上原秀樹:2021年3月議会 本会議 討論 一般会計予算/市人権審条例の制定に反対

2021年3月議会 本会議 討論
議案第7号令和3年度伊丹市一般会計予算、議案第20号伊丹市人権教育・啓発審議会条例の制定に対する反対討論

日本共産党議員団 上原秀樹

 日本共産党議員団を代表しまして、議案第7号令和3年度伊丹市一般会計予算及び議案第20号伊丹市人権教育・啓発審議会条例の制定に対に対して反対の立場から討論します。

 はじめに議案第7号についてです。

 来年度の市民をめぐる情勢に関しては、新型コロナウイルス感染の影響で、個人市民税では、非正規労働者の減少と給与所得、年金収入、事業者所得などの減少により、対前年度対比で5.7%の減となるとともに、法人市民税も21.3%の減少を見込んでいるとおり、市民の大幅な収入の減少が今年度に引き続き来年度も続く見込みとなります。

 このような中で、伊丹市に求められていることは、感染から市民の命と健康を守り、暮らしを支える市政です。以下、問題点を述べます。

 第1に、新型コロナウイルス感染対策についてです。伊丹市に求められるのは、ワクチンの接種を安全に、すべての希望する市民に行きわたる対策を行うと同時に、ワクチン頼みになるのではなく、一定落ち着いている今こそ、PCR検査を思い切って広げ、無症状の感染者を見つけ出し、保護、療養・治療をして感染者を減少させることです。そして、生活上で困難に陥っている人に給付を行うとともに、自粛によって営業が困難なところに十分な補償をすることです。経済対策はソーシャルディスタンスのとれる範囲で行い、感染を封じ込めることに全力を上げること以外に今後の経済対策に道を開く方法はありません。

 この点では一般質問等で伊丹市独自の検査体制の拡充と自粛に対する補償を求めましたが、来年度予算にはその対策が入っていないのは大きな問題です。国からの地方創生臨時交付金と基金を活用して、急いで対策を取られることを求めます。

 第2に、国のデジタル化政策に呼応して、伊丹市でも本格的に行政のデジタル化を進めようとされています。市の方向性はこれからとのことですが、情報通信などのデジタル技術の進歩は、本来人々の幸福や健康に資するものであり、その方向に進むことを求めるものです。しかし、菅政権が進めようとしている「デジタル改革」は、マイナンバーカードの普及を軸に国家による個人情報の一括管理を強め、企業がそのビッグデータを活用することで、経済成長を促すという国家戦略に立っています。なかでも自治体システムの統一・標準化は、自治体独自の施策が消滅する可能性があることや、個人情報保護法の改定では個人の保護体制を大きく改変して規制緩和を狙うものとなります。また、デジタル化は行政手続きのオンライン化など効率的運用に寄与する側面もありますが、行政窓口では助言や相談など人と人の対面によって一人ひとりの実態に沿ったきめ細かなサービスが求められることが多くあり、デジタル化だけで行政サービスの質も向上にはつながりません。さらに「デジタル格差」が広がることも懸念されます。今後の課題として、無批判に国の進めるデジタル化政策を進めるのではなく、コロナ禍で明らかになった通り、必要な職員体制の確保や労働条件の改善など、公務・公共体制を拡充し、市民の権利を保障することを強く求めます。

 第3に、新たに「伊丹市人権教育・啓発推進に関する基本方針」を改定されようとしていることです。この方針は、国の「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第5条の地方公共団体の責務に対応するものとして、2010年10月に策定されたものです。もともとこの法律の発端となったのは、地域改善対策特定事業の終結に伴う1996年の地域改善対策協議会の意見具申で、同和問題に関する差別意識の解消に向けて教育・啓発は引き続き積極的に推進するべきとされたことにあります。その4年後の2000年に意見具申の趣旨に沿ってこの法律が策定され、教育・啓発に関しては、人権教育のための国連10年行動計画で具体化され、伊丹市でも2001年に同伊丹市行動計画を策定、そして、その10年後に基本方針が作られたという経過があります。したがってこの流れの中心は、同和問題に関する国民の差別意識の解消です。一方、同和問題に限らず、様々な人権課題も存在することは事実です。市のアンケートでも、最も関心のある人権課題は女性、高齢者、障がい者、子どもが多数を占めており、それぞれに関する人権を保障するための施策は重要な課題となっています。しかしこれらの課題は、憲法における人権保障の規定に基づき、解決していくものであり、必要とあれば、教育・啓発はそれぞれの分野で行うべきことです。問題は同和問題に関する市民の差別意識の解消のための教育・啓発を継続することにあります。実体的差別がほとんどない中で、差別意識をことさら強調することは、同和問題の真の解決に逆行するものです。従って、あらゆる人権課題を包括して、それを教育・啓発に関する方針としてまとめる必要はないと考えます。

