2021年9月議会 一般会計決算 本会議討論
2021年10月6日
日本共産党伊丹市議会議員団 上原秀樹
日本共産党議員団を代表して、報告第8号「令和2年度伊丹市一般会計歳入歳出決算」に対して、認定に同意できない立場から討論をします。
2020年度の国民の暮らしをめぐる情勢は、コロナ禍で、格差拡大が深刻になったことです。2020年度全国の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業の内部留保は466.8兆円となり、前年度から7.1兆円増額し、過去最高額を更新しました。19年度比で株主への配当は11%の大幅増、役員報酬も0.5%増と大企業、富裕層はもうけを膨らませました。一方で労働者の賃金は1.2%減り、コロナ危機は非正規労働者、特に女性と若者に大きな犠牲を負わせています。この1年余、非正規雇用労働者はコロナ以前に比べて月平均92万人減少し、うち61万人が女性です。
2020年度は、このような状況の中で、新型コロナウイルス感染から市民の命とくらし守る施策が求められました。以下、その問題点についてです。
第1に、新型コロナウイルス感染症対策についてです。
伊丹市の新型コロナウイルス感染症対策関連経費は、243億3,597万円で、そのうち地方創生臨時交付金対象事業は21億7,056万円となり、感染拡大防止や生活や雇用の維持と事業の継続支援、地域経済の活性化、社会的な環境の整備・新しい暮らしのスタイルの確立などの事業を行ってきました。
これらの事業は感染症対策として一定の効果を上げることはできたと思いますが、安倍・管政権による極めて不十分なコロナ対策のために、伊丹市独自の対策が求められました。
感染防止事業に関しては、20年度、党議員団は一貫して、病院や診療所などの医療機関、介護・福祉施設、保育園・幼稚園、学校、児童くらぶなど、クラスターが発生すれば多大な影響が出る施設等で定期的なPCR検査を行うこと、感染急増地となるリスクのあるところに対し、無症状の感染者を把握・保護するための「面の検査」を行うことなどを求めてきました。途中から一定の検査は広がりましたが、安倍・管政権が「医療崩壊を招く」という非科学的な知見によってPCR検査を抑制し、世界で人口当たりの検査数が144番目という最悪の事態になる中で、無症状の感染者が感染を広げました。この中で、検査拡大を国に求めるとともに、市独自の検査体制を県とも共同して行い、感染防止をすることを求めましたが、国も県も伊丹市も極めて不十分に終わっています。
さらに、新型コロナウイルスの影響で中小企業・商店に深刻な事態が広がる中、これらの実態を調査し、必要な対策をとるべきと主張しました。自粛と補償を一体化すべきところを国が持続化給付金と家賃補助を1回きりで終わる中、伊丹市独自に行ってきた支援策、上下水道料金の基本料金免除、事業者への家賃補助、ひとり親世帯への支援などには評価しながらも、再度これらの事業を行うこと、特に中小零細企業・業者に対する資金援助として「年越し給付金」の創設を要求しましたが、実現されませんでした。一方、市立伊丹病院事業と市交通事業に対する財政支援に対しては評価をします。
9月末で緊急事態宣言は解除されましたが、いつ第6波の波が押し寄せてくるか不安な状況が続きます。コロナ感染第5波では、デルタ型などの変異株の感染力が強く、自宅療養中に家族全員が感染する事例や基礎疾患の有無にかかわらず30代から40代でも重症化する例、小中、高校生にも広がるとともに、自宅療養中に自宅で死亡する事例も相次ぐという深刻な事態となりました。このことを教訓に、第6波を起こさない対策と備えをすることが必要です。入院・宿泊療養調整中の自宅待機や自宅療養中、福祉施設の留め置きで家族や施設内で感染を広げることや、医療が間に合わず命を落とすことは絶対に避けなければならないことや保健所の業務が追い付かず、感染者の症状の把握や濃厚接触者の特定に支障をきたしており、これらに対する早急な対策が必要です。岸田自公政権に強く求めていただきたいと思います。
そこで次の点を要望します。
感染力が非常に強く、ワクチン接種者でも感染するデルタ株が主流になるもと、ワクチン接種一本やりでは新型コロナ感染症の抑え込みはできないことは、国内外の事実が示しています。とくに新規感染が減少傾向となり、検査のキャパシティーに余裕が生まれている今こそ、陽性者の周辺への迅速な行政検査を幅広く行うとともに、無症状者への大規模検査を行うことがいよいよ重要となっています。「いつでも、誰でも、何度でも、無料で」の立場で、大規模検査の具体化をはかり実施することを強く国に求めていただきたいと思います。
