当たり前のことなのだが、改めて学校運営協議会で整理する必要があるのでは。

3)「地域自治組織」との連携について(要望)

・答弁では、関係部局と連携を図りながら検討すると。

・コミュニティ・スクールが進んでいるある都市では、この事業が大きな成果を上げた要因を、まちづくり組織に対する補助金を交付金として一本化したことを挙げている。このことにより各自治会では地域の状況・課題を踏まえた特色ある地域づくりが取り組まれ、この力が大きな力となってコミュニティ・スクールと相互に結び付き、補完しながら成果を上げてきた。

4)子どもの意見を取り入れる(質問)

・子どもたちが学校・地域で育つためには、大人や関係者だけでは育たない。そこには、教育の対象となる子どもたちの主体的・積極的な行為が必要。子どもたちが地域の行事に参画・実践する機会を設けること、子どもたちも地域の一員であるという自覚を促し、地域づくりの担い手になる素地を培うことが必要かと。

・例えば、学校運営協議会で、あるいはそのもとにつくる「学校、家庭、地域、子ども」の4者による協議体のような機関で、自ら参画・実践できる行事を企画するなど。