2013年3月議会:上原ひでき 若年世帯等家賃補助に係る問題、教育長の答弁についいて

2013年3月6日

日本共産党議員団 上原秀樹

①伊丹市市民特別賃貸住宅における若年世帯等家賃補助に係る問題について

 市民7人が2月28日、伊丹市市民特別賃貸住宅にかかる若年世帯等家賃補助に関して住民監査請求を提出、 2001年から2010年に2億7300万円が違法に交付された疑いがあるとしている問題について。

②木下教育長の2012年12月議会での一般質問に対する答弁について

 教育長は、12月議会において、「子供たちに日本人が長年培ってきたよき伝統や規範意識を身につけさせてやりたい」 として、自己中心的な考えが生まれる背景には、「戦後、戦争につながったと考える規範や日本古来の伝統で占領政策に そぐわないものはすべて排除をされ、かわって平和主義、自由主義、個人主義を国の方針にしたことに一つの原因がある のではないかと思っています」と答弁されたことについて。

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1.伊丹市市民特別賃貸住宅における若年世帯等家賃補助に係る問題について

 新聞報道によりますと、市民7人が2月28 日、伊丹市市民特別賃貸住宅にかかる若年世帯等家賃補助に関して住民監査請求を提出、2001年から2010年に2億7300万円が違法に交付された疑いがあるとしています。この家賃補助制度は、35歳以下の夫婦や小学校卒業までの子どものいる世帯が対象で、政令月収15万3000円から26万8000円の世帯に対し4万円前後の家賃を補助しており、入居後は32万2000円まで認めているもので、市は対象外の住民に2002年度以降家賃補助をしていたことを認めておられます。

 補助金に関しては、地方自治法第232条の2において「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」とされ、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第3条では、「補助金等に係る予算の執行に当たっては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、・・・公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない」とされ、これらに基づき、伊丹市補助金等の交付に関する規則第4 条で、「市長は,補助金等の交付申請があつたときは,当該申請にかかる書類等の審査および必要に応じて行なう現地調査等により,当該補助金等が法令等の定めに違反しないか,・・・等を調査し,必要と認めたものについて予算の範囲内で補助金等の交付および交付する額を定めるものとする」とされています。

 そこでお伺いします。

1)新聞報道で、「市の要綱には特別規定があり、支援を続けたことは問題ない」「要綱の拡大解釈をした運用をしていた」「手続きに不透明な部分があり、要綱の見直しを進めている」と、答えている問題について

 昨日の答弁もそうですが、ここには、要綱と補助金の支出の間には問題があるとの認識はありません。しかし、先ほど紹介した地方自治法以下の法律、規則によれば、明らかに違反しているとしか考えられません。昨日の答弁では、「支援を続けたことは問題ない」とされた理由は、「要綱」の目的における政策目標の実現等にあるとのことです。それでは「要綱」で定められている所得制限はどうなったのかという疑問が出てきます。

 そこで、改めて法律、規則、「要綱」に照らして、その認識を伺いたいと思いますが、それは、「支援を続けたことは問題ない」とされてきた市長の責任の問題です。「伊丹市市民特別賃貸住宅にかかる若年世帯等家賃支援要綱」では、家賃の支援を受けようとする世帯は、申請書を市長に提出、市長はその内容を審査の上、可否の決定をすることになっています。伊丹市補助金等の交付に関する規則第4 条の引用を先ほど示しましたが、市長は規則「要綱」に基づき、「可」とする決定をされてきたわけですが、市長就任以来8年間、その規則に照らしたとき、問題点を認識されてきたのかどうか。認識されたとき、どんな議論がなされて今日まで至ったのでしょうか。

 さらに、「要綱の見直しを進めている」との答弁からすれば、市長は、「不透明」を自覚し、見直しの必要性を認めながら見直しをしなかったということになります。それはなぜでしょうか。あわせてお伺いします。