具体的には、無症状の感染者を早期に把握するうえで大切な取り組みである、企業、大学、商店会などで、自主的な大規模検査が行えるように、国が補助金を出して強力に支援すること、また、子どもの感染、家庭内感染への対策が求められており、学校や幼稚園、保育園、会社などを通して、検査キットを家庭に配布し、体調に変化を感じたらすぐに自主的な検査を行うことができるようにすること、自主的検査で陽性が判明した場合、医療機関での検査は無料とし確定診断へつなげることです。
さらに、陽性となった時、安心して休める保障が必要です。無症状でも2週間の自宅待機が必要となるため、既存の傷病手当などの制度では不十分で、傷病手当をコロナ特例として、賃金の8割保障とすること、自営業者など対象外となる人には、国の休業支援金の対象とするなど、所得保障を行うこと、児童・生徒が学校を休まざるを得ない場合の対策など、国に対して要望をしていただくとともに、伊丹市としても独自の対策を講じることを求めます。
また、中小零細事業者にとってはコロナ禍で体力が弱体化しており、そのための支援が必要です。伊丹市は9月追加補正で一定の支援策を講じられることは評価しますが、今後年末に向けて新たな支援が必要になると考えます。商工会議所と共同して業者の要求を把握され、必要な対策を取られることを求めます。
第2に、市立伊丹病院と近畿中央病院の統合再編を決めたことです。
問題の一つは、統合再編によって病床数を200床削減する問題、二つには、市内南部から総合病院がなくなること、三つには、今回の新型コロナウイルスへの対応を考えた場合、感染症対策に緊急を要する事態に公立・公的病院が果たす役割は大きく、公的総合病院が一つなくなることで十分な対応できなくなる可能性があることです。一方、新病院の運営形態を伊丹市の直営として公営企業法の全部適用としたことや、近畿中央病院の跡地への民間病院の誘致や公共交通機関による新病院への交通アクセス等、一定市民の要求を取り入れた検討がされていることには評価します。
コロナ禍で医療崩壊を招いた原因は、安倍・管政権が公立・公的病院の統合再編で病床数削減を進め、医師・看護師数を抑制してきたことにあります。この事態を教訓に、命を大切にするため医療、保健体制の充実を国に求めていただきたいと思います。
伊丹市における病院統合再編に関しては、今後、特に近畿中央病院の跡地に、回復期機能を有し地域住民が必要とする医療機関を、医療空白を生じない形で誘致するために、県の財政支援も求め、力を尽くしていただくことを求めるものです。
第3に、伊丹市市営住宅等整備計画において、伊丹市の市営住宅の目標管理戸数を約200戸減らし、1,700戸としたことです。
その目標管理戸数の算出方法は、月額所得8万円という著しい困窮年収未満の世帯を収入基準としたもので、このような低い所得基準を基礎に必要な目標管理戸数を推計することでは、住宅セーフティネットの根幹である公営住宅の役割を果たすこととはできません。また、市営住宅の建て替えをしないことも大きな問題です。 伊丹市は、公営住宅法第1条に書かれている「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備」する責任があり、一部の住宅にエレベーターを設置されていることは評価しますが、今後、市営住宅建て替えも含めて、若年者から高齢者まで、必要な人が入居しやすい住宅への改良や民間住宅の家賃補助制度の創設等を求めるものです。
第4に、職員の人事評価です。
公共を担う公務員には、全体の奉仕者の立場から、市民の声を聞き、提供する市民サービス、人権保障のあり方を職場で自由に議論し、決定する権限が与えられています。そのような場に「能力」「業績」などという測ることが困難な尺度で5段階評価することは、公務員の労働意欲の向上や創意工夫の発揮を阻害することにもつながります。今後、人事評価の問題点を十分認識していただき、5段階評価はやめることなどを含めて、職員の力が十分に発揮され、市民福祉の向上に向けて働きやすい職場とされるよう改善を求めます。
第5に、教育の分野では、全国学力テストの問題です。
20年度はコロナウイルス感染拡大で中止され、伊丹市独自の取り組みとされました。しかし、自己採点を行い、本市の学力の実態把握・分析、各校の学力向上プランに基づいた取り組みの進捗を管理するなど、相変わらず学力テスト中心の教育と言わざるをえません。学力調査が必要な場合、数年に一度の抽出調査で十分です。改めて中止を含めた検討を求めます。
