2021年12月議会:上原秀樹 一般質問 新型コロナ 気候危機打開 ヤマサクラ81

2021年12月議会 一般質問

2021年12月9日
日本共産党伊丹市議会議員団 上原秀樹

1.新型コロナウイルス感染症対策について

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者の報告が世界各国で相次ぎ、世界44カ国に拡大しています。世界保健機関(WHO)は、世界的なリスクは非常に高く、さらに拡散する可能性があると指摘し、日本の国立感染症研究所でも警戒度が最も高い「懸念すべき変異株」にリスク評価を引き上げました。オミクロン株の感染力の強さや重症化リスク、ワクチン効果への影響など詳細はまだ分かっていません。それだけに、監視の体制を強め、性質や危険性について解明することが急がれます。

 水際対策では、各国で次々と感染者が確認されている中で、日本でも入国検査でつかめなかった感染者がいる可能性も念頭に置く必要があります。変異株かどうかを早期につかむためのPCRをはじめとする検査体制の拡充・強化、ゲノム解析の徹底などが求められます。

 いま日本国内の感染は落ち着きをみせています。こういう時だからこそ、保健所や医療が危機時に機能するかをチェックし、不十分な医療・検査の体制を整えるために力を注ぐ時です。

 感染数の減少の中で、行動制限が緩和されてきていますが、感染状況に厳重な注意を払い、リスクがあれば行動の制限を再び強化するなどの機敏な判断と対策も重要になっています。その際、営業や暮らしに打撃とならないよう補償などの対策が不可欠です。

 同時に、通常の生活に戻れていない今、生活困窮者や事業者、医療機関等への支援に関しても十分な対策をとることも求められます。

 新たな変異株による感染の急増とブレークスルーへの不安がある中、次の点をお聞きします。

1)医療・検査体制の総点検と強化について

 政府は、今までのコロナ感染症対策で医療崩壊を招いた教訓から、医療体制の強化、特に政府が感染病床を大きく削減してきた経過もあり、その増床を図るとともに、保健所の機能強化も行うとされています。阪神医療圏、北阪神準医療圏での感染症病床の状況と伊丹保健所はどう変化しているのでしょうか。

 また、日本でも、世界でもワクチン接種後の「ブレークスルー感染」が起きています。感染抑止のためには、追加のワクチン接種を安全にすすめるとともに、大規模な検査を行い、「ブレークスルー感染」での無症状感染者が感染を広げる火種を見つけ、消していくことが必要です。そのためには、今まで何度も言ってきましたが、いつでも、誰でも、無料でPCR検査を受けられるようにすることです。どのように検査の拡充がされるのでしょうか。

2)新型コロナウイルス感染拡大で痛んだ暮らしと営業への補償と支援を

 岸田政権は11月26日、2021年度補正予算案を閣議決定しました。そのうち、減収事業者向けの新たな給付金「事業復活支援金」は、支給要件を従来の給付金の50%以上の減収から30%以上の減収に緩和しましたが、給付額は従来の給付金の半額となりました。しかも給付の対象となるのは、今年の11月から来年3月までの減収分だけで、10月以前の減収は対象になりません。岸田首相は「昨年の持続化給付金並みの給付」と言っていましたが、「なぜ半額なのか。騙された」との声も聞くところです。当局は、市内事業所の現状から考えて、この「事業復活支援金」はどのような効果があり、十分な給付と言えるのでしょうか、見解をお聞きします。

 また、暮らしを支援する給付としては、18歳未満の子どものいる家庭に一人5万円の現金給付と5万円相当のクーポンを支給するとしました。現金の5万円は今年中に支給する準備がされていますが、クーポン5万円相当は年が明けていつになるのか、何に使えるのかも明らかでなく、しかも事務費に967億円もかかることに批判が上がっているところです。さらに住民税非課税世帯に1世帯当たり10万円を支給するとしましたが、単身者で給与所得が100万円を超えると課税世帯となり、給付の対象から外れます。子どものいない世帯では、コロナで最もしわ寄せを受けた非正規雇用労働者の多くは給付金を受け取れないことになります。非正規労働者は、正規労働者の6割弱という低賃金に加えて、短期・細切れの雇用契約の更新をくり返し、つねに雇用不安をかかえて働いており、コロナ危機でも真っ先に解雇・雇止めの対象となっていますが、必要なところに支援の手が伸びていません。当局として、これら給付金が暮らしを支える上で十分とお考えでしょうか、見解をお聞きします。

