2013年6月議会代表質問:上原ひでき 市長の情勢認識を問う(アベノミクス、従軍慰安婦、憲法改正論議)

2013年6月14日 上原ひでき議員

1.市長の情勢認識を問う

1)アベノミクスで市民の暮らしはよくなっていると実感されていますか

市長が提案説明の中で触れておられます、アベノミクス、すなわち安倍自公政権のもとで進められている「3本の矢」といわれる経済対策についてです。市長は政府の月例経済報告での、景気が回復に向かっているということを紹介されました。安倍首相は株が上がったと盛んに自慢しているようですが、5月23日の東証株価は13年ぶりの暴落となり、市場関係者から「企業業績の裏打ちがない中、期待だけで株価が上がっていた。暴落は当然」と言われるとおり、外資に左右されるアベノミクスの制御不能な危険性が暴露されました。

また、国民のアベノミクスの評価にしても、大体7割から8割の国民が、所得は増えない、景気回復は実感できないと答えています。それもそのはずで、安倍内閣になってからも賃金は減り続け、企業の設備投資も減少、大銀行の中小企業向け融資は史上最低で、あらゆる経済の土台の落ち込みが続いているからです。その上に、円安による原材料費や燃油、水光熱費、小麦などの高騰は、中小企業や漁業、農業に深刻な打撃となり、家計を圧迫し始めています。一方では、この「バブル」で一握りの大株主や富裕層には、巨額の富が転がり込み、大企業の多くは円安・株高の中で利益を増やし、内部留保は1年間に10兆円増えました。

市長は、現在進められているこのようなアベノミクスで市民の暮らしはよくなり、景気が回復するとお考えなのでしょうか、お伺いします。

今必要な経済対策は、消費税の増税を中止し、国民の所得を増やす本格的な景気回復の道です。賃上げと安定した雇用、中小企業支援のルールをつくり国民の消費購買力を引き上げ、社会保障改悪ではなく、現役世代も高齢者も安心できる社会保障制度に拡充することが必要と考えるものです。市長は、今後民間企業の設備投資は持ち直しに向かうとされましたが、このままだと期待できる要素はありません。地域内経済循環に視点をおいた企業活動への支援にしても、市民の消費購買力が上がらなければ企業や地域商店の努力にも限界があります。あわせて見解を伺います。

2)「日本の侵略戦争」に対する歴史認識、「従軍慰安婦」に対する認識を問う

安倍政権が発足して以来、過去の侵略戦争と植民地支配を正当化し、美化する歴史逆行の動きが顕著に現れ、国際問題となっています。米議会調査局レポートでは、安倍首相を「強力なナショナリスト」とし、「性奴隷や歴史教科書、靖国神社への参拝」などでの対応が、アジア諸国やアメリカから強い懸念をもって見られていると指摘しています。戦後の国際政治は、日独伊がおこなった戦争が不正不義の侵略戦争だったということを共通の土台にしています。この土台を覆す勢力は、国際政治に参加する資格を失い、国際的な孤立の道に転落していくことになります。

さらに、日本維新の会の橋下徹共同代表の「慰安婦は必要だった」という発言に、内外から大きな批判が起きています。女性を戦争の道具とみなす暴言は、女性への冒涜であるとともに、人間への冒涜です。国連拷問禁止委員会は、日本軍「慰安婦」問題で「日本の政治家や地方の高官が事実を否定し、被害者を傷つけている」とし、日本政府に対して、こうした発言に明確に反論することを求めました。

市長は、このような安倍首相や橋下共同代表の歴史を逆行させる考えに対してどのような認識をお持ちでしょうか、お伺いします。

日本がアジアと世界から信頼され、国際社会で名誉ある地位を占める国になるためには、過去の侵略戦争と植民地支配の誤りをきっぱりと認め、その負の遺産を清算する立場にたつことが不可欠です。すなわち日本政府の責任ある立場の政治家が、侵略戦争を肯定・美化するような行動、言動をとらないこと、日本軍「慰安婦」問題では、日本政府として公式に謝罪し、個人補償を行うこと、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を子どもたちに正しく伝え、アジアと世界の国ぐにと平和・友好の交流を積極的におしすすめることが必要と考えるものです。

以上に対する見解もあわせてお伺いします。

3)自民党などの「憲法改正」論議に対する考え方を問う

自民党をはじめとする改憲勢力が多数を占めていますが、その一番の狙いは、自民党の改憲案にあるとおり、憲法9条を変えて「国防軍」を明記することで、集団的自衛権の行使など、日本を「海外で戦争する国」につくりかえることです。この人たちは、「北朝鮮や中国との関係を考えても憲法の改定が必要」だといいます。しかし、北朝鮮の問題にしても、中国・韓国との領土問題などにしても、何よりも求められるのは憲法9条を生かし、道理に立った外交交渉によって解決をはかることです。

一方、安倍首相は、改憲の発議を、国会議員の「3分の2以上」から「2分の1以上」に引き下げる96条改定を言い出しました。しかし、これは単なる「手続き」論ではありません。近代の立憲主義は、主権者である国民が、その人権を保障するために、憲法によって国家権力を縛るという考え方にたっています。そのために改憲発議の要件も、時の権力者が都合の良いように、簡単に憲法を変えることができないようにされています。憲法改正の発議要件を緩和し、一般の法律なみにしてしまうことは、立憲主義を根底から否定するものにほかなりません。

市長は、これら改憲の動きに対してどのような見解をお持ちでしょうか、お伺いします。