2)監査委員における行政監査のあり方について

 地方自治法第199条の第2項で、「監査委員は、…必要があると認めるときは、普通公共団体の事務の執行について監査することができる」と、行政監査について規定され、同条第7項では、伊丹市が補助金等財政的援助を与えている伊丹市都市整備公社などに対しても、監査することができるとされています。さらに、全国都市監査委員会発行の補助金における行政監査の着眼点では、「事務の執行は、法令等に従って適正に行われているか」などを基本として行うことが書かれています。

 そこでお伺いします。通常の監査委員による行政監査において、この問題に見られるような補助金に係る監査で、要綱に基づく適正な事務の執行がなされているのか、また社会経済情勢の変化に応じた補助金の見直しの必要性の如何等にまで踏み込んだ監査を行うことは可能でしょうか。

3)今後の市民特別賃貸住宅あり方について

 貧困と格差が広がるもとで、若年層に低所得者が増えています。問題となっている市民特別賃貸住宅にかかる家賃支援において、対象外とされた123世帯のうち、下限月収以下の世帯が106世帯で、その約86%、支援を受けている世帯全世帯からすれば約40%、前入居世帯の32%に及んでいます。もともと市民特別賃貸住宅は、中間所得者層を対象としたものですが、実態は低所得者が対象となっているのが現状です。

 今後の「要綱」の見直しに関しては、低所得者に対しては、昨日の答弁で収入基準の下限を定めない改定をするとのことです。

 一方、公営住宅法では、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸」することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的としています。従って、現行の市民特別賃貸住宅を、一定の割合、公営住宅法に基づく市営住宅として借り上げする方策を考える必要があるのではないかと思いますが、見解を伺います。

2.木下教育長の2012年12月議会での一般質問に対する答弁について

 教育長は、12月議会において、「子供たちに日本人が長年培ってきたよき伝統や規範意識を身につけさせてやりたい」として、自己中心的な考えが生まれる背景には、「戦後、戦争につながったと考える規範や日本古来の伝統で占領政策にそぐわないものはすべて排除をされ、かわって平和主義、自由主義、個人主義を国の方針にしたことに一つの原因があるのではないかと思っています」と答弁されました。

 この答弁に関してよく理解できない点があることから、以下お聞きいたします。

1)「戦争につながったと考える規範や日本古来の伝統で占領政策にそぐわないものはすべて排除をされ」という点について

○戦争につながったと考えられる規範は何をさしているのでしょうか。

○日本古来の伝統とは、縄文時代もあれば平安時代、鎌倉時代から江戸時代の封建制といわれる時代に生まれた文化、明治から戦争終了までの時代、その時々に生まれた伝統があるでしょう。ここで言われるに日本古来の伝統とは何をさしているのでしょうか。

○それら、占領政策にそぐわないものはすべて排除されたことが、規範意識の問題、自己中心的な考えになったとされたのは、どういう考え方からでしょうか。

2)「平和主義、自由主義、個人主義を国の方針にしたことに一つの原因があるのではないかと思っています」という点について

○戦後の出発は、新しい憲法を制定するところから始まりました。その憲法には、政府の行為によって再び再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、主権在民、平和主義、基本的人権の尊重などが明記されました。そしてこの憲法に基づき、教育基本法が定められ、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」とされたところでです。これが教育長の言われる「平和主義、自由主義、個人主義を国の方針にしたこと」の中身です。このことが今の若者を自己中心的にしたという原因にはなりません。どのような認識からこのような発言が生まれるのでしょうか。

3)戦後教育がめざしたものはなんだったのか。

 憲法が制定され、それに基づく教育基本法の前文は、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」とされ、第1条の目的へと続いています。

 教育長の12月議会での答弁は、この教育基本法自体が間違いの出発点であったとの認識にあるのではないでしょうか。その認識には大いに疑問があります。教育長は、そもそもこの教育基本法において戦後教育がめざしたものは何であったと認識されてい

るのでしょうか。見解を伺います。

(2回目の発言メモ)

