2018年3月議会 上原秀樹:幼児教育について
2018年3月7日 日本共産党議員団 上原秀樹
1.新幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領について
昨年、「幼稚園教育要領」、「保育所保育指針」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が改定され、今年4月から実施されます。教育長の「教育基本方針」の中でも、新幼稚園教育要領に掲げている「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を小学校と共有し、幼児教育と小学校とのなめらかな接続を進めてまいります」と述べられました。
そこで、これら新しくなった教育要領等についてお聞きして行きたいと思います。
1)今回の見直しは、幼児期の「教育」を、幼児期の発達にふさわしい教育という従来の視点から、小学校教育の基礎的(あるいは準備)段階という視点に抜本的に見直すというものです。今までも小学校への円滑な接続の必要性は言われていましたが、それは学校教育の先取りではなく、幼児期にふさわしい教育を行うこと、すなわち幼児が遊び、生活が充実し発展することを援助するという視点でした。
それが、今回の改定で、幼児期の教育が改めて「学校教育の始まり」として位置づけられたこと、保育所は「幼児教育の一翼を担う」ものとして位置づけられたことが大きな特徴です。
そこで、教育委員会として、今回の改定によって、「接続の強化」が「小学校教育の先取り」とされようとしていることに対してどのような認識をされているのか。そのことによって、幼稚園、保育所における幼児教育の質がどのように変わるものとお考えなのか。また、幼児教育に関して就学前の子どもを持つ保護者の考えはどのようなものととらえられているのかお聞きします。
2)具体的には、小学校教育への接続の強化のためとして、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」という考慮すべき項目が新たに設定されました。小学校就学前の時点までに育むべき姿、いわば幼稚園、保育所における幼児教育終了時の具体的な姿として10の柱に分けて示されたものです。しかもそれが評価の対象にもなり、小学校学習指導要領には、小学校教育はこの「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえて行われる」ものとして書かれているものです。
①そこで、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の具体的に次の3点に絞ってお聞きします。
「自立心」:身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信をもって行動するようになる。
「協同性」:友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。
「道徳・規範意識の芽生え」:友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返ったり、友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる、とされています。
これら3点に対して考えられる問題点の第1は、幼児にかなり厳しい「自己抑制」を求めているということです。例えば、自立心のところでは、子どもは「やりたいこと」「やりたくないこと」は脇において、大人から要求されることに専念し、「諦めずにやり遂げ」なければならない、そうして初めて「自信」がつくとされています。このことは、「やりたくない・できない・難しい」という人間的なありのままの思いや気持ちを表現するのを抑え、与えられた課題を一人の力でやり遂げる能力が高く評価されることになるのではないかと危惧するところです。
第2に、協同性に関しては、相互に意見や考えを共有することで共通の目標に向かうことが書かれています。また、「道徳・規範意識の芽生え」では、5歳の子どもにきわめて難度の高い要求をしています。何か行動する前には「してよいこと悪いことがわかること」「決まりの必要性がわかっていること」が求められています。そうなると、自分の要求をぶつけたり、トラブルを起こしたりした場合は、「問題行動」となってしまうのではないか。しかし、率直に自分を表現する子どもたちは、本音をぶつけ合い、モタモタやゴタゴタを頻繁に引き起こしながら、時間をかけて気の合う、信頼できる友達をつくりあげていくものだと思います。協同は、意見の共有からではなく、励まし、慰め合う「仲間意識」が作り出すもので、その中で「道徳性」は身についていくものではないかと考えます。
以上に対する見解を伺います。
②教育要領では、「各幼稚園においては、…全体的な計画にも留意しながら、『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』を踏まえ教育課程を編成すること、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと」とも書かれています。いわば、「育ってほしい姿」が成果目標として設定され、これが教育課程の実践が評価の対象となるとのことですが、10の柱をどのように評価するというのでしょうか。見解をお聞きします。
2.伊丹市幼児教育ビジョンについて
教育長は、平成30年度の教育基本方針の中で、「『保育・幼児教育の充実』については、本市における幼児教育の指針となる『伊丹市幼児教育ビジョン』を市全体で共有し、「伊丹市幼児教育カリキュラム」を通して、すべての子どもへの質の高い幼児教育を実現してまいります」と述べられました。
この伊丹市幼児教育ビジョンは、推進計画にも書かれている通り、新幼稚園教育要領に示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい子どもの姿」を見据えた、幼児教育理念等を定めるものとして位置づけられています。
新たな幼児教育要領等は、先ほども述べととおり幼児教育に関して一定の転換を図るものとなっていることから、教育要領に基づくビジョンはどんなものになるのかと心配せざるを得ません。2回目までの議事録を見る限り、「育ってほしい姿」の10の柱について、評価の仕方に関する意見が出されていましたが、その内容にはあまり触れられていないように思われます。4回目の資料ではビジョン(案)に「幼児教育から小学校への接続」の項目がたてられ、参考資料として10の柱が出されています。
