2022年12月議会:上原秀樹 一般質問
2022年12月8日
日本共産党議員団 上原秀樹
1.中小企業・小規模事業者対策について
1) 中小企業へのゼロゼロ融資における過剰債務について
日本経済の土台を支えている中小企業と小規模事業者が、コロナ危機、原材料や燃料などの物価高騰に加え、コロナ禍への対応で受けた融資(ゼロゼロ融資)の返済が迫るという「三重苦」に陥っています。とくに過剰になっている債務の負担軽減は、年末に向けて解決が急がれる課題です。
ゼロゼロ融資は、金融機関に都道府県が利子を補給し、信用保証協会が元本を保証することで実質無利子・無担保で最長3年間、お金を借りられる仕組みです。コロナ禍で中小企業の経営を支えるためのものですが、融資残高は全国的に2022年度末で42兆円に達しています。一部で返済も始まっており、中小企業がやむなく借りた過剰な債務が大きな問題となっています。
民間調査会社・東京商工リサーチが10月3~12日に行った「第9回債務の過剰感についてのアンケート調査」では、債務が「コロナ後に過剰となった」と回答した中小企業は19.4%で、「コロナ前から過剰感がある」の11・3%と合わせると合計30.8%が「過剰債務」だと回答しています。
金融機関は過剰債務を抱えた中小企業に新規の融資を渋るようになり、新たな運転資金の調達が困難になります。運転資金が借りられないと仕入れや人件費の手当てができず、仕事がきても受けられずに倒産してしまう「資金繰り倒産」に陥ります。また、過剰債務が経営全体を圧迫するため、設備投資を含めた新たな事業展開、再構築ができなくなってしまいます。
東京商工リサーチのさきの調査では、「過剰債務が事業再構築の足かせになっている」中小企業は、35%になっています。
コロナ禍の継続の上、物価高騰はさらに深刻化する見通しです。「過剰債務倒産」に加え、「物価高倒産」や、長引く苦境に心が折れて倒産・廃業に追い込まれる中小企業が急増することが強く危惧されます。
そこで、市内中小企業、小規模事業者の実態についてお聞きします。
市内企業のゼロゼロ融資残高はいくらで、一企業平均いくらの残高となっているのか。さらに、債務が「コロナ後に過剰となった」、また「コロナ前から過剰感がある」とする中小企業等はどれくらいあるのか把握されているのでしょうか。実態をお示しください。
2) インボイス(適格請求書)制度の導入による影響に対する認識について
来年10月からインボイス(適格請求書)制度の導入が予定されています。インボイス制度とは、今までは全ての事業者からの仕入れ等について仕入税額控除ができましたが、インボイス制度後は、国に登録した事業者のみが対象となる制度です。税務署に申請すると事業所番号が発行され、これがついた請求書でないと仕入税額控除には使えません。従って、国に登録しない事業者からの仕入れ等については、仕入税額控除ができないことになります。すべての事業者が登録すればよいのですが、登録する事業者はすべて消費税の課税事業者になる必要があるという制度です。売り上げが1千万円以下の事業者は、今まで免税業者として消費税の納税義務がありませんでした。ところが、この登録をすれば納税義務が発生することになります。免税業者は小規模事業者が多く、売り上げに消費税を上乗せしにくい業者、家族事業者で消費税等の記帳が困難な業者が多く存在します。このことで、登録しなかったら取引から外される可能性が生じるとともに、登録したら商品やサービスごとに消費税額と税率を記載した請求書をやりとりする必要があり、零細な業者の負担が重くなります。
このインボイス制度導入に対し、多くの中小・零細業者だけではなく、アニメ、漫画、演劇、声優・俳優の4団体、出版・映像やエンタメ・文化団体からもインボイスの反対声明が続々と上がっています。これらの反対の声の前に、政府・与党は制度の導入に、経過措置の検討を始めました。しかし、期間限定の経過措置に過ぎません。
そこで、当局は市内中小・零細業者の実態を踏まえ、インボイス制度導入に対してどのような認識をされているのでしょうか。お聞きします。
