2013年3月議会:上原ひでき 「政務活動費」に関する条例改正に対する質疑と討論

 3月議会の初日、議員提出議案として3議案が提出されました。そのうちの一つが、地方自治法改正に伴う「政務調査費」に関する条例改正で、名称を「政務活動費」に変更し、その使途に要請・陳情活動や住民相談、事務所費などを追加するものです。

 日本共産党議員団としては、提出議員にならず、上原議員が質疑・討論を行い、反対をしました。その主な理由は、新たに追加される項目は、今まで政務調査費とは認められていなかった項目であり、政党活動や後援会活動との区分がつきにくいもので、その詳細が決まらないままの提案であったこと、市民に開かれたべでの議論はその本会議当日だけであったこと、議会として積極的に透明性を高める措置を取らなかったことなどです。

 討論ではすべての会派から意見が出されました。その中で多くの議員から、議員の役割として住民相談や様々な活動をすることで、 元代表制の下での議員が果たす役割を広げて今なければならない、という趣旨の発言がありました。しかし、それらのことは当然議員としてやるべきことであり、そこに「政務活動費」としての税を投入するかどうかとは別の問題です。なにか「政務活動費」になって使える範囲が増えたから議員の活動の範囲も広がるという勘違いされているように思いました。

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2013年3月議会

議員提出議案第3号「伊丹市議会政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例の制定について」に対する議案質疑

2013年2月25日
日本共産党議員団 上原秀樹

 本条例改正は、第180通常国会において、地方自治法の改正の中に「政務調査費」についての改定が追加され、①地方議会の会派または議員に交付されている「政務調査費」を「政務活動費」に変更すること、②交付の名目を「議会の議員の調査研究活動に資するため必要な経費」から「議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費」に改めること、③政務活動費を当てることができる経費の範囲については、条例で定めること、④議長は、政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めること、などを趣旨とした法律が制定されたことによるものです。

 一般的に行って、議員活動に対する公費支出のあり方については、十分な透明性と住民合意が確保される中で、議員活動にふさわしい基準を検討することはありうることです。しかし、政務調査費をめぐって問題になっていることは、その使途の透明性が今なお不十分であり、少なくない議会で住民監査請求や住民訴訟の対象となっていることです。

 政務調査費について住民の信頼性が損なわれているときに、住民に対する説明も議論のないままに、使途を拡大する条例改正をすることが妥当なのかどうか、という疑問があることから、以下の点について質疑を行いたいと思います。

1.第5条「政務活動費を充てることができる経費の範囲」について

  経費の範囲を拡大することに関しては、国会において修正案提案者は「従来調査研究の活動と認められていなかった、補助金の要請あるいは陳情活動のための経費、地域で行う住民相談、意見交換会や会派単位の会議に要する経費のうち調査研究活動と認められていなかったものについても、条例で対象とすることができる」と説明しています。

 本条例改正においても、同様の提案がなされています。第5条に新たに追加されているこれらの項目は、従来政務調査活動とは認められていなかったものであり、さらに別表の中には「事務所費」も新たに追加されています。これら、いずれも政党活動や後援会活動、選挙活動との区分がつきにくい項目であります。また、「事務所費」は、代表者会でも議論となったとおり、現在事務所を所有している議員はいないということが確認されており、急いで条例改正をして追加しなければならない項目ではありません。

 したがって、今回の条例改正は、地方自治法に基づく文言整理のみにとどめ、経費の範囲は従来通りとした上で、今後、市民に対する信頼性や透明性を確保するため、改めて市民に公開された会議の中で十分議論を尽し、経費の範囲に関しては調査活動に密接に関連するものだけに限って条例改正するという手法をとるべきではなかったのか、と考えるものですが、見解を伺います。

2.第7条「政務活動費の返還」について

 この項目は従来と内容は変わっているわけではありません。すなわち、市長は、年度において政務活動費の残余がある場合は、返還を命ずることができる、という「できる」規定です。しかし、他市の条例を調べてみると、議員の残余金額の返還を強く規定するものとなっている場合がありました。たとえば、丸亀市では、議員は、残余の額を返還しなければならない、と規定しています。主語を市長にした場合には、「返還を命ずるものとする」若しくは「返還を求めるものとする」との規定が適切ではないかと考えるものです。

 実は、日本共産党は受け取っていませんが、国における「政党助成法」に基づく政党交付金に関して、「政党交付金の返還」の項目は、総務大臣は、その年の残額の返還を命ずることができるという規定となっています。実際、2011年度、9つの政党が、残余があるにもかかわらず返還せず、長年基金として積み立て続け、その残高は171億9,100万円にまで膨らんでいます。これは各党が「政党基金」とすれば翌年に積み立てることができるとした抜け道を使ってためこんでいるものです。そのぬけ道と「できる」規定はいわばセットのようなもので、政務活動費の場合は、そのようなものはなく、明確に返還するという規定にするべきと考えます。見解を伺います。

3.第9条「透明性の確保」について

 この項目は、地方自治法の改正で新たに追加されたもので、従来からの政務調査費に対する住民の使途の透明性に対する不信を払拭するため、改めて透明性を確保するための方策を求めたものです。