2.気候危機打開に向けた対策について

1)岸田政権のエネルギー基本計画とCOP26での日本の対応に関する見解を問う

 気候危機とよぶべき非常事態が起こり、すでに世界各地で、異常な豪雨、台風、猛暑、森林火災、干ばつ、海面上昇などが大問題になっています。

 国連IPCC「1.5度特別報告書」は、2030年までに大気中への温室効果ガス(その大半はCO2)の排出を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロを達成できないと、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5度までに抑え込むことができないことを明らかにしました。たとえ気温上昇を1.5度に抑えても、洪水のリスクにさらされる人口は今の2倍となり、食料生産も減少するなど人類と地球環境は打撃を受けますが、それを上回る気温上昇となると、その打撃は甚大なものとなります。

 パリ協定は、それを避けるために「上昇幅を2度を十分に下回り、1.5度以内に抑える」ことを目的として日本を含む世界196か国が合意して、締結したのです。

 IPCCは、今年8月、新たな報告書を発表し、「人間の影響が温暖化させてきたことにはもはや疑う余地はない」としました。同時に、これからの10年の思い切った削減と、2050年までに温室効果ガスの排出量の「実質ゼロ」を達成し、その後も大気中のCO2の濃度を下げる努力を続けることによって、21世紀の最後の20年には1.4度まで抑えることができることも示しました。

 すでに世界の平均気温は1.1~1.2度上昇しており、破局的な気候変動を回避するために取り組める時間は長くありません。10年足らずの間に、全世界のCO2排出を半分近くまで削減できるかどうか、ここに人類の未来がかかっています。

 この状況の中で、岸田政権は10月22日、「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定し、2030年度の二酸化炭素削減目標を13年度比46%削減、10年度比では42%の削減目標とするとともに、二酸化炭素を大量排出する石炭火力発電を19%にするとしました。原発は20~22%、再生エネルギーは36~38%に引き上げましたが、極めて不十分な目標です。

 英国で開かれていた国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)が開催され、岸田首相は、アジアの排出ゼロに向けて「日本が強いリーダーシップを発揮する」と言ってCOP26の首脳会議に出席しましたが、逆に昨年に続き「化石賞」を受賞するなど、日本の立ち遅れを際立たせる結果となりました。

 その一番の原因は、石炭火力発電を30年度の発電量の19%にし、新たに九つ新増設する目標です。首相はアジアで石炭火力事業を展開するとも述べました。長期にわたってCO2を大量に排出し続けることになります。会議中、46か国・地域が、先進国は30年代、それ以外の国は40年代に石炭火力を全廃するとした声明を発表しました。日本は米国、中国とともに不参加でした。声明には英仏独、欧州連合(EU)のほか日本が石炭火力事業を支援するベトナムも加わりました。G7のうち日本以外の国は期限を決めて石炭火力からの撤退を決めています。石炭火力に依存し続けることはもはや通用しません。

 問題の二つには、30年度のCO2削減目標13年度比46%が低すぎることです。国連が示した「2030年までに2010年比45%減」という全世界平均よりも低いもので、CO2排出世界5位の日本が脱炭素に責任を果たす上で極めて不十分な目標です。

 三つには、原発を「脱炭素の選択肢」として「重要なベースロード電源」と位置づけ、30年度の電源構成の20~22%を賄うとしていることです。現在の発電量は全体の6%程度であり、審査を申請した老朽炉と建設中2基を含む27基すべてを再稼働しなければならないという非現実的な計画です。原発は、放射能汚染という最悪の環境破壊を引き起こすとともに、事故がなくても使用済み核燃料が増え続け、数万年先まで環境を脅かし続けるものです。

 以上の岸田政権の気候変動対策に対する市長の見解をお聞きします。

2)日本共産党が提案した「気候危機を打開する2030戦略」について

 日本共産党は、30年度までに、CO2を10年度比50~60%を削減することを目標とするよう提案しています。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなうという、省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせて実行すれば、50~60%の削減は可能です。さらに2050年に向けて、残されたガス火力なども再生可能エネルギーに置き換え、実質ゼロを実現するという提案です。

 この可能性と具体的なプロセスについては、「気候危機を打開する2030戦略」をお読みいただくとして、ここでは伊丹市にできることについていくつかお聞きします。

① 伊丹市として「気候非常事態宣言」「ゼロカーボンシティ宣言」をすることについて

 この問題では、9月議会で他の議員からも質問があり、伊丹市環境基本計画等の見直しの中で検討すると答弁されていますので、改めて私からもその要望をしておきますが、環境審議会がすでに開催されており、その後この点での進展があればお答えいただいと思います。