2.緊急小口資金等の「特例貸付」への対応について
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた人の支援として、生活資金を貸し付けていた緊急小口資金などの特例貸付の償還が来年1月から始まります。返済時に住民税非課税であれば免除の対象ですが、生活に余裕がないのに対象外の人もいます。
厚生労働省による9月24日時点の速報値では、特例貸付の累計貸付件数が334万件、累計貸付決定額が1兆4242億円をそれぞれ超えているとされています。同貸付の上限額は、単身世帯で155万円、複数世帯では200万円で、来年1月には返済が始まることとなります。
日本弁護士連合会は10月6日、「もともと生活に困窮した世帯にとって、多額の債務の長期にわたる返済自体が生計破綻の引き金となる危険が高い」と警鐘を鳴らし、償還免除範囲の抜本的拡大と支援体制の整備を国に求める会長声明を発表しました。
そこで、伊丹市の実態をお聞きします。
伊丹市での特例貸付の件数と貸し付け累計額、そのうち契約社員やアルバイト、契約社員等の非正規で働く人、また自営業者やフリーランス等の事業者の割合と累計額はいくらになっているのか。また、利用者アンケートをされていますが、これらの人たちで「困っていること」の主な内容、「今後の経済活動の制限等で収入に影響が及ぶ恐れがある」とした割合、1月から返済が始まるにあたって「暮らしと返済のメド」の状況では、それぞれどのような回答になっているのでしょうか。
さらに、困難な人への対応はどのようにされているのでしょうか。
3.小学校における教科担任制について
小学校高学年での教科担任制が、今年度から本格的に始まりました。小学校では、担任が全教科を指導するのが基本です。高学年の教科担任制は、外国語や算数、理科、体育などで専門性をもつ教員などが授業を行うものです。文部科学省に置かれた中央教育審議会が「2022年度をめどに本格導入が必要」と答申し、同省の検討会議が21年7月にそのあり方を公表。担任の持ち授業時間数の削減や授業準備の効率化につながる、として導入されました。
しかし、今年度の教科担任制の国の追加配置(加配)予算は、950人分で、20校につき1人分しかありません。財務省が、財政制度等審議会に「中学校教員の活用で対応すべきだ」との資料を出すなどした結果、当初の要求より予算は半減しました。
全国的には、加配が全く不十分な中、結局は各学校の工夫に任されます。特別支援学級や通級の担任が行う形が一番多く、ついで、教頭や他学年担任、近隣の中学校から授業にきてもらう形があるようです。
一方、兵庫県の場合、2001年度から国の加配を活用して、個に応じたきめ細かな指導の一層の充実を図るため、指導体制の在り方を調査・研究するとして、新学習システムを推進し、2012年度から全県において兵庫型教科担任制を導入されています。教科担任制と少人数授業を組み合わせたもので、担任間の授業交換による「教科担任制」と担任と加配教員による「少人数授業」によるものです。
全国的に小学校高学年での教科担任制が始まりましたが、兵庫県、伊丹市はすでに実施されてきました。文部科学省では少人数授業という考えはないように思え、今まで実施してきた内容にどのような変化があるのでしょうか。また、加配教員は増えるのでしょうか。さらに、今までの教科担任制と少人数授業の成果をどう見ておられるのかお聞きします。
(2回目の発言)
1.中小企業・小規模事業者対策について
1) 中小企業へのゼロゼロ融資における過剰債務について
答弁では、県の保証協会による融資実績と政府系金融機関等を合わせて、概ね2000社、400億から500億円程度の融資債務残高であるとのことで、1社あたりにすれば平均2000万円から2500万円程度の残高になります。しかも、約2割の企業がコロナ後に債務過剰となったとの回答が寄せられています。
倒産件数は現在のところ少ないとされますが、ギリギリのところで踏ん張っているというのが実情です。今後の物価高騰とコロナ第8波でさらなる困難が予測される中、何らかの支援が必要と考えます。