 代表者会でも議論になりましたが、全国市議会議長会が示した条例案には、「収支報告書の閲覧」という項目がありましたが、今回の条例改正案では削除されました。その内容は、情報公開条例による交付請求をしなくても、議長に対して収支報告書の閲覧を請求できるというものです。三田市議会では、従来の条例で、「情報公開条例に照らして交付する」と規定されており、全国紙議会議長会の規定を上回る規定があります。

 伊丹市議会でも、より透明性を確保するため、同様の規定を入れることが適切であると考えますが、見解をお伺いします。

(2回目のメモ)

1.第5条「政務活動費を充てることができる経費の範囲」について

○「経費の範囲」については、全国市議会議長会の基準条例に基づいたものとの説明。質疑の趣旨は、本条例改正の提案は、十分議論をし「これで透明性は確保される、政党活動等との区分に関しても不透明なものはない」とした上でのものかという点、また、国会での総務大臣の答弁で、「議会の中で侃侃諤諤(かんかんがくがく)有権者の前でご議論をいただいて決めていただくということは大変意味あること」とされているような、市民に見える議論を尽した上でのものか、ということ。私は十分ではなかったし、議員自身もそういう実感はないと思う。公開の議論の場は、本日この本会議のみで、非公開の代表者会で議論してきただけ。

○今後使途基準の指針について議論をしていくこととなっていますが、本来は、使途基準も含めて議論をし、あいまいさが残るものがあれば、この項目は条例から除外しよう、というのが手順ではないかと考えるものです。

○宇都宮市議会は、条例改正は名称変更等にとどめ、「その他の活動」に何を含めるかは今後1年間かけて決定するとしている。

○佐賀市議会は、今回の条例改正による「経費の範囲」は従前どおりとする、との提案説明を行い、名称変更等にとどめている。

○パブリックコメントまで求めている議会もある。

2.第7条「政務活動費の返還」について

○返還命令を義務化することは、議員自らの資質が問われかねない、との事。しかし、「返還」の規定にあいまいさを残さないほうがいい。このことは、条例に基づいて政務活動を運用する議員にとっても、条例を見た市民にとっても。特に市民から見て、不透明なものはできる限り避けることが大事。

3.第9条「透明性の確保」について

○今まで一定の改善はされてきたが、本条例改正で、より透明で、より開かれた議会とするため、伊丹市議会として何をするのかということ。そのひとつが先ほど紹介した内容。

○函館市議会は、情報公開条例によらずとも、収支報告書と金銭出納帳は議会のホームページで公開している。西宮市では、すでに閲覧ができる。先ほど紹介した三田市でも同様。全国的にこのような議会が出ている中で、あまりにも透明性の確保という点でも、積極的に情報を公開するという点でも後ろ向きではないかと思わざるを得ない。

○私たち議員は、日常的に市民の生活上の相談に乗り、国・県・市政に対する要望を聞いてその声を届けるために要請活動を行ったり、議会で発言をしたりして、住民福祉の向上に努めている。

 条例改正によって議員の活動範囲が広がるわけではない。議員はさまざまな活動をしており、どこまで税金を使うのか、が問題。地方自治法の改正によるものだが、もともとその第100条の各項は、第1項での、議会は地方公共団体の事務に関する調査を行うことができる、という規定に基づいて規定されていることを念頭に置かなければならない。今後この立場で議論していくこと。

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議員提出議案第3号「伊丹市議会政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例の制定について」に対する反対討論

2013年2月25日
日本共産党議員団 上原秀樹

 日本共産党議員団を代表して、議員提出議案第3号「伊丹市議会政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例の制定について」に対して反対の立場から討論をします。

 本条例改正案は、地方自治法の改正により、伊丹市議会の議員に交付されている「政務調査費」を「政務活動費」に変更し、交付の名目を「議員の調査研究活動に資するため必要な経費」から「議員の職のある者の調査研究その他の活動に資するため必要な経費」に改め、政務活動費を当てることができる経費の範囲を拡大して、条例で定めることとするものです。

 最大の問題とするのは、政務調査費をめぐって、その使途の透明性が今なお不十分であり、少なくない議会で住民監査請求や住民訴訟の対象となっていることに見られるとおり、政務調査費について住民の信頼性が損なわれているときに、市民に対する説明も公開の場での議論のないままに、使途を拡大する条例改正をすることは妥当とはいえないということです。

 しかも、今回の条例改正で「政務活動費に充てることができる経費の範囲」に、補助金の要請や陳情活動のための経費、地域で行う住民相談、意見交換会や会派単位の会議に要する経費のうち調査研究活動と認められていなかったものが追加されていますが、いずれも、政党活動や後援会活動、選挙活動との区分がつきにくい項目であり、その使途基準や按分の考え方等は明確になっていません。議員活動に対する公費支出のあり方について、十分な透明性と住民合意が確保される中で、議員活動にふさわしい基準を検討することは、当然やらなければならないことでありますが、その検討は、条例改正後の課題となっており、明確にできないままの条例改正であるということです。

 第2には、「政務活動費の返還」に関して、改正条例においても、「市長は・・・返還を命ずることができる」という規定にとどまっているということです。主語が「市長」であれ「議員」であれ、明確に「返還する」という規定にすべきです。

 第3には、「透明性の確保」について、議長に対する閲覧請求の項目を除外した問題です。紹介しました他の議会における、積極的に情報を公開する仕組みや透明性確保のための方策が講じられていることから見れば、きわめて消極的といわざるを得ません。

 よって、「伊丹市議会政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例の制定」に対して反対とするものであります。