② 伊丹市環境基本計画等によるCO2削減目標について

 伊丹市は環境基本計画の見直しと次期地球温暖化対策推進実行計画を策定される予定です。「実行計画」は事業所としての温暖化対策ですが、伊丹市におけるすべての公共施設、公共事業、自治体業務等におけるCO2削減目標はどのように設定されるのでしょうか。

 一方環境基本計画は伊丹市全体の温暖化対策となり、市民と事業への啓発と協力という側面にならざるをえませんが、市域内における脱炭素化に向けた計画と目標を策定することが必要と考えます。見解をお聞きします。

③ 具体的な対策について

 民間住宅の新築・改築時の省エネ・再エネ化を規制と助成一体に進めるため、一定規模の建物建築に断熱化、太陽パネル設置などの脱炭素化対策を義務化するとともに、それに対する助成制度をつくること。

 また、公共事業でライフサイクル・アセスメントを実施して、調達、建築、運用、メンテナンスにいたる全過程でのCO2排出量を公開すること。

 以上に対する見解をお聞きします。

3.日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ81)について

 ヤマサクラ81(日米共同方面隊指揮所演習)が、陸上自衛隊伊丹駐屯地(中部方面総監部)を中心に12月1日から13日まで行われることが明らかとなり、現在その真っただ中にあります。

 今回の演習は、陸上幕僚監部が「40年にわたり演習内容を進化させつつ発展を遂げてきた陸自最大規模の日米共同演習」と明言している通り、自衛隊と全世界の米軍基地をオンラインで結ぶ大規模な演習となります。また、ヤマサクラ81は、今年6月から7月にかけて伊丹駐屯地を中心に行われた過去最大規模の「オリエント・シールド21」(米陸軍と陸自の共同実動演習)と一体のものとして行われることも公表されていますが、その実動訓練では、米陸軍ペトリオット部隊が鹿児島県の奄美大島に初展開し、陸自の中距離地対空誘導弾(中SAM)と共同対空戦闘訓練を実施するとともに、北海道の矢臼別演習場では、米陸軍の高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)と陸自の多連装ロケットシステムの共同射撃訓練も国内で初めて展開されています。

 また、自衛隊の広報によれば、米陸軍のマルチ・ドメイン・オペレーションを踏まえた日米の連携向上のための練成訓練とされており、防衛省の説明では、その訓練とは、地上や海上だけでなく宇宙・サイバー・電磁波などのすべての領域において作戦を実施することを通じて、敵の接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を打破する作戦とされています。

 米中対立が激化する中での極めて危険な演習と言えます。
 
この立場から次の点をお聞きします。

1)市長のヤマサクラ81に対する見解を問う

 憲法違反の安保法制=戦争法のもと、日米軍事一体化が急速に進む中で、米国の戦争に自衛隊が参加・加担する危険性が高まっています。自公政権はアメリカに追随し、台湾海峡をめぐる問題で安保法制を発動する可能性に言及するとともに敵基地攻撃能力の保有、軍事費倍増を掲げています。さらに自民、公明、維新の改憲勢力が、憲法9条を変えることを急いでいることは大問題です。

 このような中でのヤマサクラ81=日米軍事一体の危険な演習を強行することは、軍事対軍事の緊張の激化と戦争の危険を高めるだけです。自衛隊基地周辺住民にとっても戦争の中心となる可能性とともに、自衛官の命を危険にさらすことになります。この演習では実弾は飛び交うことはありませんが、このような危険な演習を伊丹市内で行われていることに抗議すべきではありませんか。

 今必要なことは、国連憲章と国際法という共通のルールにもとづく、平和的手段による問題解決と平和的共存であり、日本政府に求められることは、憲法9条を守り、9条に基づく平和外交と考えます。市長の見解をお聞きします。

2)伊丹空港への米軍用機離発着について

 先月30日、陸上自衛隊中部方面総監部より、ヤマサクラ81の期間中、伊丹空港に米軍機が複数回離発着するという連絡がありました。言うまでもなく伊丹空港はまちのど真ん中にある空港で、事故あれば市民にとって大惨事となる可能性があります。先月30日には青森空港に緊急着陸したF16戦闘機が着陸前に燃料タンク2個を投棄した事故や今年7月にも連続して沖縄で攻撃型ヘリによる鉄製コンテナの落下や田んぼに不時着などの事故が相次いでいます。伊丹空港には2019年4月のオスプレイ緊急着陸や6月には深夜に米軍用機C-16が離発着するなど相次いでいました。今回はセスナタイプの小型翼機とされていますが、いずれにしても安全性と騒音の観点から問題があると考えます。米軍機の離発着に対して抗議し、中止を申し入れるべきと考えますが、見解をお聞きします。