日本共産党は、コロナ対応融資、すなわちゼロゼロ融資を「別枠債務」にして、事業継続に必要な新規融資が受けられるようにすることを提案しています。
現在、日本政策金融公庫は、コロナ対策として、金融機関から企業への融資の一定部分を「別枠」にし、出資とみなして、新たな融資ができるようにする「資本性劣後ローン」を実施しています。しかし数年後に一括返済を求められ利子負担も高いなど、中堅企業でも使いづらい制度で、小規模事業者は対象外におかれています。
新たな資金調達が可能となり、事業を継続することができるように、事業者の規模に関係なく、ゼロゼロ融資をいったん通常の債務から切り離し、「別枠債務」とすることが必要と考えます。
その具体的な内容は、
――「別枠債務」は、一定期間(1~5年程度、経済状況によっては延長あり)、無担保・無利子のまま返済を猶予する。
――金融機関は「別枠債務」を既存の融資残高から除外し、その融資枠を新規融資にまわせるようにする。
――「別枠債務」は保証協会が保証をつけ、返済猶予期間の利子など地域金融機関にも借り手の事業者にも負担が生じないよう国が支援する。保証協会の保証料は国が負担する。
――「別枠債務」の返済が可能になった時点でも、その後の事業に支障がない返済計画に金融機関が協力できるよう国が支援する。
――小規模事業者であっても、関係金融機関から債務の減免が受けられるよう、「事業再生スキーム」を改善する。
ということです。これは党として国に対して要求していきます。
では、伊丹市として何ができるのか。中小企業は、企業数で99.7%、雇用者数でおよそ7割を占めます。中小企業を救う対策は日本経済の再生にとっても急務です。また、地域に根をおろしている中小企業を支えることは、雇用と経済を守り発展させることにつながります。したがって、国と自治体にはその責任を果たすことが求められます。
一つは、市内企業の実情を把握することです。商工会議所と連携した市内企業訪問やアンケート調査で、過剰債務の有無や国と自治体に対する要望を聞くことが必要です。
二つには、企業、小規模事業者の相談窓口―中小企業・小規模事業者の資金繰り・経営に関する相談窓口を市内に設置することです。現在、原油価格上昇に関する特別相談窓口はありますが、資金繰りも併せて相談に応じるということを広報することが必要と考えます。
三つには、国の持続化給付金がありましたが、必要ならば、たとえば「経済再生給付金」という形で、一定の条件のもとに給付する仕組みを、県と共同でつくることではないかと考えます。
以上の提案に対する見解をお聞きします。
2) インボイス(適格請求書)制度の導入による影響に対する認識について
政府が来年10月から導入を予定しているインボイス制度は、数百万もの小規模事業者やフリーランスで働く人々に、インボイスを発行するために消費税課税業者になることを余儀なくさせ、深刻な負担増をもたらします。答弁で述べられた通り、1,000万円以下の小規模事業者にとっては、インボイス制度に登録しない場合は取引が見直される可能性とともに、登録した場合は消費税の納税義務が生じ、実務の負担がかかることになります。従って、日本共産党は、消費税の5%への減税とインボイス中止を要求しています。
一方、インボイス制度の導入は、民間取引にとどまらず、地方自治体や公益法人との取引においても、免税業者に同様の影響を及ぼします。このことから、伊丹市に対してはいくつかの要望をします。
一つは、公営企業の場合です。例えば、水道事業の場合、売り手としての公営企業は飲食店等の水道水を利用する事業者に対して、インボイスを発行することになるため、インボイス番号の登録申請をすることになります。逆に買い手の場合は、公営企業として仕入れ税額控除をするためにも、工事の発注業者、すなわち売り手に対してインボイスの発行を求めることになります。工事業者がインボイス番号の登録をしていない場合、公営企業として仕入れ税額控除ができないため、公営企業がその分を消費税として納税するため、収入が減少することになります。その際、1,000万円以下の小規模事業者に対してインボイス登録を無理強いしないことはもちろんのこと、登録しなければ発注できなくなると思わせるような文言の通知は出さないようにしてください。