 第4に、一般質問で要求しました、少人数学級への独自の対策、中学校給食無償化に向けた助成、中学卒業までの医療費無料化、障がい者に対する医療費助成の拡大に対して、前向きの答弁がなかったことです。少人数学級に関しては、教育長からその効果について、詳しく述べられた通りで、せめて中1ギャップ解消のために中学1年生からでも独自の35人学級を求めました。国も中学も含めた35人学級に言及していますので、是非前向きに検討を求めます。また、中学校給食に関しては、文部科学省の調査でも中学校における学校教育費における支出が約14万円で、給食費がその3分の1を占めていること、全国的に給食費への助成が一部助成も含めて約4分の1の自治体で行われていることを明らかにしています。ぜひ検討をお願いします。子どもの医療費助成は中学までの無料化は県内41自治体のうち37自治体が無料化を実施するに至りました。また、障がい者に対する医療助成も阪神間各市と比較して遅れた分野です。この件も是非前向きに検討を求めるものです。

 第5に、全国学力テストの問題です。その目的は、全国的な児童・生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の課題を検証改善して教育指導の充実や学習状況の改善などに役立てることとされています。しかし、全国学力テストは、2019年、国連子どもの権利委員会が日本政府に対して「極度に競争的制度」と「ストレスフルな学校環境」から子供を開放するよう勧告する一因となっているように、実態が学校と子どもを点数競争に巻き込み、教育をゆがめるものとなっています。全日本教職員組合の調査では、44%の学校で過去の問題をやらせるなどの特別指導を実施していること、学年初めの学級づくりや授業づくりに支障が出ているという声が上がっています。文部科学省の通知の通り、学力テストの結果は学力の特定の一部分、教育活動の一側面でしかありません。従って、毎年悉皆調査をする必要はなく、数年に一度の調査で十分児童生徒の学力や学習状況の傾向を見ることができます。

 以上が主な問題点です。なお、来年度予算では新規事業はほとんど計上されず、市長選挙後の補正予算に任されることになりますが、本予算において、子どもの虐待防止等すべての子どもの権利を保障するための「子ども家庭総合支援事業」が行われることや、新たな認可保育所増設や保育人材確保等によって241名分の保育の受け皿を整備されること、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業など、新たに取り組まれる事業に関しては評価をするものです。

 なお、本会議や委員会で様々な要望や提案を行いましたが、先ほど述べたこと以外に主な点を述べます。

 第1に、近畿中央病院の跡地への医療機関の誘致は、県と公立学校共済組合との共同で、回復期病床だけではなく地域に必要な医療機関の機能を有する病院を、医療の空白期間をなくし、伊丹市が責任をもって誘致されることを求めます。

 第2に、公立幼稚園・保育所の統合再編に関しては、これ以上の再編を行わず、3歳児全員入園と延長保育の時間延長を求めるとともに、保育所待機児童の解消における年度途中の待機については公立で担えるようにすることを求めます。

 第3に、地震、豪雨など自然災害対策のさらなる充実と、地域での避難行動要支援者対策も含めた地域防災計画策定に支援を行うとともに、避難所ともなる学校体育館に空調施設を整備されることを求めます。

 第4に、共同利用施設の統合再編に関しては、地域組織での議論をもとに、伊丹市が地域の実情を考慮したうえで判断されることを求めます。

 第5に、市営住宅に関して、住まいの人権を保障するため、200戸の削減ではなく、市民の実態に即して増設されること、耐震基準を満たさない住宅の順次建て替えを改めて求めるとともに、その間に住宅のバリアフリー化と必要な修繕を行うことを求めます。

 以上が主な要望ですが、その他本会議・委員会で要望しましたことを、今後実現に向けて取り組まれることを要望して、反対の立場からの討論とします。

 次に、議案第20号伊丹市人権教育・啓発審議会条例の制定についてです。

 この条例は、現行の「伊丹市人権教育・啓発推進に関する基本方針」の改定を行うために、伊丹市人権教育・啓発審議会を設置しようとするものです。

 第1の問題は、この「基本方針」の根拠法となる「人権教育及び啓発の推進に関する法律」では、国民の責務として、「人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努める」としています。その「涵養に努める」中心は教育・学習です。しかし、憲法に基づけば国民の学習・教育は権利です。また、「人権が尊重される社会の実現」の責務は国と自治体にあります。したがってこの法律は、憲法をねじ曲げるものとなっていることが問題です。したがって、この法律による「基本方針」の策定自体が問題です。

 第2には、先ほど一般会計予算に対する討論で述べた通り、あらゆる人権課題を包括して、それを教育・啓発に関する方針としてまとめる必要はないと考えます。

 以上の理由により、本条例の制定に反対するものです。

 議員各位のご賛同をお願いしまして討論とします。