2020年3月議会 上原ひでき:2019年度補正予算に対する質疑

2020年3月議会 2019年度補正予算に対する質疑

2020年2月21日
日本共産党議員団 上原秀樹

 議案第1号「令和元年度伊丹市一般会計補正予算」第7号)」に関して、第10款教育費、第2項から第5項までの施設整備事業費のうち、LAN整備工事についてお聞きします。

 説明によりますと、Society5.0時代に生きる子どもたちのための教育における「GIGAスクール構想の実現」に基づき、児童・生徒一人一台の端末整備にかかる高速大容量の校内通信ネットワークの整備を行うとされています。補正予算金額は4億5,856万4千円で、国の補助金は2分の1となっています。

 本補正予算は、政府が2023年度までに全国の小中学校で一人につき1台パソコンの情報端末を配備する方針を決め、国の補正予算で「GIGAスクール構想」の実現として、2,318億円を計上したことによるもので、今後4年間で4,000億円を投じようとするものです。来年度以降、一人1台パソコン整備が行われることになり、国の予算では1台当たり上限4万5,000円、国が負担するとされています。

 1月24日に開催された中央教育審議会では、これからの小・中・高等学校などの教育のあり方に関する「論点取りまとめ」が報告されました。先端技術の活用で一人ひとりの子どもに「個別最適化された学び」を推進するなど、学校教育を大きく変える内容を盛り込んでいます。「個別最適化された学び」は、情報通信技術(ICT)や先端技術を使い、一人ひとりの子どもの学習傾向やスポーツ・文化活動などのデータを分析して、それぞれの子どもに「最適化」された学習内容を提供するというものですが、この方針に対して、公教育への企業の参入をいっそう進め、集団的な学びがおろそかにされ、教育の画一化につながる恐れがあるとの懸念の声が出ています。

 1月26日の読売新聞の社説「一人1台のPC 投資に見合う教育効果あるか」でも、「配備されるPCを使ってどのような授業をするのかが、見えていない。1人に1台が本当に必要なのか。子どもの学力に応じて、それぞれのPCに難易度の異なる問題を出せば、個別に最適化された学習ができると、文科省は説明する。仮にそんな授業を行うのなら、教員にかなりの指導力が要る。PCを授業で使いこなせる教員は7割にとどまるとの調査結果がある。文科省は、教員の役割や指導力の向上策を検討するとしているが、何とも心もとない」「早い時期から、PCでドリルの反復練習をしていると、長い文章をじっくり読んで意味を考えることがおろそかになりかねない。PC学習では読解力は身に付かないと指摘する専門家もいる。PCの使い方次第では、かえって子どもたちにマイナスの影響を与えることにならないか。配備されたPCを使うこと自体が目的化すれば、本末転倒である。学校現場が目的意識をきちんと持って、適切にPCを活用しない限り、巨額の投資は無駄になる。そのことを文科省も教育委員会も肝に銘じてもらいたい」とかなり厳しく指摘しています。

 教育現場のICT環境の整備自体は重要なことですし、個々の子どもにあったが学習をきちんと保障することも大切です。しかし、政府が進めようとしているGIGAスクール構想に応じて伊丹市が予算化され、今後の教育を大きく転換しようとされていることから、以下の点についてお聞きします。

① すべての学校においてLAN整備工事を行い、一人1台パソコン整備をするとされていますが、そのことが子どもたちにとって、どのような教育的効果があるとお考えなのでしょうか。お聞きします。

② 文部科学省によれば、子どもたちが端末でそれぞれ異なる課題に取り組むことも想定されていますが、このことで集団の中での学び、人格の形成を目指す学校教育のあり方を根底から変えることになるのではないかと危惧するものですが、見解をお聞きします。

③ 来年度から小学校でプログラミング教育が本格的に始まります。いまだに現場は混乱して振り回されている状況ではないでしょうか。英語教育等も含めて、次々と新たな課題が教育現場に押し寄せてきています。今後、教師の負担はどうなるのでしょうか。また、これらの課題に対してどれくらい教職員は増員されるのでしょうか、お聞きします。

(2回目の発言)

○一人1台端末の教育的効果について答弁いただきました。この答弁に対して再度お聞きしたいと思います。

・今年度と来年度で2500台の端末は整備されることになっています。一人1台までは至りませんが、ほぼ二クラスの児童・生徒が同時に使用可能となります。となれば、端末の使い方や、先ほど答弁された調べ学習や表現・創作活動などは十分できます。端末を使っての教育が、全体の教育の一つのツールと考えれば、一人1台が必要なのかどうか。現在は答弁されたとおり各校に40台の端末がありますが、現在の端末を使用した教育と一人1台端末の教育でどんな変化を期待されるのか、改めてお聞きします。

・先ほどの答弁で、個々の生徒の学習履歴が自動的に記録されると言われました。そうして蓄積されたデータを活用することによって、個別的な支援ができるということです。しかし、経済産業省のある研究会の提言では、学習塾や音楽・スポーツ教室など民間教育サービスまで含んだ学習ログを幼児期から蓄積するように要求し、高校や大学入学者選別への活用や、民間企業が利用できるようにすることも求めていることには驚きます。そこで、学習履歴のデータはどの機関保存し、いつ削除するのか、データの内容はどんなものを残すのかお聞きします。

○最初の質問で、ある新聞記事に基づいて、「早い時期から、PCでドリルの反復練習をしていると、長い文章をじっくり読んで意味を考えることがおろそかになりかねない。PC学習では読解力は身に付かないと指摘する専門家もいる。PCの使い方次第では、かえって子どもたちにマイナスの影響を与えることにならないか」ということを紹介しました。答弁では、PISA調査で日本の生徒たちの読解力が低下していることがわかったことから、端末を活用してその力をつけようということです。しかし「長い文章をじっくり読んで意味を考えることがおろそかになりかねない」という指摘に対してどうお考えでしょうか、端末を通じて「読解力の育成」は可能なのかどうか、お聞きします。