次に今までで述べたこと以外に評価する主な点です。
一つは、保育所待機児童解消に向けて、定員96人分の民間保育所整備を支援するともに、民間保育事業者の保育士確保のための支援されたことです。
二つには、妊娠出産包括支援事業によって、産前産後のサポートが受けられない妊産婦の不安や負担軽減を図る事業を行ったことです。
三つには、パートナーシップ宣誓制度を創設されたことです。
四つには、かねてから要望していました合葬式墓地を整備されたことです。
最後に、今後取り組むべき要望事項について述べます。
第1に、市立演劇ホールについてです。
演劇ホールが果たしている役割は、代表質問の答弁でも言われたとおり、学校へ出向いてのアウトリーチ事業や演劇ワークショップなどに取り組み、「文化芸術が身近にあるまち」に大きく貢献するとともに、教育的にも大きな役割を果たしてきたこと、また、専門的かつ独自性の高い演劇・コンテンポラリーダンス事業を展開し、「地域創造大賞」や「文化庁芸術優秀賞」の受賞をはじめ、各方面からも高い評価を得ていること、そのことが「伊丹ブランドの構築」という側面でも本市の知名度アップなどには繋がっていることにあります。さらに、演劇ホールは建物や設備の特殊性が高く、他市の同等施設が存在しないという答弁の通り、近隣にはない貴重な施設でもあります。
したがって、伊丹市として財政負担軽減の方策を検討し、広域的な役割を果たしていることから県への財政支援を求め、存続の方向で検討することを求めます。
具体的な問題の一つは、現在行われているアンケートの扱いです。代表質問でも言及しましたが、アンケートに市民が答えるにあたって十分な知識がないままであったことから、あくまでもその時点での参考資料と認識し、今後の議論に生かしていただきたいと思います。
二つには、市民と演劇関係者、専門家などを交えた熟議の場を設定することです。劇関係者のみなさんが、市民理解を求める場は独自に設定することはできますが、行政も入ってそれぞれの考え方を聞き、お互いの考えを理解する場が必要と考えます。開催されようとしている説明会の場にも、演劇関係者を呼ぶべきと考えますので、検討を求めます。
第2に、気候危機を打開する対策についてです。
日本共産党は、9月1日、「気候危機打開のための日本共産党の2030戦略」を発表しました。今、異常な豪雨、台風など気候危機というべき非常事態が起こっており、二酸化炭素削減への思い切った緊急行動が求められています。日本共産党は、省エネでエネルギー消費を40%削減し、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば、CO²を2030年までに10年比50%から60%削減は可能としました。
伊丹市としても、次期伊丹市地球温暖化対策推進実行計画の策定等によってCO²の削減目標・計画を策定される予定ですが、「ゼロカーボンシティ宣言」とともに、積極的なCO²削減目標と具体的な計画を策定されることを求めます。
第3に、ジェンダー平等の実現についてです。
日本は、各国の男女平等の達成度を示す「ジェンダーギャップ指数2021」で、156カ国中120位と、先進国として異常な低位を続けています。1979年の女性差別撤廃条約の採択から42年、日本政府は1985年にこれを批准しながら、いま大きな問題になっている「男女賃金格差の縮小」も「選択的夫婦別姓への法改正」も、繰り返し国連の女性差別撤廃委員会から是正勧告を受けてきたにもかかわらず、解決できないままです。市長としても国に対してこれらの実現を求めていただきたいと思います。
伊丹市として具体的に取り組むべき一つに、あらゆる分野で、計画、条例、政策などをジェンダーの視点でとらえ直し、「ジェンダー主流化」を合言葉に、根強く残る男女格差の解消を進め、すべての人の人権を支える仕組みをつくることです。そのためにも、審議会や各種団体、地域などあらゆる場面で女性の参画を進めることが求められています。意思決定の場に女性を増やすために、審議会への女性の参加目標40%を早期に実現し、50%を目指すことを求めます。
その他、本会議、委員会で多くの要望をしましたが、今後の補正予算や来年度予算の中で実現されますことを求めておきます。
以上、報告第8号「令和2年度伊丹市一般会計歳入歳出決算」に対して、認定に同意できない立場からの討論とします。