(2回目の発言)

1.新型コロナウイルス感染症対策について

1)医療・検査体制の総点検と強化について
・医療体制を強化したとされたが、病床数や宿泊療養施設の医療ケアにしても、医療現場の深刻な人員不足を根本的に見直さなければ対応できない。医療にかかる診療報酬を引き下げが続き、ぎりぎりの人員体制のためにコロナウイルスの拡大で一気に矛盾が噴き出た。

 保健所の体制ももともとの体制から保健所集も人員も約半分近くまで減らしてきたことが、今回の検査体制にも影響を与えた。応援体制を整備することや研修の実施も大事だが、ここでも根本的な対策が必要です。

 ぜひ現場から住民の命を守るために必要な要望は、国に対して強く求めていただきたい。

・検査体制の拡充に関しては、拡充の中身は来年3月末まで健康上の理由でワクチン接種ができていない人に限られるようです。しかも「モニタリング検査」は撤退、高齢者施設などでの定期的な検査を実施する「社会的検査」も各自治体に計画の策定や実施の要請を終了。これでは無症状感染者が感染を広げる火種を見つけることはできない。抗原検査キットを無料で配布するなど、伊丹市としてできることを積極的に取り組んでいただきたい。

2)新型コロナウイルス感染拡大で傷んだ暮らしと営業への補償と支援を

・5万円相当のクーポン券の支給について…松野官房長官は、7日の記者会見では自治体の判断で現金給付は可能との見解を示した。一部の自治体では10万円を現金給付する方針を決めたところも出てきている。経費が967億円もかかることなどもあってか、ある世論調査では現金10万円の給付を望む人は55%を占めている。クーポンのほうが効果はあるとの考え方もあるが、どちらか選択できるのなら、伊丹市として効果的で素早い給付となる方法を選択していただきたい。
・非課税世帯への10万円給付は、先ほど1回目の発言で述べた、仕事を失った非正規労働者で一人世帯の場合等、10万円の支給も当たらない。伊丹市としては今後、「くらし・サポートセンター」での相談内容を見据えて、その人員体制を強化することも併せて、臨時交付金の効果的な活用、あるいは財政基金の活用も含めて暮らしを支援していただきたい。

2.気候危機打開に向けた対策について

・市長の答弁、脱炭素社会の実現に向けた環境施策を積極的に推進するとの決意は歓迎。・第4次温暖化対策推進実行計画では、国の低い目標と整合するのではなく、2010年比で30年までに60%削減を、40年にはカーボンゼロという積極的な目標に。
・市域からの温暖効果ガス排出量についても、民間企業、市民、伊丹市が共同して、温暖効果ガス削減のための積極的な施策を展開できる計画としていただきたい。

3.日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ81)について

・今回のヤマサクラ81は、市長が言うような「日本の安全保障上の必要性に基づき」行われるものではないとの認識を持っている。

 台湾をめぐって米中の緊張が高まっているもとでのアメリカの戦略に沿った演習。11月18日付の陸上幕僚監部によるニュースリリースでは、米陸軍のマルチ・ドメイン・オペレーションを踏ませた日米の連携向上のためとされているが、その意味を直接防衛省の職員に聞いたところ、米軍が推進している作戦で、宇宙・サイバー・電磁波などすべての領域において作戦を実施することを通じて、敵の接近阻止、領域拒否(A2/AD)戦力を打破することとの答え。(A2/AD)とは、中国が決めた第1列島線内への他国の軍隊の進出を阻止する中国軍の態勢のことを指す米軍の用語で、これを打破して米軍部隊が東シナ海、南シナ海で作戦を実施するための作戦がマルチドメイン作戦なので、事実上、対中国で日米が共同作戦をするということを防衛省も認めたことになります。だから岸田政権が集団的自衛権を認めた安保法制の適用や敵基地攻撃の検討に言及しているのであり、日本の安全保障のためではなくアメリカの対中国戦略に日本を巻き込むものということ。

 そんな演習が市内で行われている。仮にこれが現実のものになれば、報復攻撃が伊丹市にも及ぶということにもなり、市民の安全にとっても大問題となる。