二つには、シルバー人材センターです。高齢者の生きがいと働く場を提供するシルバー人材センターでも、影響があります。この場合、各種仕事を会員である高齢者に紹介し、会員は配分金という報酬を受け取ります。事業の多くは業務委託契約で、高齢者は個人事業主として扱われるため、高齢者がインボイスを発行しなければシルバー人材センターが消費税の仕入れ税額控除ができず、このままですと伊丹では約7,000万円という多額の納税負担が発生することになります。多額の納税負担を避けるためには会員がインボイス番号を取得する必要があります。そうなれば、会員の月平均3万5千円というわずかな収入から10%の消費税を払わなければならないことになります。
これらの対応では、伊丹市からの補助金の増額や駐輪指導等の単価の引き上げが考えられます。いずれにしましても、シルバー人材センターの存続にかかわる重大な問題が発生するという認識で、伊丹市としても適切な対応を求めておきます。
2.緊急小口資金等の「特例貸付」への対応について
緊急小口資金と総合支援資金の合計で、約4,000件に約25億円の貸し付け、そのうち非正規労働者が31.4%、自営業者・フリーランスが30.9%と不安定就労の人が6割を超えています。しかし免除されるであろう割合が3割程度と予測されています。コロナ禍と物価高騰等により、さらなる困難をもたらす可能性もあります。自立支援課としてアンケート調査によるニーズ把握に努められ、必要な支援を、アウトリーチも含めて対応されていることは評価します。引き続き丁寧に寄り添った対応を求めておきます。
3.小学校における教科担任制について
兵庫県の場合は早くから新学習システムとして始動し、2012年度からは兵庫型学習システムとして少人数授業と教科担任制を実施されてきました。
今後の問題として考えられる一つは、2024年度に少人数加配がなくなることです。理論的には、今まで最大40人学級で二つに分けた場合は20人、最少は20人学級で二つに分けた場合10人の少人数授業ができたことになります。答弁で、少人数授業では児童一人ひとりに目が届くきめ細かな指導ができていたとの評価をされましたが、35人学級における教科担任制では、これをカバーすることはできません。今後の問題としての見解をお聞きします。
二つには、教科担任制における加配が進むのかどうかです。今年度は兵庫型学習システムの推進で54人の加配がありますが、単純に少人数加配がなくなることによる加配の減少となれば、教科担任制は交換授業が主流となって、教員の負担軽減に効果はないということになります。今後の加配の状況は把握できないということなので、国・県に対して必要な教員の加配を要望していただきたいと思います。ただ、予算は措置される一方、今でさえ教員が不足している中で、本当に充分配置できるのかという不安はあります。伊丹市で本格的に教科担任制を実施するとして、4教科の専任教員は何人必要となるのでしょうか。お聞きします。
(3回目の発言)
3.小学校における教科担任制について
2回目の質問に対する答弁をいただきました。少人数授業がなくなることに対して、視点の転換が必要とのことですが、教科担任制で複数の目で児童を見ることと少人数授業とは異なる問題。教科担任制には、高学年担任の空き時間や教材研究の時間が確保できる、複数の目で児童が指導できるというメリットもあれば、一人の児童を継続して見られないというデメリットも指摘されており、工夫が必要です。
最大の問題は、加配の教員が配置されるのかどうかです。先ほど単純計算で約70人という数を答弁されましたが、中途半端な加配ですと逆に負担が増えることにもなりかねません。国に対する加配教員の確保のための予算を求めていただきたいと思います。