そこで次の点をお聞きします。
1)伊丹らしい「質の高い幼児教育」として、ビジョンの中で何を基本理念とされようとしているのでしょうか。
2)4回目まで、幼児教育や保育の専門家や現場の職員、保護者等から伊丹らしい幼児教育のあり方に関して様々な意見が出されています。先ほど批判的な意見を言いましたが、その10の柱をはじめとした「小学校教育への接続」がどういう形で盛り込まれようとしているのでしょうか。
3)また、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」の3つの資質・能力を一体的に育むものとされています。「教育」の視点からとらえたこれらの資質・能力を、養護と教育が一体となって展開する保育の中でどのように考えていくのでしょうか。
3.神津こども園からどんな教訓を引き出すか
当局は、認定こども園をつくるにあたって、神津こども園の教訓を明確にすべきとの議員の問いに対して、毎年の学校評価によって明らかにして公表もしていること、保護者からのアンケートによるとおおむね良好な評価を得ていると答えておられます。一方、保護者が取り組んだアンケート「神津こども園『良い所(自慢できるところ)・イヤな所』調査結果」には、「良い所」とともに様々な課題があげられています。
保護者が取り組んだアンケート調査の結果から、「良い所(自慢できるところ)・イヤな所」はどんなところなのか。その一部を紹介します。
○「良い所(自慢できるところ)」
・統合保育の充実。発達相談も他の施設に出向く必要がない。
・給食はすごく助かる。家で食べないものを園では食べてくれている。
・1号認定2号認定の子が一緒になり、よい刺激をもらって、子どもができることが増えた。
・5・4・3歳で、教室の解放感がある。自由な発想で好みの遊びを選んでいる。
・職員の数が多い。保健の先生も常にいてくれて、相談できる。先生同士がクラスに関係なく協力し合っている雰囲気を感じる。
(改善してほしいこと)
・文字の教育までは求めていないが、一斉に座るなどの教育はしたほうがいい。
・しいて言えば、5歳の就学前に字を書く練習をするなどしてほしい。
○「イヤな所」
・預かり保育の申請が早すぎる。
・統合保育にニコニコタイムと交流の場があるが、参加率が悪い。カルミアのように先生からのアドバイスがあればうれしい。
・働く親からすれば、参観日など親の参加行事が多すぎて参加できず、子どもがさびしがる。
・フルタイムで働く人への配慮をしてほしい(忘れ物を取りに帰る、懇談蟹の時間、PTA役員会が昼)。保育所に入れたかったと本気で後悔した。
・自由にしすぎ。カリキュラムも何もないのかなと思い、幼稚園と比べてしまう。
・保育園化してただ子どもを預かってもらっているという印象。公立幼稚園では竹馬、フラフープなどできるまでしっかり教えてくれたのに。
・行事が親参加型が多く、普通の生活の様子が見にくい。
1)以上の意見も踏まえて、今後の幼保連携型認定こども園に向けて教訓化すべき点についてお聞きします。
・1号認定と2・3号認定の子どもの生活時間が異なることに対して当所様々な不安が出されたが、不安は解消されているのかどうか。
・2・3号認定の子どもが午睡中に1号認定の子どものお迎えがあることの問題はないのか。
・1号認定の子どもが降園した後の保育の継続性はどう工夫されているのか。
・働いている保護者と働いていない保護者、それぞれへの対応に関して意見が出されているが、どのように克服されるのか(PTA活動の時間、懇談会の時間、参観日等)。
・幼児教育と保育の問題での1号認定と2・3号認定の保護者の認識の違いをどう克服するのか(特に1号認定の保護者)。
2)具体的な問題として改善しなければならないところ
・預かり保育の申請締め切りの問題が出されていますが、これは認定こども園に限らず、公立幼稚園における預かり保育にも関係しますので、改善策をお聞きします。
(2回目)
1.新幼稚園教育要領等について
1)今回の幼稚園教育要領等の改定の最大のポイントは、「小学校との接続の強化」にあると答弁。その中で新たに追加されたのが、質問でも述べた三つの資質・能力と10の柱。それがかなりハードルが高く、しかも評価の対象となることが問題と指摘しました。
10の柱に関する答弁では、到達目標ではなく「方向性」として示されたものとされた。しかし、これらは教育要領では「幼児の幼稚園終了時の具体的な姿」と明記され、教師は指導を行う時に考慮するものとされている。
10の柱等については、これだけハードルが高いものを示すわけで、様々な議論がなされた結果のもの。しかし、これらは幼稚園等の教育課程に直接影響を与えるものであることから、答弁で示された内容、すなわち教育課程で留意すべきことを、幼児教育ビジョンを介して教師や保護者に発信していくことが必要ではないかと考えるがいかがか。
2)評価に関しては、小学校以上で行われているような評価ではないにしても、5歳児までの子どもの発達は一律ではなく、子どもにどのような資質・能力が育っているかを保育者が見て取り、評価につなげていくことは大変困難なこと。具体的にどの様にされるのか。
3.神津こども園からどんな教訓を引き出すか
神津こども園の保護者が取り組んだアンケートの紹介を含めて教訓とすべき点についてお聞きした。
答弁の中で、検討するとされたこと①保護者の参観や懇談、PTA活動の日時のずれの問題 ②預かり保育の申請の問題 については研究・検討するとのことなので、よろしくお願いしておく。
ところで、こども園として毎年自己評価を行っているとのことだが、これらの保護者の要望は問題とならなかったのか。
また、アンケートを取っておられるが、あらかじめ園側が設定した項目でのABCDランクに印をつけることが主な内容になっているのではないか。自由記述欄はあると思うが、細かく要望が書き込めるような工夫が必要と考えるがいかがか。
(要望)
神津こども園の教訓として、初めての認定こども園ということもあり、幼稚園教諭と保育所保育士、地域住民、保護者がこども園の在り方について、設備や保育内容について十分な議論がなされたこと。地域のまちづくりと一体となった取り組という特別な背景があったとはいえ、今後のこども園に生かすべきこと。
自由保育を取り入れているが、今回の改定された教育要領でどうなるのか。