1.伊丹市市民特別賃貸住宅における若年世帯等家賃補助に係る問題について

○もともとこの制度自体に問題があるわけではない。若年層、子育て世帯を支援することは、党議員団としても以前から求めてきたこと。問題は「要綱」。さきほどの質問で、「要綱」に基づく申請から市長の支援の可否決定に至る流れの中で、市長はどのように認識されていたのか、について質問した。答弁では、市長就任以来の8年間のうち、一昨年までわからなかったと。

 しかし申請書には必要書類が添付されており、その内容を審査の上可否を判断し、さらに書面で申請者と都市整備公社に通知するとなっている。したがって、支援する要件に合致しているかどうかはわかることになる。

 しかしそこでは、すでに所得要件は緩和されているわけで、「要綱」が改正されずに所得要件が緩和されるということは、「要綱」の第14条「この要綱の施行に関し必要な事項は市長が別に定める」という項目が存在することになる。しかしそれがない。ということならば、毎年度市長が判断しているということになるのではないか。

2.教育長の12月議会での答弁に対して

答弁におけるキーワードに絞って再度質問します。

① 戦前の教育から戦後教育への転換、すなわち1947年の教育基本本制定によって何が変わったのか。そのひとつが、教育の目的を、戦前の天皇制国家に役に立つ人材から、人格の完成を教育の目的としたこと。すなわち国家のための教育から一人ひとりの人間的成長のための教育へと、教育の根本を変えたことにあります。

 なお、当時の法案作成過程で「個人ばかり尊重すると社会のことを考える人間が育たないのではないか」という問題が論争になったそうです。その中で、「個人をむなしくして公につくす」という戦前的な考え方、すなわち全体主義的な考えではなく、近代的な個人を確立してこそ、社会の一員として積極的な役割を果たす人間になるという個人主義的な考え方が採用されています。実はこのこと自体が公共の精神という意味なのです。

 教育長は、全体主義より個人主義を極端に重視する傾向から公共の精神がなおざりにされたとの認識をお持ちのようです。それでは、公共の精神とは何でしょうか。それは、2006年の教育基本法改正の時、当時の文科省の国会答弁に見ることができます。すなわち、「人間は、教育において、個人の尊厳が重んじられ、自己の確立を図ることを通じて他者の尊厳をも重んじる態度をはぐくむとともに、他者とのかかわりによってつくられる社会を尊重し、さらには、主体的にその形成に参加する公共の精神を養うことへと発展するもの」とされています。このことは旧教育基本法の内容と共通しています。すなわち、本来の意味での公共の精神は、もともと旧教育基本法で明確にしていました。しかし、わざわざ新教育基本法にこの公共の精神を明記した本来の意図は、「国を愛する態度」や徳目を明記したこともあわせて、国策に従う人間をつくるということにあると私は考えます。

 このことはさておきましても、 以上のことから、教育長の「全体主義より個人主義を極端に重視する傾向から公共の精神がなおざりにされた」との認識を、公共の精神とは何なのかを考える中で、改める必要があるのではないでしょうか。見解を伺います。

② 日本古来の伝統に関して教育長の見解が述べられました。「伝統」といっても地域や時代によって違いがあります。そこには時代の固有性や他文化からの影響などが含まれています。それらが複雑に絡み合って今の私たちのものの感じ方や考え方を形成していますから、伝統のどこに共感するかは人によって違います。安易に固定の伝統観を押し付けることはできません。

 教育長は、これら「公共の精神」と「伝統文化」を、「不易流行」の「不易」として次代に継承・発展させるための教育を充実させる、といわれます。

 「公共の精神」と「伝統文化」に関しては、いずれも人間の生き方や物の見方・考え方に関することです。従って、これらは、事実に基づいた科学的な学習、自由な雰囲気の中での話し合いなど、各教科指導や生活指導の中で培われるものと考えます。いくら立派な徳目を教えるにしても、具体的な行動からかけ離れて教えられれば、教え込まれるだけで自主的な判断ができなくなります。

以上に対する見解を伺います。